企業は変態脱皮して進化する 中小企業経営の基礎講座(その9)

 

【中小企業経営基礎講座 連載目次】

 

 今回は、企業は変態脱皮して進化するを解説します。変態脱皮とは、昆虫が「卵→幼虫→成虫→サナギ→成体」と、その体を変態させながら子孫を残すために成長していく過程を表わします。ここではサナギに籠もって成虫になるプロセスと、サナギから羽化して羽根が乾き飛翔できるようになるというプロセスの、二つに焦点をあててみましょう。

 まず心の成長についての私見を述べますと、人の心は皆同じようには成長しないと思っています。成長の段階の時間は人それぞれなのですが、偏差値教育や様々な社会習慣によって、あの人はこういう人と決めつけられてしまう事が多いようです。芋虫を見て、これがアゲハチョウの幼虫と知っている人は、芋虫を受け止める事ができるでしょうし、むしろ喜びを感じるかもしれません。しかし、只の芋虫・害虫と思う人は、無視したり排除しようとするでしょう。

 問題は親や上司や先生が、サナギになって成長しているのを認識しないで、サナギをいじり回して殺してしまうことがあることです。待つことができず、見守れないのです。こうして考えると、待ってあげるのも愛情の一つの形だと思いますがどうでしょうか。

 昆虫に最大の危機が訪れるのは、サナギが割れて羽化を迎える時です。勇気と希望をもって臨みますが、羽が乾いて飛べるようになるにはしばらく時間が必要です。その時天敵にやられるリスクが最大に高まります。だがこの危険を避けていては、サナギの中で死を迎える事になり、脱皮できなければ命はつなげないのです。
この羽化の勇気を体験した人は、どんな環境にも負ける事はなく、DNAとなって子孫に伝わります。進化と維持のために、サナギに籠もることを、自ら選択する事になるのです。

 進化するには勇気が必要であり、老いた時とはこの変態脱皮をする勇気がなくなった時と思っていますので、あと二回は変態脱皮をして、子々孫々に理念(DNA)をつなぎたいと念じています。企業の進化・発展も変態脱皮を繰り返します。持続していく企業が経営環境の激変を超えるために、時にサナギに籠もる事もありますし、M&Aや再生計画・グループ化等で変態脱皮をする事が、持続するためには必要な場合があり、その選択が誤解や反発を生む場合もあるでしょう。
その選択と行動の故に、「今、我らは存在しているのだ」と気付く時が必ず来ます...

。「世のため・人のため」になる企業は形を変えても、理念を伝えて行く事を、40年の仕事を通して断言できるのです。存在理念は次世代に受け継がれて行くのですから。

 人が育つには個性に合わせた時間の長さが必要です。サナギから出てくるまで、待ってあげましょう。私も多くの間違いを通して学んできましたが、今は出番を与えワクワク感を味わってもらうことで、その人の潜在能力が発揮され、進化するのだと堅く信じています。企業もサナギに籠もる時があるのですから、お互いを信じて見守りましょう。そして自分も恐れずに「変態脱皮」に挑戦しましょう。

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