ものづくり現場の体質改善から人財育成を考える(その1)

【ものづくり現場の人財育成 連載目次】

 私はクリーン化を通じて、多くのものづくり現場を見て来ました。

 その過程で現場の管理をはじめ、監督者の考え方や行動、中小企業であれば経営者の方と直接会話することで、様々な考えを知ることができました。当然、人財育成も大きな話題となりました。人の育て方について真剣に悩んでいる方も多かったわけですが、単に作業をする人=工数と考えている方もいました。

 “部下を持ったその時から、部下の家族も背負ったと思え!”という言葉もあります。今、この言葉のような考え、行動をされている方はどのくらいいるのでしょうか。

 もちろん、昔の考え方で今はそれどころではなく自分のことや家族、生活を守るだけで精一杯という方もいるでしょう。今の時世、仕方のないことかもしれませんが、自分の部下のこともちょっと考えてみましょう。自身の部下は成長しているでしょうか。

 前置きが長くなりましたが今回から数編は事例を紹介しながら、人財育成について考えてみたいと思います。その企業風土や個々人によっても対応の仕方は違います。多くの事例を活用しながら最善策を探ることが大切です。人を育てるということは、翻(ひるがえ)って、自己の成長にも繋がると考えています。

 それでは今回はクリーン化について簡単に触れておきます。

 電子、電気、精密、機械などのものづくり企業、あるいは製薬、食品に至るまで、ゴミ、異物の混入は製品品質を大きく左右します。内容によっては信頼を損ねたり、企業の存続が危うくなることにも繋がります。これを解決したいわけです。クリーン化についてご存じない方からは、“何だ掃除のことか”とか、“掃除ごときで指導に来るのか”とも言われたこともありました。

 この考え方から変えていく必要があるのですが、たかが掃除のことと先入観をお持ちの方に、話を聞いてもらうことすらできないことも多かったかったです。そんな話に付き合っている時間はないという反応もありました。

 このクリーン化活動は狭義には、ものづくり現場でゴミや汚れを減らし、製品の品質と歩留まりを向上させるということです。ものづくり現場の体質改善であり、ひいては会社の利益創出の重要な活動なのです。

 クリーン化は、昔から企業競争力の根幹といわれ、その技術は門外不出でした。従って、この活動の重要性を認識している企業は、その技術を外に漏らさず自社内でノウハウを蓄積、向上させ競争力を高めてきました。このように閉鎖的な技術であり公開や周知もされてこなかったため、推測だけで掃除のイメージが定着してしまっているのかもしれません。ただ、その間に双方の差は徐々に開いてしまいます。企業競争力の差の拡大です。

 私が在職中のことでした。ある役員が取引関係のある企業の担当者に、クリーン化をやったらどうかと言いながら、私を紹介してくれました。最初は、やはり単に掃除のこと。掃除の仕方を指導する人が来るという風に社内にはアナウンスされたようです。

 ところがその会社に出掛け、実際に現場指導を始めると「これは単なる掃除ではなく、品質向上と会社の利益追求に必要なことだ。自社の将来を左右することだ」と気付いたそうです。対応した管理職の方が社長に報告し、その後は社長自ら直接依頼に来ました。考え方の意見交換だけでなく、現場診断にも真剣に立ち会ってくれました。もともと現場をよく見る経営者だったのですが、それからというもの、現場の指導だけでなく教育...

も依頼され、社員育成にも関わりました。

 国内に幾つか工場を持っている会社でしたが、それぞれの工場の現場診断・指導を実施しました。この繰り返しの中で自社の将来のあるべき姿を社長をはじめとする経営側が深く考える姿を見てきました。会社側の人だけでなく多くの社員との意見交換も行い、その過程で人が育って行くことを感じました。

 人を育てるということは難しいことですが、それに一生懸命取り組むことでその会社に相応しい人財育成の形が出来て来るのです。人が育てば相互にベクトルが合い、企業の体質が強くなるのです。単に作業をするという工数としての人手ではなく、考える集団になるのでやがて企業の大きな力になります。行動が考働に変化していくのです。

 次回に続きます。

◆関連解説『人的資源マネジメントとは』

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