中国工場での従業員教育の進め方 中国工場の品質改善(その54)

 前回のその53に続いて解説します。

【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方

【中国異文化コミュニケーション】

◆ 中国で注意すべきこと

(1) 中国人から見た日本

 中国人が日本や日本人に対して持っている知識やイメージは、日本に関わったことの有無や年齢で大き<違ってきます。

 中国には内陸部の農村を中心に日本人を見たことがないという人たちが多数存在しています。そういう人たちは、日本や日本人のことをまったく知らないといってよ<、唯一イメージとしてあるのはテレビで見る抗日戦争ドラマで見られる「いつも怒っていて笑わない」というもののようです。そのような人たちが初めて日本人と会って二コニコしているのを見ると、とてもびっくりするそうです。

 日系中国工場では、まだまだ内陸の農村から出稼ぎに来ている従業員もたくさんいます。場合によっては、工場で見た駐在員が初めての日本人ということもありますので、よいイメージを与えられるようにしたいものです。

 一方、日系企業に勤めている人や日系企業と仕事上のつながりがある人、日本への旅行や留学経験がある人は日本や日本人のことをよ<知っていますし、若い世代の人たちは日本と直接関わりを持ったことがなくてもインターネットを通して日本のことを比較的よく知っています。

 このような人たちは、日本の良さを認めているところがあり、特にマナーに関してはすごいと感じているようです。また自国と比べても日本はすごい、中国はまだまだだと思っている人もいます。工場の中国人スタッフと食事をした時「日本はすごい、それに比べて中国はまだまだなっていない」などと言ってくることもあります。この時に「確かに中国はまだまだですね」などと言わないようにしましょう。そう思って口にしているとしても、日本人からそうだと言われて良い気持ちになるはずがありません。

(2) 中国に対してやってはいけないこと

 どこの国でもその国の人に対してやってはいけないことがあります。それはその国の歴史や文化、習慣などから来ています。そして、もちろん中国でも中国人に対してやってはいけないことがあります。これはしっかり頭に入れておきましょう。

 最もやってはいけないことは人前で叱ることです。中国人は面子をとても大事にしますが、人前で叱られるというのは、その面子が潰される典型的な事象です。それも我々日本人が思っている以上に深刻な事態ですから、やらないようにしてください。

 ただし、これは中国人を叱ってはいけないということではありません。工場で仕事をしていれば中国人スタッフがミスをした、指示に従わなかったなど叱る必要がある場合も当然出てきます。そのような場合、どうすればよいでしょうか?人前ではなく、会議室など別の場所に移し一対一で叱ればよいのです。

 この際の注意点としては、なぜ叱っているのかをきちんと説明し理解してもらうこと。感情に任せて叱らないこと。などがあります。

<< 筆者の失敗事例 >>

 筆者が今でも反省していることがあります。中国駐在員時代、中国人部下を持っていたのですが、ある時一人の部下に工場の現場サイドに依頼した対策テストの進捗確認を依頼しました。実際は任せきりにしていた訳ではなく、自分でも進捗は追いかけ、部下が確認しているかどうかも把握していました。

 しばらくたった時、わざと部下に対して「あのテストの進捗はどうなっているか」と聞いたところ「予定通り進んでいて問題ない」との答えが返ってきました。進捗を確認していないことは分かっていたのですが、事務所に他のスタッフがいたにも関わらず「進捗確認をしていないのは...

まだいいとして、やったと嘘はつくな」とつい言ってしまったのです。

 その時は、私の言葉を聞いた通訳も訳すのをためらっていました。それくらい「嘘をつくな」というのは言ってはいけない言葉でした。しかし私は頭に血が上っていたこともあり、通訳に対し「いいから訳せ」と言って伝えさせました。すると、言われた中国人部下の顔がかっーとなっているのが分かりました。

 時間が経つにつれ部下と私は普通に接していましたが、今思えばその出来事を境にその部下はわたしを信頼しなくなっていたのかもしれません。このような取り返しのつかない失敗を読者の方にはして欲しくないのです。

 次回は、(3)贈ってはいけないもの。から解説を続けます。

【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載 

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