「提案弱者」は「伝える」が分かれば躍進できる!

 上司、同僚、部下、家族のため、お客様のために、自分の考えや思いを「伝えたい」方はたくさんいます。

 しかし、ほとんどの人は伝えようと努力しても、驚くほど「伝わらない」ことに愕然とします。なかには「伝わらなくて当たり前」「自分には伝える才能がない」と考えて努力を諦めてしまう方もいます。

 永遠の課題に思える「伝わらない」。

 天と地の差がある「伝える」と「伝わる」を混同しているのです。

 これさえわかれば、原因は単純で解決のアプローチも明確です。

 例えば、子供に勉強の必要性を説明しても勉強しない。そこで、いろいろな例を出して「勉強しないといかに将来困るか」「勉強するといかに未来が開けるか」を伝えます。

 そうやって、分かりやすく勉強の必要性を説明しても・・・「分かった!全力で勉強する!」とはならないことを多くの方が経験しています。それどころか、これ(説教)によって親子の溝が深まる場合が多いのです。

 他の例では、たばこを吸っている人に、タールで覆われた肺や肺がんの悲惨さを説明しても、「分かった!止める!」とはならないのです(逆に煙たがられます)。

 これが「伝える」状態です。

 「伝える」状態では、話す側は(悪意はないのですが)「一方的に」自分の伝えたいことを話しているだけです。多くの場合、提案は受け入れられないばかりか、相手と感情的な対立を起こします。

 なのに、「分かりやすく伝えれば分かってもらえる」と思い込んでいる。疑義を挟むと「当たり前のことに口を挟むな!」と説教されるくらい強固に信じられています。

 次に「伝わる」状態です。

 

 「伝わる」とは話す側のして欲しい行動を聞く側がしてくれる状態です。

「受け入れたくない提案」と「受け入れたい提案」の構造は基本的に決まっています。

 「受け入れたくない提案」は自分に苦痛が及ぶ、利益が減る、損害が生じる提案です。「勉強しなければならない」「たばこを我慢しなければならない」は苦痛です。だから了承はでない。内容が分かりやすいかどうか以前に「提案」の構造がNGなのです。

 では「受け入れたい提案」はどうすればいいか?

 「受け入れたい提案」は自分に楽しさがもたらされる、利益が得られる、増える提案です。これに合致すればいいのです。【※】

 例えば、ダイエットは「食べたい衝動を我慢する」ことが苦痛だから継続できない。理性で「健康のため」と言い聞かせても、理性ごときの説得では短期間しか効果はなく、ダイエットが完成するまで続かないのです。

 しかし、楽しさや利益は相対的なものなので、「楽しさ+苦痛 > 0」にできればいいのです。

 例えば、「ダイエットさえすれば、片思いの〇〇さんとお付き合いできる!」だったら?ダイエットするくらい簡単じゃないですか?

 他の例だと、「投資の勉強をしないといけない。」それだけでは勉強が苦痛だから続きませんが、「投資の勉強をしただけ毎日口座残高が増える」状態なら喜んで勉強する人が増えるのです。

 余談ですが、投資の場合は、日本人は幾ら利益になっても「面倒くさい」からやらない人が多いのです。その場合は「自動化できるよ!」が効いてきます。

 こういう視点で考えると、例えば、「仕事」。生活費を得るために「我慢してやらなければならないこと」という視点で見ている限りは「苦痛」なのです。だから、いくら子供や部下に仕事の大切さやその人の役割の重要性を話して聞かせてもやる気は起きにくい。

 かつての「給料が高い」は「楽しさ+苦痛 > 0」として分かりやすい構造でした。

 しかし、現在では価値観が金銭などの利益から「環境」「コミュニティ」「自己成長」な...

ど、相手にとってかけがえのないものに移行しています。これまでの提案は通用しないのです。

 このように、内容を精査することはもちろん大切ですが、それが社会に役立つには、相手にとって「受け入れたい提案」であることが必須です。

 私は「提案を設計」する専門家が皆無の状態が、技術の業界に計り知れない損失を与えていると感じています。日本の頭脳集団でありながら、技術の業界は「提案弱者」なのです。その現実をいったん受け入れることができれば、現状打開の対策を考えることができるようになるのです。

【※】 『最強のエンジニアになるためのプレゼンの教科書』から

 P87  :第3章「感動」「笑い」の感情を設計する:例題「太陽光発電の情報が欲しい!」と思わず感じる説明の仕方

 P189:第6章プレゼンのエクササイズ:「思わず「眼科医院へ行かなきゃヤバイ!」になる説明の仕方

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