地域戦略編 成熟市場における競争戦略:ランチェスター戦略(その5)

 
  
 
 ランチェスター戦略は全社の販売戦略を立案する際に使われますが、営業現場において、営業マネージャーが率いる現場単位の戦略を立案する場面でもよく使われます。市場の最前線である営業現場にこそ、市場地位に合った戦略が必要であると、ランチェスター戦略において考えているためです。
 
 地域・商品・顧客層によって、弱者と強者は入れ替わります。大企業であっても強者とは限りませんし、また、中小企業だからと言って必ずしも弱者ではなく、特定商圏では強者ということもあります。同じ会社であっても、営業現場単位でその市場地位に応じて戦略を切り替え、「弱者の戦略」や「強者の戦略」をとる必要があるのです。
 
 ランチェスター戦略は「実務体系」が整備されていることが特徴の一つです。世の中には様々な経営戦略がありますが、ほとんどは理論のみです。それぞれの経営戦略を自分のビジネスや実務に落とし込む作業は、自らで試行錯誤しなければなりません。それに対して、ランチェスター戦略では、「担当地域でいかにしてNO1になるか」「担当顧客をいかに攻略してシェアを上げていくか」など、実績と事例が豊富な四つの実務体系を参考にして、成果を追及することができます。実務体系について簡単に説明します。
 

1. 地域戦略編

 
 地域戦略は攻略を目指す地域(メーカー・卸の場合はテリトリー、店舗ビジネスの場合は商圏)を細分化・重点化して、シェアNO1の地域を作っていく実務体系で、以下のような特徴があります。
 
 

2. シェアアップ戦略編

 
 シェアアップ戦略は、担当している販売チャネルや顧客において、いかにシェアを上げていくかについての実務体系です。間接販売の場合は代理店や販売店におけるシェアアップで、直販においては担当顧客におけるシェアアップです。特徴は以下の通りです。
 
 

3. 営業戦略編

 
 営業マネージャー・営業幹部が営業組織を、あるいは営業マンが自らをいかにマネジメントして、営業成果を追及するための実務体系です。顧客別の営業方針や顧客情報の収集、商談プロセスの最適化など、顧客攻略のための実務に重点を置いています。特徴は以下の通りです。
 
 

4. 市場参入戦略編

 
 前述した「地域戦略」「シェアアップ戦略」「営業戦略」は既存事業においてシェアを拡大し、NO1分野を確立していくための実務体系であり、基本的に成熟市場を前提としています。しかし事業活動においては、市場の導入期や成長期でとるべき戦略があり、市場の時期別の戦略を体系化したものが「市場参入戦略編」です。特徴は以下の通りです。
 
 
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◆ 小が大に勝つ原理原則

 
 5回に分けてランチェスター戦略の基本について解説を連載しました。
 
多くは欧米発なので、どこか肌感覚が合わない面もあります。しかしランチェスター戦略は日本人が考えた戦略なので日本人に合うし、わかりやすく、事例も豊富です。
 
 ランチェスター戦略はビジネスはもちろん、個人(スポーツ、出世競争、恋愛など)でも使えます。勝敗を分けるのは必ずしも総合力ではありません。たとえトータルの能力では勝てなくても、何か一つに「一点集中」して「差別化」し、小さな分野で「NO1」を目指して、大勝を狙わず小さな勝利を積み重ねます。これで成功している事例がたくさんありますので、小であってもひるまず、勝てる市場・勝てる領域を見出しましょう。
 
◆関連解説『事業戦略とは』

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