メトリクスとは メトリクス管理手法(その1)

【メトリクス管理 連載目次】

 

1. メトリクスの意味

 
 メトリクスとは、様々な活動を定量化し、その定量化したデータを管理に使えるように加工した指標のことです。簡単に言うと、何かしらデータを収集して、そのままの形ではなくて、計算や分析を加えてわかりやすいデータ(数値)に変換したのがメトリクスです。そして、メトリクス管理というのは、加工して作ったメトリクスを使って管理することです。
 
 勘や経験に頼らない管理をするためには、メトリクス管理は非常に大切な考え方です。たとえば、あなたが飛行機のパイロットで、目的地まで乗客を乗せて時間どおりに到着させなくてはいけないとき。これもプロジェクトと考えることができます。コックピットには、エンジン出力や高度などの飛行機の状態や気温や風速などの外部状況などを定量化(数値化)して、できるだけわかりやすい形にして表示しているメーターがたくさんです。パイロットはこの各種メーターがないと飛行機を安全に、そして計画通りに飛ばすことはできないでしょう。
 
 ものごとを進める場合はすべて同じです。関係している様々な状態を定量化し、わかりやすい形で理解できるようにしなければ、ものごとを計画通りに進めることは難しい。これがメトリクス管理が必要な理由です。もちろん、ジャンボジェットなどの大型機とセスナなどの小型機では、メーターの種類や数は違うでしょう。でも、まったくメーターがない状態で、勘と経験だけで飛行機を飛ばすというのは、たとえ、パイロットが大丈夫だと言い張ったとしても、緊急事態が発生した時だけにしてほしい。自慢できる経験と勘は、緊急事態のときの損失を最小限にとどめるために、最大限に使ってもらいたいと思います。
◆関連解説『プロジェクトマネジメントとは』
 

2. メトリクス管理 — メトリクスによるプロジェクト管理

 
 ものごとを進めるのは、すべてプロジェクトということができるでしょう。簡単のため、ここではプロジェクトと記述することにします。そして、プロジェクトという何かしらのものごとを進める際に、メトリクスを利用してうまく管理する手法がメトリクス管理です。
 
 ここでの「管理」とはマネジメントではなく「コントロール」であることに注意してください。念のため、コントロールの基本概念を確認しておきましょう。次の図の通りです。
 
 
 
 そして、メトリクス管理の基本的な流れは次の図のようになります。
 
 
 
 この図で示すように、(1) 見積もり式を使って見積もりを作成する (2) 活動の実績データを収集・加工する (3) 見積もりと実績を比較して予実差(予定と実績の違い)を管理する (4) プロジェクトが終わった段階で見積もり式を改善する、そして最初に戻り、その改善した見積もり式を使って見積もりを作成するというサイクルを繰り返すのが、メトリクスを使ったプロジェクト管理の流れになります。図中にキーワードが書いていますが、それぞれのステップを実施する際に使う手法・技法です。
 
 このメトリクス管理サイクルですが、製品開発などのいわゆるプロジェクトだけでなく、個人でも使える考え方です。たとえば、ドライブに行くというとき。気ままにあてもなくドライブするときは別ですが、行きたいところ、見たいところがあって、時間やお金が限られているというときは、まさにプロジェクトですし、メトリクス管理を取り入れるのは、その実行力を磨くことに役立ちます。
 
 まず、目的地までどのくらいの時間がかかるのか、どのルートで行くのか、どこで休憩を取るのかなどを計画しますね。このとき、経験や仕入れた情報をもとに計画すると思いますが、頭の中で何となくではなく、こ...
れまでのドライブしたときの記録や公開されている渋滞情報などが、目に見える形でそろっていると計画しやすいものです。これらは、計算式の形にはなっていませんが、見積もり式ということができます。
 
 実際にドライブしているときは、今どこにいるのか、何時なのかという実績データを把握した上で、このペースでいいのかなとか、思ったよりも疲れたので休憩しようかなとか、実際の状況に合わせて、常に何かしらの状況判断をします。このとき、計画がしっかりしているほど、的確な判断が可能ですよね。これが、実績データの収集や予実差管理です。このとき、どういうデータを見ていれば判断しやすいのか、今の時点でどのくらいの時間的余裕があるのか、などを定量的に判断できると安心感は大きく変わります。
 
 次回は、メトリクス管理の手法から解説を続けます。
 

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