意匠法における「物品」の単位

 意匠法は、意匠を物品の形態であると定義し、意匠ごとに出願すべきものと規定しています。しかし、「物品」や「物品の単位」についての定義はないのです。一般には、物品とは有体動産であると理解され、用途・機能を持つひとまとまりの物を物品の単位として捉えているようです。
 
 用途・機能を持つひとまとまりの物であるので、カバンのような単一物の他、トランプや積み木のように、複数の構成物が組み合わされて初めて用途・機能を持つことになるものは、複数のセットで一つの物品(合成物)として扱われます。
  
 
 
 これとは別に、単体でも用途・機能を持ちつつも、セットで1物品として扱われる背広上下や夫婦茶碗のようなもの(集合物)もあります。そして、その延長線上に組物があります。「組物」とは、「同時に使用される二以上の物品であって経済産業省令で定めるもの」をいいます。例えば、「一組のディナーセット」「一組の自動車用フロアマットセット」などであり、全体として統一があるときは、「一意匠として」意匠登録を受けることができます。
 
 なお、「組物」を一意匠一出願の例外と捉える見解が多数のようですが、「一意匠として出願」できると規定されている以上、組物は一意匠であり、一意匠一出願の例外とは理解できません。
 
 産業デザインを保護する意匠法における物品という以上、用途・機能が要求されることは当然で、単一物の他、合成物が1つの物品として扱われることも当然でしょう。しかし、集合物や組物が1つの物品として扱われる理由は、他に求める必要があるのです。それは組物の意匠の登録要件です、全体としての統一、に求めることができるでしょう。
 
 合成物が1物品として扱われる理由も、統一したデザインがされるからです。そうであれば、デザイン的な統一のあるものは物体の数にかかわらず、1つの物品として扱うことも可能ではないでしょうか。
 
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 「組物」という物品をわざわざ定めることなく、どのような「物品」を組み合わせようと、全体として統一があれば1つの物品として扱うのです。加えて、「物品」の配置も意匠の構成要素として取り込むならば、インテリアデザインの保護にも道が開かれるでしょう。
 
  
◆関連解説『技術マネジメントとは』

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