デザインの新しい表現方法と意匠法

◆ 自動車の操作状態を表示する意匠

 
 平成29年5月30日判決言渡、平成28年(行ケ)第10239号審決取消請求事件から、デザインの新しい表現方法と意匠法の対応を解説します。
 
 本件意匠は、意匠に係る物品を「自動車」とし、自動車の操作状態( エンジン始動、前進、後退など)を示す画像を路面に投影するものです。特許庁は、この意匠は、意匠法第2条第2項の「操作画像」には該当しないとして、3条1項柱書違背を理由に拒絶しました。
 
 出願人は、本願が「秘密意匠」であるにもかかわらず審決取消訴訟を提起しました。裁判所の判断は特許庁と同じであり、以下の通り記されています。
 
 『(意匠法2条2項の)立法経緯を踏まえて解釈すると、同項の「物品の操作.の用に供される画像」とは、家電機器や情報機器に用いられてきた操作ボタン等の物理的な部品に代わって、画面上に表示された図形等を利用して物品の操作を行うことができるものを指すというべきであるから、特段の事情がない限り、物品の操作に使用される図形等が選択又は指定可能に表示されるものをいうものと解される。
 
 これを本願部分についてみますと、本願部分の画像は、図、第1のとおりのものであって「意匠に係る物品の説明」欄の記載(補正後のもの別紙第1)を併せて考慮すると画像の変化により運転者の操作が促され運転者の操作により更なる画像の変化が引き起こされるというものであると認められ、本願部分の画像は、自動車の開錠から発進前(又は後退前)までの自動車の各作動状態を表示することにより、運転者に対してエンジンキー、シフトレバー、ブレーキペダル、アクセルペダル等の物理的な部品による操作を促すものにすぎず、運転者は、本願部分の画像に表示された図形等を選択又は指定することにより、物品(映像装置付き自動車)の操作をするものではないというべきです。
  
 そうすると本願部分の画像は、物品の操作に使用される図形等が選択又は指定可能に表示されるものということはできないでしょう。また、本願部分の画像について特段の事情も認められないのです。したがって、本願部分の画像は、意匠法2条2項所定の「物品の操作...の用に供される画像」には当たらないので、本願意匠は、意匠法3条1項柱書所定の「工業上利用することができる意匠」に当たらない。』
 
 法解釈、当てはめとしてはその通りで、現行法で登録を認めることは困難でしょう。しかし、路面に投影されるとしても「画像」です。ネックは「操作の用に供される」という制約です。「操作の用に供される」という要件は、判決に示されているとおり、従前の物理的なスイッチを画像に置き換えたものを想定しているために設けられたものです。確かにこの意匠は「スイッチ」の要素はないでしょう。
 
 むしろ、1項で保護される「物品の機能に必要な画像」に近いもののように思われます。この意匠の機能を物理的に行おうとするならば、自動車の車体に操作状態を示すライト等を装着することが考えられます。このライト等と本件の「画像」は同...
等の機能のものと言えるでしょう。
 
 しかし、1項の意匠は「物品それ自体」に表示されなければならないと解釈されているのです。2項で「同時に使用される他の物品」という文言が書かれているために、解釈で1項の「物品それ自体」という枠を取り払うことはきわめて困難と言えます。
 
 この事案は、デザインの新しい表現方法に、意匠法がどう対応すべきなのかを考えさせるものです。尚、本願出願人は、同種の意匠4件について訴訟を提起しています(第10239号~10242号)。
 
  
◆関連解説『技術マネジメントとは』

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録


この記事の著者