ステージゲート法における事業評価項目

 今回はステージゲート法実行時における事業評価について説明します。

 

1.事業評価

 ステージゲート法の目的は、プロジェクトの事業の成功の視点からの評価にありますので、事業評価はゲートでの評価の中核を成します。

 事業評価には以下の2つがありますから、順を追って説明します。

・絶対基準Must-be criteria)

・期待基準(Should-be criteria)

 

2.絶対基準

 絶対基準は、テーマ・プロジェクト選定において、自社が絶対に譲れない部分に関し、Yes・Noで評価をするもので、従ってどれか一つの評価項目においてもNoであれば、即「キル」もしくは「差し戻し」になる項目です。

 具体的な項目としては、

-自社の戦略領域に関するもの

-自社の企業理念に関するもの

-成功に決定的な影響を与えるもの

  があります。

 

■自社の戦略領域

 絶対基準で欠かせないのが、自社の戦略領域との適合性です。この評価は、評価対象テーマが自社で定めた中期的戦略や長期的ビジョンの領域と合致しているかを評価する基準です。自社の戦略やビジョンから外れたテーマには、経営陣や社員の実際の時間の投入、資金、そして熱意の投入は期待ができませんし、その結果として他の企業の活動とのシナジーが確保できませんので、失敗の可能性は極めて高くなります。またそのテーマで成功しても、自社にとっての価値は限定的です。そもそも、戦略やビジョンの存在は必須の要件です。

 この戦略領域は、事業面(事業戦略・事業ビジョン)および技術面(技術戦略・技術ビジョン)両者での評価となります。

 当然自社の戦略が明確でないと、この戦略領域での評価はできません。また、それ以前に、ステージゲート法は不確実性を前提に、多数のアイデアを全体プロセスに積極的に投入することが必要ですので、自社の戦略やビジョンが明確でなければ、アイデアを選定する拠り所が存在せず、そもそも投入するアイデアが創出できません。

 もし、自社の戦略やビジョンが明確化されていない場合には、経営陣の集中した活動が必要となる作業ですが、是非ステージゲートの導入を機会に明確化してください。仮に戦略が明示されていないという場合でも、そもそも戦略が全くないという状況は考えられませんので、その戦略を明確化・言語化をする作業が有効です。ビジョンも同様です。

 

■自社の企業理念に関するもの

 これは、顧客、ユーザー、株主、社会、自社社員、仕入先、パートナー、政府・地方自治体等の内外のステークホールダーに対する、自社の姿勢で絶対的に守るべきものを示す評価基準です。

 具体的には、企業倫理に反しないか、環境に悪影響を及ぼさないか、社員の厚生を悪化させないか、ユーザーを危険にさらさないか、自社のブランドを毀損しないか等の例があります。

 

■事業の成功に決定的な影響を与えるもの

 この項目は、最終的な事業の成功に決定的な影響を与えるものに該当するかどうかを評価するものです(主にリスクが『極めて』高いものを排除する)。

 自社のマネジメント能力や体力を遥かに超えるリスクの存在や、過去の事業経験(特に失敗経験)から絶対にやらないと決めている領域は、この評価基準で排除します。

 例えば、極めて大きな投資が必要だったり、実現に長期の期間が掛かる、または人間の身体の中に入る製品は扱わない、などがここに相当します。

 

3.期待基準

 期待基準は、「Winning at New Products」の中ではShould-be criteriaという英語となっており、つまり絶対充足しなければならない基準ではないが、その基準を満たすことができる程良い基準のことを言い、私は期待基準という日本語を当てています。

 ステージゲート法は「事業に...

おいて成功する」プロジェクトを実現することを目的としていますので、評価基準においてもそのための基準でなければなりません。その基準を主に担当するのが、この期待基準です。

 それでは「事業において成功する」にはどのような基準を満たしている必要があるのでしょうか?この点については、過去から事業戦略やマーケティングの視点から相当の議論がなされていて、細部においてはいろいろな意見はありますが、基本的にはかなりのコンセンサスがあると思います。基本的にはマーケティングの3C、すなわちCustomers(市場)、Competition(競合)、Company(自社)の考え方に基づく考え方を基本として、その他重要な項目を付加する形が良いと思います。

 この点については、また稿をあらためて解説しましょう。

◆関連解説『ステージゲート法とは』

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