Advanced 40の発明原理: 10 先取り作用原理(必要なことを予め準備しておく、待ち時間削減:Preliminary action)

 前回の09 先取り反作用原理に続いて解説します。今まで、何処でも誰でも使えるTRIZツールづくりを試行してきました。その過程で、抽象化思考の苦手な人が、意外に多いようです。現場では、課題だけでなく、発明原理の活用にも抽象化思考が求められます。この最新版は、各々の感性に合せ、無意識的に拡大(抽象化)/縮小(具体化)できるよう工夫しました。つまり、原理名、言い換えた分かり易い文言、サマリー、サブ原理の図解、異分野適用例の5段階の視点でアイデア出しします。
◆40の発明原理、キーワード説明ページへのリンク
 

1. 先取り作用原理の概要

 
 事前に動作などの作用を施しておき、必要時に機能をスムーズに実行させる考え方です。例えば、予約タイマーや停電時の懐中電灯もこれに相当します。
 
                                                   
図1 10 先取り作用原理のイメージ図
 

2. サブ原理の種類と図解事例

 

a.物体またはシステムに望ましい作用を、それが必要になる前に用意しておく考え方

 
 オーブンやオーブントースターやグリルでは、庫内温度を均一にして焼きむらを防ぐために、調理する時、前もって庫内温度をそれぞれの目的に合った温度まで上げておきます。
 
                                                          
図2 オーブントースター
 

b.必要な時にすぐ動作できるように予め準備しておく考え方

 
 インスタントラーメンは、お湯をかければすぐ食べられるように、予め麺を茹で乾燥させた状態にしておきます。
 
                                                        
図3 インスタントラーメン
 

3. HW、SW及びビジネス等分野での適用例

 
     ・製造ラインのサブアッセンブリー
     ・CAEによるシミュレーション設計
     ・予め糊を塗布した封筒
 

4. 40の発明原理の主な活用法

 

 a.慣習的に使われている方法

 
 問題が発生したときは、パニックになったりして精神的な余裕がないようです。矛盾問題として捉え、課題を抽象化してから矛盾表から発明原理を検索するには、かなりの訓練が必要です。推薦したいのは,40の発明原理に日ごろから親しんでおくこと。あるいは、発明原理を全部スキャンして発想すること。TRIZそのものを理解していなくても、藁にもすがりたい人には、強力なヒントとなります。
 

b.矛盾Matrixから発明原理を抽出する方法

 
 矛盾 Matrix表の縦横の軸には、39×39の特性(パラメータ)が配置されています。課題を抽象化して、縦軸から「改善する特性」、横軸から「悪化する特性」を選ぶと、両者の交点に「発明原理(principle)」が提示されます。 この発明原理をヒントに解決策を発想します。例えば,改善する特性で「移動物体の体積」,悪化する特性で「移動物体の面積」を選ぶと,矛盾 Matrix表の交点に、「01分割原理」「04非対称原理」「07入れ子原理」「17他次元移行原理」を確認できます。
 
参考文献
  1. Darrell Mann 他:TRIZ実践と効用(1)体系的技術革新(創造開発イニシアチブ)
  2. 粕谷茂:図解これで使えるTRIZ/USIT(日本能率協会)
  3. 粕谷茂:SEのスピード発想術(技術評論社)
 
 

◆関連解説『TRIZとは』

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