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QUESTION 質問No.41

生産現場における統計の利用

生産統計・SQC |投稿日時:
工場現場で自動車部品の加工をしている製造技術者です。
部品の投入から製品完成まで全自動の設備になっており、我々の業務は設備の保全と調整です。ほとんど不良品は出ないのですが、製品を抜き取り検査していると8件ほどの主要な特性が規格の範囲内でばらつきます。
設備の調整可能項目は20点ほどありますが、過去の経験で現在の設定値が決まっており、前日の特性平均値を見ながら毎朝微調整しています。
統計的品質管理を取り入れて、日々の変動とばらつきを減らし、不良の発生を未然防止するにはどこから着手すればよろしいでしょうか?

【これは事務局による仮想の(しかしありがちな)質問です。ご了承ください。あなたの質問をお待ちしあます。】

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ANSWER
回答No1 | 投稿日時:

☆SQC的手法 の適用から考えれば、平均 と標準偏差 の管理図が、 沢山、貼り付けてあって、時系列変化を
読み取っている工場でしょう。3シグマを飛び出すまで待つことなく、早めにアクションを取る為の基準と行動案を策定することから初めてはいかがでしょうか?
☆毎朝微調整 という定時処理 に限定する理由がどこにあるのかは予め考察して、過去の歴史を紐解く必要が
ありそうです。行動面での自由がどこまであり、何が制約かが行動案策定に不可欠です。

☆自動制御工場でSQCが効果を挙げるには、困難が伴います。
 設備も人間と同様に個々に疲労特性があって、いつかは工程分離実験が不可欠になると思われます。
 どんな実験計画法が必要になるのか、その切っ掛けとなる情報を提供するのがSQCの位置づけでしょう。

☆ SQCも情報を吐き出すに、其の前に膨大な情報を読み取らねばなりません。
  自動制御工場の情報は偏ることを恐れえず、なんでも記録できることはずべて収集するという姿勢で
  情報を集める仕組みすなわちデータベースをつくることが早くに必要になります。

☆ データベース開発の費用対効果を知ることは鶏と卵の関係「効果が出たら作ろう」という勢力が強いでしょう。
  「データベースが無ければ効果が出ません」。
   こういう官僚主義を打破する透徹した見通しは工場内の人間しか感知することは出来ません。
  
☆ とりあえずは、経理・生産管理用データと設備の稼動データ(負荷量、消耗エネルギーや消耗品量なども)
  と、製品の検査データとの連結が出来るよう小さくてもかっちりしたデータベースを作れば、良く、
  SQC手法を応用するソフトには困らない時代と思います。

☆ 今回の質問では、不良品 問題が無いので、連続値が扱えるソフトとグラフが役立つと思います。
 
     岩崎 滋  文責
 




ANSWER
回答No2 | 投稿日時:

半導体向け製造業での品質保証を担当していた経験を元に回答させて頂きます。

統計的プロセス管理(以下:SPC)の目的は、①異常な状態で加工された製品の流出防止②異常発生の未然防止③品質向上の3つが有ります。質問者様の目的は、異常発生の未然防止と品質向上と見受けられます。そのことを踏まえて、SPCに着手する手順を説明します。
注)統計的品質管理(SQC)と統計的プロセス管理(SPC)は同義語であるが、製造工程が主体であるため、SPCを用いています。

1.データベースの構築
統計処理を行うためには、データベースが必要となります。データ数は、一般的に20サンプル以上と言われていますが、季節変動や材料ロットなどの影響もあり、対象の製造工程の特性を加味してサンプル数を決める必要が有ります。データベースは、エクセルで作成しても問題ありません。
既に製造工程データで20項目、品質特性値で8項目有りますので、28項目を一つのデータベースにまとめれば良いでしょう。ただし、製造工程データと品質特性値を紐付ける必要が有ります。また、製造工程データは設定値でなく実測値を用いなければなりません。

2.品質特性値の工程能力指数
次に、品質特性値が規格外になる可能性を計算する必要が有ります。その計算値を工程能力指数と言いCpとCpkで表します。計算は、エクセルに計算式を用いれば容易に出来ます。また、統計ソフトの活用も便利です。
*Cp:規格に対してどれだけバラツキがあるかを表します。
*Cpk:規格に対してバラツキと中心値からのズレにより、どれだけ規格外が発生するかを表します。
まずは、Cpkを評価します。評価方法は下記の通りです
 *Cpk<1.00 工程能力が不足。早急に改善を要する。
 *1.00≦Cpk<1.33 工程能力はあるが、改善必要。
 *1.33≦Cpk<1.67 工程能力は十分。現状維持。
 *1.67≦Cpk 工程能力は十分。検査頻度削減可。
Cpkが1.33未満の場合は、Cpを確認し、バラツキによるものか、中心値からのズレなのかを評価しておく必要が有ります。改善が必要な品質特性値と改善の優先順位を明確にしておきます。

3.製造工程と品質特性値の相関性
次に、製造工程のどの項目が品質特性値に影響を与えるのか分析します。理想は、多変量解析を行うことが望ましいですが、まずは各工程データと品質特性値の相関関係を分析することで良いでしょう。分析は、統計ソフトを活用すると容易に出来ます。品質特性値と相関性の高い製造工程項目をキーパラメータとして設定し、相関性の低い製造項目はモニター項目として区別します。また、技術的視点から重要と思われる製造項目もキーパラメータ―として設定しても良いです。注意点として、トレードオフの関係が無いか把握しておく必要が有ります。トレードオフの関係が有る場合は、微調整が別の品質特性値に悪影響を及ぼします。改善すべき品質特性値と相関のある製造工程項目を特定しておくことが重要です。

4.ルールの設定
SPCのルールは、①OOC(Out Of Control:異常の定義)②MRB(Material Review Board:異常品の処置)③RFC(Response Flow Checklist:異常処置対策)の3点が重要となります。
①OOCのルール設定ですが、データ管理に用いる管理図を決める必要が有ります。管理図は、取り扱うデータの種類(計数値と計量値)や工程の特性(バッチ式や連続加工など)により適切な管理図を用いる必要が有ります。管理図の選定によりσの計算方法も異なります。次に、異常の判断を決める必要が有ります。JISでは、管理値(3σ)外を含め8種類の判定基準が有ります。判定基準は、正規分布を前提に設定されているため、データの分布を加味して設定するのが望ましいです。また、異常のレベルを重要度により3水準程度決めておくと良いでしょう。
②MRBについては、OOCが発生した場合に、対象製品の処理方法を決めるものです。OOCのレベルにより、それぞれの処理方法を決めておくことが望ましいです。
③RFCについては、OOCが発生した場合の対応策を決めるものです。MRBと同様にOOCのレベルにより、それぞれの対応策を決めておくことが望ましいです。また、予め異常発生状況に応じた対応マニュアルを整備しておくことも有効な方法となります。

5.SPCの実施
日常管理は、管理図を用いて行います。望ましくはリアルタイムで管理図を作成し異常をアラーム表示することですが、1日の結果を関係者で討議する方法でも構わないです。ただし、微調整は、OOCルールに基づいて行う必要が有ります。
加工頻度により異なりますが、1か月ごとを目安にデータの分析が必要です。Cp、Cpkと管理図を品質会議等により関係者全員で討議し、Cpkを1.33以上にするための改善策を講じていくことで継続的な改善につなげていきます。
SPC管理は、業務負荷が掛かりますので、導入初めはCpkが1.33未満の品質特性値に関する製造工程項目から優先的に取り掛かることが無理なく進める方法となります。