人的資源マネジメント:あなたにとっての幸せとは(その1)

 今回は、国際ポジティブ心理学学会(IPPA)の日本支部である日本ポジティブ心理学協会(JPPA)のプラクティショナーとして、理論や裏付けとともにポジティブ心理学の内容を何回かに分けて紹介したいと思います。
 
 心の話題はポジティブ心理学をベースにしていますが、ポジティブ心理学というのは、アメリカ心理学会の会長も務めたマーティン・セリグマンらが創設した個人や社会を繁栄させるような強みや長所を研究する心理学の一分野で、一般の人が幸せで豊かな人生を送るための実践的な手法を科学的に研究することを特徴としています。
 
 テレビなどのメディアや書籍、インターネットなどでは、心理学と称して様々なことが紹介されていますが、裏付けのないものや理論が曖昧なものが少なくありません。ここでは、国際ポジティブ心理学学会(IPPA)の日本支部である日本ポジティブ心理学協会(JPPA)のプラクティショナーとして、理論や裏付けとともにポジティブ心理学の内容を何回かに分けて紹介したいと思います。充実感、満足感、幸福感を実感できるよりよい日常を過ごすためのヒントになれば幸いです。
 

1. ポジティブとは

 
 ポジティブ心理学は「ポジティブ」とついていることから、ポジティブシンキングやプラス思考などと同じものだと思ってしまうことが多いようです。ポジティブシンキングやプラス思考などは、いつでもポジティブであることを勧めているものがほとんどです。これらが目指していることは「100% ポジティブ」ということができるでしょう。
 
 しかし、ポジティブ心理学は100%ポジティブを勧めてはいませんし、反対に危険であるといっています。ポジティブシンキングやプラス思考を重視すると、ネガティブ感情やマイナス思考を押さえ込んでしまい、何に対しても甘い判断をしてしまうことでトラブルに巻き込まれたり危険な状況に陥ったりすることになりかねません。さらに度が過ぎると、現実逃避が常態化して幻想や妄想の状態になったり、ネガティブなことを考えてしまう自分を否定して鬱病になったりするケースもあります。
 
 ポジティブ心理学は、ポジティブ感情とネガティブ感情のどちらにも大切な役割があり、両方ともが人にとって必要なもので、重要なのはそのバランスだといっています。ポジティブ感情とネガティブ感情それぞれの役割や適切なバランスについては、次回以降で解説したいと思います。
 

2. 幸福とは

 
 次は「幸福」について考えたいと思います。そのためにはまず、幸せかどうか、その度合いを調べる必要があります。そのための簡単な方法があるので紹介しましょう。その方法とは「人生のハシゴ」といわれているもので、ギャラップ世界世論調査で使われている主観的な幸福感の測定尺度です。「キャントリルのハシゴ」と呼ばれることもあります。「考え得る最悪の人生」をゼロ、「最高の人生」を 10 としたハシゴを想像してもらい、現在、自分が立っていると思う位置を回答してもらうというものです。
 
図186. 人生のハシゴ
 
 人生のハシゴを使うと、文字が書けない、あるいは、文字がない人たちも質問に回答できるため、どんな未開の地であっても同じように幸福度を調べることができます。英国の民間シンクタンク New Economics Foundation が世界中の国々の幸福度を調査した結果を紹介しましょう。
 
図187. 人生のハシゴによる世界の幸福度調査結果
 
 この調査結果では 140ヶ国中の幸福度トップ10は次のとおりです。北欧の国々が比較的高い順位となっていますが、明確な傾向があるわけではありません。日本は39位です。
 
1. スイス
2. ノルウェー
3. アイスランド
4. スウェーデン
5. オランダ
6. デンマーク
7. カナダ
8. オーストリア
9. フィンランド
10. コスタリカ
 
 さらに、この民間シンクタンクは地球幸福...
度指数(Happy Planet Index)という指標を使って各国の幸福度を調査しています。この指数は人生のハシゴに加えて平均寿命とそれらの格差、そして、エコロジカル・フットプリントを使ったもので、1位はコスタリカ、2位はメキシコ、3位はコロンビアとなっています。日本は 58位です。
 
図188. Happy Planet Index 2016
 
 これらの調査結果からは、幸福であることは、先進国か開発途上国か、あるいは、1人あたりのGDPなどは直接には関係しないことがわかります。何が幸福かどうかを決めるのかを明確にすることは単純ではありません。
 
 次回もこのテーマを続けます。
  
◆関連解説『人的資源マネジメントとは』

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