設計段階で加工品見積ソフトを生かす方法(その1)

  

1. コストは管理技術と固有技術で決まる

 技術経営という言葉が言われるようになって久しくなります。技術経営は、製造業がものづくりの過程で培ったノウハウなどを経営活動の立場から体系化したものです。そしてそれは、コストにも反映されてくるものです。経営活動は、その会社のものづくりに関する技術力(固有技術)と管理力(管理技術)を総合した結果であり、貨幣価値で表したものがコストです。
 
 固有技術は、その会社が長年かけて蓄積してきた技術のことです。具体的なものには、特許の取得があります。これに対して、ミクロ的な視点で見ると直径0.5㎜の穴を深さ30㎜ブレなくあけることができるといったような職能レベルのものもあるでしょう。そしてもう一つの管理技術は、生産の効率の良し悪しといえるのではないでしょうか。優れた固有技術を持っていても、同じ品目を同一時間内により多く生産できることです。このためには、十分な仕事量を確保し、設備機械をフルに動かすことができるようにすること、同一品目をより短時間で製作できることです。だからこそ、高い生産性を保てるようにするIEやVEなどの管理技術を効果的に活用することが求められるのです。
 
 製造企業においては、この固有技術と管理技術を両輪として、バランスよく向上を図りながら、効率的・効果的に活用することによってベストコストを達成できるのです。それが企業力となっていくのではないでしょうか。
 

2. 見積ソフトの課題は

 いくつかの市販と自社製の加工品見積ソフトを評価したことがありますが、そのチェックポイントのいくつかを次に掲げてみます。
 
(1) 見積りのためのコスト基準が明確なっているか。
(2) コスト積算について、理論性が確保できているか。
(3) コストデータが科学的な根拠を持っているか。
(4) 見積り業務について、どこまで網羅できているか。
(5) 見積り業務についての秩序性をもっているか。
(6) 見積ソフトに依存する部分と人に依存ずる部分が明らかになっているか。
(7) 見積結果の検証が可能であるか。 
 
 これらの項目の中で、とくに注意を払わなければならないことに(6)があります。多くのソフト開発でも同様なのですが、ソフトを使うユーザーに必要な資質とソフトで処理する業務を明確にし、役割分担と整合性をとることです。
 
 見積り業務について、具体的な例を用いて考えてみます。マシニングセンタで材質SS400、厚さ10㎜の鋼板に直径φ50㎜の貫通穴をあけるとします。詳細の工程を見ますと、センタもみ⇒小径のドリル(φ25~30㎜のドリル)⇒φ50㎜のドリル⇒面取りという手順になります。私が見た見積ソフトの大半が、これらの詳細工程の各々を入力していくことになっています。これに対して見積り業務をする担当者が、前述の手順を知らないで入力しているケースによく出会うのです。
 
 この結果は、φ50㎜のドリルだけを見積もった加工時間となり、極端に短くなって、この見積ソフトは役に立たないという判断になってしまうのです。そして、見積ソフト...
は使えないものであるように思ってしまうのです。その原因は、見積ソフトを運用するユーザーに必要な資質とソフトで処理する業務の仕様の間の整合性が取れないことです。つまり、知らない業務を入力しなさいといっていることであり、もの作りの基本的知識を失うことになるのです。弊社の見積ソフトは、このような詳細手順をできるだけ自動計算させるように設計しました。
 
 さらに、(7)の見積ソフトの検証をするにあたって、上記の手順における工数を算出できる人材がいないということもあるのです。このような人材を育成することも大切です。このようなノウハウを見逃さずにマン-マシンの関係をチェックしておくことが求められます。
 
 次回は、コストを分けて考えるを解説します。
  

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