COP21 パリ協定: 新環境経営 (その48)

 新環境経営への取組みについての話題を提供するに当たり、経済成長に邁進してきた中で発生した公害の歴史、CSRの取組の変遷、環境マネジメントシステム、有害物質管理の現状、エネルギーマネジメント、エコを経営に活かす、その後、省エネ、創エネ、畜エネについて紹介してきました。その44からCOP21パリ協定ついて紹介しています。今回は温暖化への途上国支援について解説します。
 

1. 途上国への日本の支援

 「日本は2020年に現在の1.3倍、官民あわせて年間1兆3千億円の気候変動対策事業が途上国で実施されるようにする」。COP21の初日、安倍晋三首相は約150カ国の首脳が集まる会議で宣言しました。日本は13~14年の2年間、途上国の温暖化対策に約2兆円を支出したとしています。このうち8割は、政府の途上国援助や、政府が100%出資する国際協力銀行の融資事業など公的なお金です。
 
 温室効果ガスを排出しながら先に発展した先進国は、温暖化の被害にさらされやすい途上国を支援しなければなりません。国連交渉では長年、途上国支援のあり方が大きな論点でした。COP21では、ほかの先進国とともに日本も支援を強める姿勢を示し、合意への機運を高めました。パリ協定には、途上国支援のための資金提供は先進国の義務と明記されました。支援額が全体で年1千億ドルを下回らないようにする目標も盛り込まれました。
 

2. これまでの途上国支援の課題

 第一に、資金や技術が先進国の考え方に従って拠出されること。先進国が運営の主導権を握っている世界銀行に事務局等が設置され、資金を管理しています。中国を中心としたAIIBの設立からも分かる通り、これまでの先進国による途上国支援の仕組みに対する途上国からの反発は大きく、支援の仕組みづくりに途上国を加えていくことが重要です。
 
 第二に、支援が途上国の民間部門の成長に波及しておらず、自立的な発展につながっていません。先進国の公的機関や国際機関から途上国の公的機関への支援が多く、民間に資金が流れにくかったようです。
 
 第三に、気候変動に脆弱な地域に対する被害の対策への支援が進んでいません。途上国で温室効果ガスの削減プロジェクトを実施する代わりに先進国が排出権を得る「クリーン開発メカニズム:CDM」については、実施地域も中国やインド等の新興国や中進国が多く、後発途上国等の気候変動に対して脆弱な国への支援は少ない状況です。
 

3. 日本の支援の内訳

 安倍首相が宣言した1兆3千億円も、多くは年5500億円規模のODA事業、融資額が年2兆5千億円規模の国際協力銀行の一部事業が占めるとみられます...
。従来は「開発支援」とされてきた都市鉄道や石炭火力発電といったODA事業も、日本は「温暖化対策の一環」と主張しています。こうした考え方に途上国には「ダブルカウントだ」(インド)という批判もありますが、開発支援と温暖化対策を切り分けるのは
難しいようです。
 
 パリ協定では、先進国以外も自主的に途上国を支援するよう奨励しています。経済力のある新興国が念頭にあり、すでに中国は独自の支援を表明しました。今後の支援目標の額には「新興国への支出もカウントしたい」というのが日本の意向です。
 
 次回は、温室ガス「ゼロ」実現のための長期的視点について解説します。
  

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録


この記事の著者