永続地帯: 新環境経営 (その41)

 
 前回のその40から続いて、今回も永続地帯についての紹介です。永続地帯とは、再生可能エネルギーによるエネルギーの自給と、食料の自給が可能な地域です。今回は、その現状について紹介します。
 

1. 永続地帯の現状

 「永続地帯」とは、「エネルギー永続地帯」であって、「食料自給地帯」でもある区域です。「エネルギー永続地帯」は、再生可能エネルギーのみによって、その区域におけるエネルギー需要のすべてを賄うことができる区域です。この区域におけるエネルギー需要としては、民生用需要と農林水産業用需要を足し合わせたものを採用しています。輸送用エネルギー需要はどの自治体に帰属させるかを判定するのが難しいため除外していますす。
 
 「食料自給地帯」は、その区域における食料生産のみによって、その区域における食料需給のすべてを賄うことができる区域です。エネルギー自給率(=再生可能エネルギーで賄えている割合)は、1位大分県で23%、以下秋田県18.5%、富山県16.6%、長野県13.8%、青森県13.7%です。又、食料自給率(カロリーベース)が100%を超える都道府県は、北海道、秋田県、山形県、佐賀県、青森県で、農業県の岩手県、新潟県も100%に届きません。東京都、大阪府、神奈川県はわずか1~2%です。(出典:永続地帯2014年度報告書)
 
 これらを更に市区町村に落として、それぞれの地域の自給率を見える化することで、永続可能な地帯なのか否かを見る試みです。これまでも、食料については、農水省でデータが公開されており、食物の種類別の生産量や金額が見られるようになっていますが、エネルギーの自給については、化石燃料から再生可能エネルギーへの置き換えの進展に合わせて、2004年から動き出しているものが、2011年の東日本大震災を契機に、再生可能エネルギーへの置き換え機運が高まり、ドライブがかかってきているものと思われます。
 
 見える化の取り組みにより、エネルギー自給率(=再生可能エネルギー)と、食料自給率を併せた「永続地帯」の見える化は、2012年から集計データが公開されはじめ、以後2013、2014年度のデータの公開に繋がっています。人類の基本的生存の条件である、エネルギーと食の自給状況が、地域ごとに、いつでも確認できるということは画期的なことで、ITの進化によりビッグデータ活用が進み、「永続地帯」の見える化が可能になったということです。
 

2. 永続地帯の見える化指標の役割

 永続地帯指標は、次のような役割を担うと考えられます。
 

(1) 長期的な持続可能性が確保された区域を見えるようにする。

 将来にわたって生活の基礎となるエネルギーと食料を、その区域で得ることができる区域を示します。「永続地帯」の指標は、長期的な持続可能性が確保された区域を見えるようにする役割を担います。
 

(2) 「先進性」に関する認識を変える可能性を持つ。

 人口が密集する都会よりも、自然が豊かで人口の少ない区域の方が、「永続地帯」に近い存在となります。持続可能性という観点では、都会よりも田舎の方が「先進的」になります。同様に、この指標を国際的に展開していけば、従来は「途上国」...
とみなされていた地域の方が、持続可能性という観点からは「先進的」であることが明白になります。
 

(3) 脱・化石燃料時代への道筋を明らかにする。

 今の世界は、一次エネルギー投入の9割を化石燃料に依存しています。しかし、石炭、石油、天然ガスといった化石燃料は、数百年という単位で考えるとやがて枯渇に向かいます。とくに、地球温暖化の進行を考えると、枯渇する前に使用を制限していかざるを得ません。「エネルギー永続地帯」の指標は、現段階でも、再生可能エネルギー供給の可能性の大きな地域が存在することを明らかにして、このような地域を徐々に拡大していくという政策の方向性を明らかにする役割を果たします。
 
 次回は、「永続地帯」向けて、どのような取り組みが可能かを考えます。
  

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