品質管理の和洋折衷とは

1.平均値の盲信

 複数データの代表値として平均値を用いる事が多々あると思います。平均貯蓄額、平均余命、平均点、平均給与、平均単価など、事例をあげるとキリがありません。平均値が身近な指標で集団の特徴を表す数値としては最もポピュラーな証拠です。然しながら、平均値を盲信すると本質を見失うケースもあります。例えば、平均貯蓄額がそうです。この場合多くの人は一般的な人が貯蓄している額の平均を知りたいと思っているはずです。然しながら、実際は極一部の超高額所得者の貯蓄額の影響を受け、平均値は大幅に引き上げられます。この場合は算術平均では無く、総てのデータを降順か昇順に並べ、ちょうど真ん中のデータを採用すると求めるイメージと合致します。即ち中央値を取ります。
 
 また改善を行う時、多くの場合平均値を改善しようとします。これも事例を上げますとボーリングを上達させたいと考えた時、アベレージスコアを上げようとするでしょう。アベレージが100の人で、Aさんは普段80-120くらいで推移している。Bさんは50-150くらいで推移しているとしたら、がむしゃらに練習し、アベレージを上げる事が最善の改善アクションと言えるでしょうか。統計的品質管理という難しい言葉を知らない方でも、Bさんはまず調子の波を減らし安定して100に近いスコアを出した方が良いと感じるのでは無いでしょうか。
 

2.品質改善とばらつき

 品質改善も同じ事が言えます。ばらつきが大きいにも関わらず平均値を改善しようとするケースは少なくありません。この場合、平均値が少し変わった程度では本当に平均が上がったのか、ばらつきによる誤差なのかわかりません。正確には、統計手法の「検定」という手段を用いれば判断は出来ますが、100%の信頼性を持った判定はできません。
 
 つまり確実な改善を試みる場合は、ばらつきを把握し、それが大きい場合はばらつきを抑制する対策を行い、それが達成出来てから平均値の改善を試みるのがベストです。その方が回り道に見えて確実に効率的で、且つ大きな成果がもたらされます。
 
 日本の品質管理の高さは、ばらつきを抑える行動が自然に出来ている事が根底にありました。勤勉で真面目な国民性が、手順に従いルールを守る行動にマッチしていたからです。しかし、現在は求められる品質の高さ、携わる人のモラルやスキルの低さの問題などがあり、現場任せだけでは成り立たなくなってきました。
 

3.品質管理の和洋折衷

 そもそも改善を主導するエンジニアですら、ばらつきを意識せず平均値だけ改善すれば良いと考えています。国が確率統計の教育の手を抜いてきた弊害です。日本の品質管理の高さが圧倒的優位性を持っていた時代、欧米は徹底的にその原因を調べました。その集大...
成として、ばらつき削減を主眼としたシックスシグマという改善手法を確立しました。シックスシグマのコンセプトは、ばらつきを抑制し、その後、平均を改善する。その為に、ばらつきを把握する統計指標・統計手法の教育に力を入れたプログラムとなっています。
 
 シックスシグマも個人的には完璧なシステムとは思いませんが、その概念は優れており日本企業も大いに参考にすべきと考えています。つまり「品質管理の和洋折衷」が日本企業のさらなる躍進の鍵になるのでは無いかと思います。
 
 特に品質管理や統計手法に馴染みの無かった業界に積極的に取り入れることで、今後、大きな躍進に繋がると考えています。
 

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録


この記事の著者