クリーンルームの中では、なぜ皮膚のゴミが多いのか

 前回は、防塵衣と髪の毛の事例を解説しました。今回は、なぜ皮膚のゴミが多いのかを考えます。
 
 クリーンルームの中では皮膚のゴミでお困りの工場も多いと聞いています。なぜクリーンルームの中に皮膚が多いのかと言うと、人から剥がれ落ちるからです。皮膚はどこが一番剥がれやすいかと言うと、先ず顔です。顔付近は、喋ったり、笑ったり、あくびをしたりと言うふうに皮膚が動く、変化が大きいので、剥がれ、落下が発生しやすいということになります。また、防塵衣を着用していても、露出している部分であり、飛散しやすい場所です。特殊な工場では、顔付近からの皮膚の脱落したものを飛散させないよう、ゴーグルをしているところもあります。
 
 人から出たゴミを分析、分類しますと皮膚の比率がかなり多いのですが、この他化粧品、ウイルスなども出て来ます。ただ、化粧品に注目しますと、皮膚に塗っているわけですから、皮膚と一緒の塊という場合もあります。この影響を考えますと、皮膚はゴミという観点に加え、分析すると塩分などが含まれているのがわかります。
 
 半導体製品などでは塩分で品質に影響が出ることも考えられます。ナトリウム汚染です。また、化粧品の方は、20~30種ほどの成分が検出されますが、その多くは金属です。重金属も含まれています。つまりこれが金属汚染につながるということです。
 
 厳しい管理をしている半導体や表示体工場などでは、化粧することに制限があったり、ピアス、腕時計の持ち込みが制限されているところもあります。化粧というと女性のことと思いがちですが、男性用化粧品、ポマードなども同じ考え方です。逆に、クリーンルームに入る時、皮膚の剥がれを抑えるため、専用のクリームを手に塗るというところもあります。
 
 専門的には、臭いもパーティクル(微粒子)です。このように、クリーンルームの中では人は微粒子の最大の発生源ですから、人自体の入室も制限するなど工夫がされています。
 
 クリーンルーム内に人が少ないと清々とした感じがしますが、同時に人起因のゴミも少ないのです。人から皮膚が剥がれ落ちると言うことについては、空気清浄協会の過去のレポートに、“人の皮膚は3日に一度置換する”と書かれています。置換とは古い皮膚が剥がれ落ち、新しい皮膚に置き換わると言うことで、これが3日に一度と言うことです。また、冬の雪焼けよりも、夏の日焼けの方が圧倒的に剥がれの発生は多く、昔の話ですが、半導体では、夏は歩留まりが下がるなどと言われた時期もありました。こういう日焼けのひどい人もクリーンルームへの入場が制限されます。
 
 手首付近は皮膚とインナー手袋、防塵衣の袖、腕時計などが相互に擦れること、加えてエアシャワーのドアが自動開閉ではない場合、ドアノブをガチャガチャと回すことにより、先...
ほどの部位が相互に擦れる強制発塵により、“皮膚は3日に一度の剥がれ”よりも加速すると思われます。
 
 従って、この付近からの発塵、飛散を抑えるため、防塵衣も二重袖タイプがあります。そのことを考えた二重袖ですから、この設計思想に合致した着用をしないと、高価な費用をかけた割に効果がありません。
 
 厳しい管理が要求される工場も、緩やかな管理で良いとされる工場もクリーン化の知識だけは持っていただきたいと思います。それらを知ったうえで、自分たちの工場も同じように厳しくするということではなく、製造している製品やクリーンルームの清浄度レベルを考えながら、妥当な管理を考えることが重要です。
 

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