‐情報収集で配慮すべき事項(第3回)‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その11)

 前回の事例その10に続いて解説します。ある目的で情報収集を開始する時には、始めに開発方針を明らかにして、目的意識を持って行動する必要があります。目的を明確にしないで収集した情報は広がりがあり過ぎて掘り下げた分析が出来ないため利用価値が低くなります。また、情報の発生源を明確にして分類整理が行える様にしなければ収集した情報を活用できないだけでなく、狙いにすべき客層と開発品との間に食い違いが生じて、販路設定で失敗する事も起こりかねません。
 
情報収集で注意しなければならない事項を7点、次に整理します。
 
        (1)対象を決めて集中的に情報収集
      (2)目標にしている分野に関する市場動向の研究
      (3)製品を愛用して説得力を持つ
      (4)情報発信のキ-マンを把握
      (5)情報量が多く出る相手をマ-ク
      (6)情報収集に適した相手先が乏しいときの対策
      (7)異常現象や小さな変化を見逃さない
 
 (1)~(4)は、情報収集で配慮すべき事項(第1回)(第2回)で述べましたので、第3回では(5)(6)(7)を解説します
 

(5)情報量が多く出る相手をマ-ク

 どの相手先からも同じ程度に情報が得られることは少ないです。質の良い情報を出してくれる相手は限られます。概ね経営業績の良い企業から得られる情報量は多く、価値ある情報が得られ易いです。そのような視点で探索することを試みましょう。そして、訪問の度に、当方から提供する話題を変えることで、相手の反応も変わり、新しい情報が得られることになります。
 
 現場責任者との接触を心掛けるように強調している機械メ-カ-の経営者がいます。事務所で話を聞いて済ますようでは価値のある新鮮な情報は得られません。つまり、キ-マンを特定して情報収集を行うようにすることです。
 

(6)情報収集に適した相手先が乏しいときの対策

 情報収集の対象になる相手先が乏しいときは、知己を頼って、いもづる式に情報収集の得られる相手を増やしいてくようにします。この場合、異業種交流で自分の関心のある事項を熱意を持って語り、関連ある企業を紹介してもらい、情報収集の相手先を増やしている例があります。知人に自分が関心を抱いている事項を熱心に話しておくと、その時に紹介先が得られなくても、何かの機会に思い出して連絡がもたらされることあるかもしれません。
 
 関心のあること、開発に力点を置いている事、等を相手の信頼度を確かめてそれ相応に話しておく事は大切なことです。開発情報は秘密にしなければならないとして、秘密主義に陥ると情報は入ってこないから、見極めが大切です。秘密主義で話題に出す事を避けて、良い情報を求めようとしている企業に確かな情報が入って来ることは少ないです。秘密にすべきことと、話して良いこと、信頼出来る相手の確かめ方等に関する見極め方についても企業内で議論する様に務めないと、この面での感覚が鍛えられません。
 

(7)異常現象や小さな変化を見逃さない

 常識で判断して異常なこと、または、小さな変化については、これらは例外と見なして簡単に見逃してしまうのが普通です。ここで、ちょっと立ち止まって考えて見ると、あらゆることは、始めは小さな変化から始まり、だんだんと大きく成長して行く事が判ります。
 
 つまり、うっかりして見逃し、大きくなってから気づいても手遅れです。目立つような段階になるとその分野への参入企業が多くなり、過当競争の渦に巻き込まれます。多くの場合、目立たない現象...
を問題点として取り上げると、社内からも反対され、経営者はつらい思いをしなければならない場面に立たされます。そのような場合、その問題が解決したら、どの程度の需要が生まれるのか、それを想定出来る情報を集める事で経営者の孤独感を和らげる作用が生まれます。
 
 早く情報を捉え、開発品を完成させることで先行者の利得を得ることができるから、熱意を持って幹部を説得し、経営者があれだけ熱心に主張するのだからついて行かなければなるまい。と思わせる様にしなければなりません。何はともあれ、日常から小さな変化に敏感に感じる感覚を磨くように努める必要があります。それには、様々な目立たないこと、目立つことに関する情報を記録し、また、開発者の先例を学び、どのような局面で開発の手掛かりを得たのか、前例を知る勉強会を企業内で持ち、その知識を共有するように務めることが肝要です。
 

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