自然界をヒントにした発想事例3 -護身用具、緊急救助法-

1.ソーダ・サイフォンを見て、高圧ガスを使った護身用具を発想した、イギリスの創造学者 エドワード・デ・ボノ

                                                   
 デ・ボノ博士は『水平思考の世界』の著者として知られています。筆者も大変親しくしてもらった創造学者ですが、ご自身もアイデア開発を行っています。
  あるとき、高圧ガスを使った護身用の器具をつくってほしいと依頼されました。締め切り間近になってもこれといったアイデアが浮かばず、居間を歩き回っていたところ、ふとお盆の上に置かれたソーダ・サイフォンに気がついた。それはソーダを造る器具で、炭酸ガスを閉じ込めるために、口の部分は引き金で操作するようになっています。
 「このソーダ・サイフォンの容器に高圧ガスを詰めてみたらどうだろう。引き金を引くと高圧ガスが噴出する……」。新しい護身用具の誕生です。
 身近な品にもアイデアのヒントは隠されています。あらゆるヒントに敏感であることが創造にはとても大切といえます。

2.シャンパンの栓が飛ぶのを見て、のどを詰まらせた人の緊急救助法「ハイムリック法」を開発した、アメリカの外科医 ヘンリー・J・ハイムリック

                                                               
 のどに異物がつかえて死ぬなんてつまらない……ステーキの固まりをのどにつまらせて亡くなった人の話を聞いて、外科医のヘンリー・J・ハイムリックは思いました。そんなときは、背中を叩いても、かえって気管の奥に入ってしまう。どうしたらいいものやら、かいもく見当きませんでした。
 ある日、友人のパーティが盛大に開かれました。次々とシャンパンの栓が抜かれる中で、一人の執事が開けようとしたシャンパンの栓だけがどうしても開きませんでした。全員の目が執事とシャンパンの栓に集まりました。そのとき、ポーンッと音がして、勢いよく栓が天井まで飛び出しました。
 ハイムリックはそれを見たとき、ひらめきました。シャンパンは炭酸の圧力で栓を押し出します。人間の肺だって中の空気を圧迫すれば、つかえていた異物を押し出してくれるだろうと考えました。
背中を叩くのではなく、詰まらせた人の背後から両腕を回し、胸郭の下に外れないように手首を組み、一定のリズムでだんだん強く締めつけると異物が押し出されるのです。この救助法(ハイムリック法)は数多くの人を救うものとなりました。

出典:「ひらめきの法則」 髙橋誠著(日経ビジネス人文庫)

◆関連解説『アイデア発想法とは』

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