図面寸法基準と実際の作業:中国工場

 

 今回は、ある中国工場での出来事です。生産部(製造工程)で軟質樹脂成形品に穴をあける穴抜き加工の工程がありました。穴径は図面で指定されていたのですが、実際にあけていた穴径は図面寸法と違うものでした。

 違う寸法とは、図面寸法を狙って加工したもののバラツキ等で図面規格(公差)から外れたということではありません。最初から図面指示と違う穴径で加工していたのです。

 図面の穴径は3mmでしたが、実際に加工していた穴径は5mmという状況でした。しかも、ここ最近で起きたことではなく、2年以上この状態で生産していたのです。実は顧客クレームの原因を調べていく中で、この事実がわかりました。

 なぜこんなことが起きたのでしょうか。なぜ今まで誰も気づくことなく生産が行われていたのでしょうか。

 穴抜きは簡単な抜型(治具)を使ってやっていたのですが、その抜型を作ったのは製造技術課でした。製造技術課が3mmではなく5mmの抜型を作ったのです。しかし、どうして図面指示と違う穴径にしたのかはまだわかっていません。

 例え製造技術課が図面と違う寸法で抜型を作っても、生産部(生産現場)が生産前に穴径寸法を確認し図面通りであること、公差内であることを確認してから生産を開始するのが通常の流れでしょう。生産部だけではなく品管部の確認でOKとならないと生産開始出来ないとしている工場も多くあります。

 この中国工場はそうした生産前の確認が一切行われずに生産を開始していたのです。生産部や品管部が確認するという仕組がなかった訳です。この工場の生産部は、製造技術課が製作した抜型(治具)をただ渡されて生産していただけだったということです。

 また、生産開始後もこの穴径寸法を検査することはありませんでした。それは作業指導書の検査項目に入っていなかったからなので...

すが、作業指導書を作成するのは抜型を作った製造技術課の仕事だったのです。

 この中国工場は、使えるものは使うという方針が工場トップから出されていました。特に成形品で多いのですが、公差から外れていても組立可能であれば使う。この穴径も図面と違う寸法でも使えたので、何年も続いていたということです。この中国工場の場合、基準は図面ではなく、組み立てることができるか、使えるかどうかだったのです。

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