スリランカ 驚きの5S活動

 紅茶の産地として知られるスリランカはインド洋に浮かぶ島国で、北海道より一回り小さいこの島には2000万人が暮らしています。ひょんなことから、5Sコンテストの審査員長として、20企業で実施されている5S活動を審査することになりました。

 5Sとはご存知のように、「整理・整頓・清掃・清潔・躾」の頭文字のSをとったもので、企業の中に潜むムダを排除し、ムダのない状態を従業員全員で維持するという基本的な取り組みです。日本が発祥であり、多くの企業で実践されています。私はこれまで各国で5S活動に取り組む企業や公的機関を見てきましたが、この国のレベルの高さには驚かされました。

 訪問した20社のオフィスはどこも整然としていました。ファイルや鍵などの共有品は見やすく配置され、水道の蛇口にはひねる方向を明示して水を出しすぎないための工夫が凝らされています。各自の引出しの中の備品も置き場所が決められており、モノを探す手間はかかりません。製造現場にゴミや不要な道具は皆無で、役割分担や加工進捗状況が掲示板で「見える化」されているのです。

 彼らの5S活動はそれで終わりません。5Sによって得られたベネフィットを会社として定量的に示しているのです。ある会社では、書類を探す時間を削減して顧客からの問い合わせへの回答時間を短縮し、顧客満足度が高まったことを誇らしげに従業員が語ってくれました。別の会社では、一人当たりの製造コストが着実に減少していました。その他、地域の病院や学校に出向いて5S活動を支援している企業もあるほどです。

 このコンテストは、日本で30年前に研修を...

受けた現地の方々が、自らの成功体験を自国の経済発展に繋げたいと願って設立したNPOが毎年開催し、今年で19回目を数えています。5Sを始めても途中でトーンダウンしてしまうケースも多々ある中、ある企業の若手社員のコメントが印象的でした。「5Sは歯磨きと同じで、私の生活の一部なんですよ。」この国のモノづくり革新は確実に進んでいるとその時確信しました。

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