バーク(樹皮)の乾燥と燃焼について

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 今回は、バイオマスエネルギーとも言える水を含んだバーク(樹皮)を乾燥させて燃やし、発生する熱を利用することを考えましょう。敷地に山積みしたバークの含水率を低下させる手段としてバーク自身の発酵熱で対応することを解説します。
 

1. 山積みバークの発酵条件(含水率、高さ、バーク形状等)

  • 発酵させるための最適含水率に関する実績報告は35~55%から60~70%まで幅広いです。最適含水率は発条件によって変動します。持続的に発酵させるには、原料の窒素含量と炭素含量の割合、大気中に逃げる熱の割合、好気性発酵菌への短時間当たりの酸素の供給量、水分量、PH、発酵菌の選択がポイントになります。さらに、持続温度をいくらにしたいのかで最適水分量が変わります。因みにバークに混合する鶏・牛ふんは窒素源、発酵促進剤の米ぬかは主として窒素源で、石灰窒素も窒素源となります。窒素の割合が多いと発酵が急激に進んで温度が高くなり、発酵が長時間続かなくなります。反対に炭素源が多めだと発酵が緩やかに進み、温度上昇は少なめですが、発酵が長期間持続します。水分量が多いと酸素を供給しにくくなります。嫌気的な環境でPHが5~6に下がり、酸性になると好気性発酵が止まります。
  • バークを高さは1.5~2m、160m3積み上げて発酵させることができます。
  • バークの形状はφ3~5mm以下の粗砕物です。
 

2. 発酵温度

 標準的な発酵温度は、高度好熱菌の場合60~80℃、中等度好熱菌の場合30~50℃です。
 

3. 発酵時のバークからの発生熱量

 堆肥の熟成過程は、次の通りです。糖の分解→ヘミセルロースの分解→セルロースの分解→リグニンの分解。バークを発酵させるとき、主原料のバークは全量の80%以上、20%以下は鶏ふんや牛ふん、時には発酵促進剤として米ぬかを混合します。最初、バークや米ぬかに含まれる糖、アミノ酸、タンパク質などの低分子化合物が高温・好気性の糸状菌や土壌細菌によって分解されます。これら微生物の呼吸によって発生する熱によって堆積物の温度は60~80℃近くになります。
 
 次いで、増殖した高温・好気性の放線菌や土壌細菌が有する酵素(キシラナーゼ)で細胞壁を構成するヘミセルロースを加水分解(糖化)すると細胞の中からセルロースが現れます。好気性の放線菌や土壌細菌が酸素不足の環境を作るので、嫌気性のセルロース分解菌がセルロースを酵素(セミラーゼ)で加水分解(糖化)、低分子の有機物が合成されます。最後に、放線菌の食べるエサであるセルロースが無くなると温度がゆっくり下がり、最も分解しにくいリグニンの分解が始まります。最終的には二酸化炭素と水に変換されます。この分解には白色腐朽菌や土壌細菌が関与します。これらの分解プロセスが繰り返され、長期間温度が一定に保たれます。ここで、樹皮の主要成分は多くの分岐構造を持つヘミセルロース、多糖類のセルロース、3次元網目構造を持つ高分子化合物のリグニンです。樹皮の細胞はセルロースの周りをヘミセルロースとリグニンの殻が覆いかぶさっているような構造になっています。リグニンは木材を支持する役割を担っています。
 
 水分の多くは、微生物のもつ酵素によってヘミセルロース、セルロース、リグニンを糖分に分解する際に消費されます。
 

4. 発酵時のバーク自体の発熱量損失(発酵する際の炭素、水素の反応式等発酵時の反応式もありますと助かります。)

 発酵熱の元になっている糸状菌、放線菌、細菌など微生物は呼吸するときブドウ糖を酸化させてアデノシン三リン酸(ATP)というエネルギーを生じています。次式はブドウ糖1mol(180.16g)から38molのATPが作られることを示しています。
 
      C6H12O6+6O2+6H2O→6CO2+12H2O+38ATP
 
 38molのATPは277.4kcalに相当します。セルロースが糖に加水分解された後、アルコール発酵ないし乳酸発酵するとそれぞれブドウ糖1mol(180.16g)から2molのアデノシン三リン酸(ATP)が作られます。これは14.6 kcalに相当します。因みに、セルロースは多糖類で、その構造式は(C6H12O6)n、質量はブドウ糖のn倍です。実際に使用するバークに含まれる糖の量が実測できれば全発酵熱が算定できます。
 
 また、バークの主成分の一つである多糖類のセルロースが糖に分解された後、有機物を合成するときに発生するエネルギーもセルロースの量が分かれば算定できるので、バーク固有の発酵エネルギーは推定できることになります。従って、変動する気象条件に依存する大気中に放出される熱量の推定、米ぬかの発酵促進効果、炭素源と窒素源の量、糖を分解する好気性の糸状菌や土壌細菌、嫌気性のセルロース分解菌の活性が評価できれば、バークの単位重量、単位時間当たりの発熱損失の変動が算定できそうです。
 

5.発酵の際に期待できる含水率低下について

 バークの発酵によって最大80~90℃になることが知られています。水は、沸点の100℃にならなくても蒸発するので、発酵熱でバークの含水率を低下させることは可能です。発酵熱をハウス栽培...
 
 今回は、バイオマスエネルギーとも言える水を含んだバーク(樹皮)を乾燥させて燃やし、発生する熱を利用することを考えましょう。敷地に山積みしたバークの含水率を低下させる手段としてバーク自身の発酵熱で対応することを解説します。
 

1. 山積みバークの発酵条件(含水率、高さ、バーク形状等)

  • 発酵させるための最適含水率に関する実績報告は35~55%から60~70%まで幅広いです。最適含水率は発条件によって変動します。持続的に発酵させるには、原料の窒素含量と炭素含量の割合、大気中に逃げる熱の割合、好気性発酵菌への短時間当たりの酸素の供給量、水分量、PH、発酵菌の選択がポイントになります。さらに、持続温度をいくらにしたいのかで最適水分量が変わります。因みにバークに混合する鶏・牛ふんは窒素源、発酵促進剤の米ぬかは主として窒素源で、石灰窒素も窒素源となります。窒素の割合が多いと発酵が急激に進んで温度が高くなり、発酵が長時間続かなくなります。反対に炭素源が多めだと発酵が緩やかに進み、温度上昇は少なめですが、発酵が長期間持続します。水分量が多いと酸素を供給しにくくなります。嫌気的な環境でPHが5~6に下がり、酸性になると好気性発酵が止まります。
  • バークを高さは1.5~2m、160m3積み上げて発酵させることができます。
  • バークの形状はφ3~5mm以下の粗砕物です。
 

2. 発酵温度

 標準的な発酵温度は、高度好熱菌の場合60~80℃、中等度好熱菌の場合30~50℃です。
 

3. 発酵時のバークからの発生熱量

 堆肥の熟成過程は、次の通りです。糖の分解→ヘミセルロースの分解→セルロースの分解→リグニンの分解。バークを発酵させるとき、主原料のバークは全量の80%以上、20%以下は鶏ふんや牛ふん、時には発酵促進剤として米ぬかを混合します。最初、バークや米ぬかに含まれる糖、アミノ酸、タンパク質などの低分子化合物が高温・好気性の糸状菌や土壌細菌によって分解されます。これら微生物の呼吸によって発生する熱によって堆積物の温度は60~80℃近くになります。
 
 次いで、増殖した高温・好気性の放線菌や土壌細菌が有する酵素(キシラナーゼ)で細胞壁を構成するヘミセルロースを加水分解(糖化)すると細胞の中からセルロースが現れます。好気性の放線菌や土壌細菌が酸素不足の環境を作るので、嫌気性のセルロース分解菌がセルロースを酵素(セミラーゼ)で加水分解(糖化)、低分子の有機物が合成されます。最後に、放線菌の食べるエサであるセルロースが無くなると温度がゆっくり下がり、最も分解しにくいリグニンの分解が始まります。最終的には二酸化炭素と水に変換されます。この分解には白色腐朽菌や土壌細菌が関与します。これらの分解プロセスが繰り返され、長期間温度が一定に保たれます。ここで、樹皮の主要成分は多くの分岐構造を持つヘミセルロース、多糖類のセルロース、3次元網目構造を持つ高分子化合物のリグニンです。樹皮の細胞はセルロースの周りをヘミセルロースとリグニンの殻が覆いかぶさっているような構造になっています。リグニンは木材を支持する役割を担っています。
 
 水分の多くは、微生物のもつ酵素によってヘミセルロース、セルロース、リグニンを糖分に分解する際に消費されます。
 

4. 発酵時のバーク自体の発熱量損失(発酵する際の炭素、水素の反応式等発酵時の反応式もありますと助かります。)

 発酵熱の元になっている糸状菌、放線菌、細菌など微生物は呼吸するときブドウ糖を酸化させてアデノシン三リン酸(ATP)というエネルギーを生じています。次式はブドウ糖1mol(180.16g)から38molのATPが作られることを示しています。
 
      C6H12O6+6O2+6H2O→6CO2+12H2O+38ATP
 
 38molのATPは277.4kcalに相当します。セルロースが糖に加水分解された後、アルコール発酵ないし乳酸発酵するとそれぞれブドウ糖1mol(180.16g)から2molのアデノシン三リン酸(ATP)が作られます。これは14.6 kcalに相当します。因みに、セルロースは多糖類で、その構造式は(C6H12O6)n、質量はブドウ糖のn倍です。実際に使用するバークに含まれる糖の量が実測できれば全発酵熱が算定できます。
 
 また、バークの主成分の一つである多糖類のセルロースが糖に分解された後、有機物を合成するときに発生するエネルギーもセルロースの量が分かれば算定できるので、バーク固有の発酵エネルギーは推定できることになります。従って、変動する気象条件に依存する大気中に放出される熱量の推定、米ぬかの発酵促進効果、炭素源と窒素源の量、糖を分解する好気性の糸状菌や土壌細菌、嫌気性のセルロース分解菌の活性が評価できれば、バークの単位重量、単位時間当たりの発熱損失の変動が算定できそうです。
 

5.発酵の際に期待できる含水率低下について

 バークの発酵によって最大80~90℃になることが知られています。水は、沸点の100℃にならなくても蒸発するので、発酵熱でバークの含水率を低下させることは可能です。発酵熱をハウス栽培、養殖、融雪など様々な分野に活用できます。これが最近注目されつつある発酵熱農法です。
 
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 最後に、ロケットストーブの排熱の活用について解説します。
 
 ロケットストーブはエントツ効果と断熱効果により燃料の廃材、間伐材、木質ペレット、生木などのバイオマスを完全燃させるため、炉内温度が800℃以上になって煙が発生しないという特長があります。この高い熱効率を持つロケットストーブはペール缶の廃材を2個重ねて直筒付きエントツを真ん中に固定し、土壌改良材の市販パーライトでペール缶とエントツの隙間を断熱するだけ、約5000円で自作できます。排熱を使って含水したバークを乾燥させれば、新たな燃料になるので、廃材や間伐材をさほど追加する必要がありません。最終的にはバークのみで乾燥バーク燃料・燃焼サイクルができます。システムを半自動化すれば、労力少なくして全ての含水バークを燃焼させることができます。バークを入れる燃料投入口は火炎吹き出すエントツとは別口になっています。排熱エントツを高くするなど構造は様々に変更できます。最も簡単な方法は含水バークと廃材と含水バークを一緒に燃やすという方法です。下部に、ロケットストーブの写真を掲載しますので、参考にしてください。
 
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この記事の著者

川本 昂

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