中国企業・顧客への確認連絡があだ 中国企業の壁(その2)

1. 中国企業・顧客への確認連絡があだ

 今回は、ある中国企業の気を利かせたつもりの顧客対応で起きた問題を紹介します。あと少し気配りがあれば問題とはならず、顧客の信頼感を増す対応になっていたはずでした。
 
 中国工場から出荷手配をするのにあたり、物流部門からカスタマーサービス部門に対して混載でOKかどうかを顧客に確認するよう依頼がありました。フルコンになるだけの物量ではなかったので、通常であればコスト面から混載にします。初めての顧客だったので、念のため確認を取ろうと思ったようでした。
 
 カスタマーサービス部門が顧客に確認のメールを入れたところ、顧客からは混載不可との回答がありました。ところが物流部門は、既に混載で手配をしておりもはや変更できない状況でした。
 
 顧客に問合せたカスタマーサービスは、いったいどのように顧客に話をすればよいのか頭を抱えてしまいました。こんなことなら顧客には何も聞かず最初から混載で出荷した方がよかったと言っていました。これだけを聞くと、まったくその通り、何でわざわざ顧客に問合せなどしたのか疑問です。
 
 実は今回の件、この顧客から3つの案件を受注していました。製品の出荷に際して、3つの案件の内2つは混載OKと顧客から連絡を受けていました。残りの1つには混載可とも不可とも連絡がなかったので、どうなのか確認を入れたようです。
 
 また、物流部門がカスタマーサービスを通して顧客に確認の依頼をしたのが、出荷の3日前でした。その日のうちに確認が取れれば混載が可でも不可でもコンテナ手配の対応はできるので、物流部門としてはそういうつもりでの問合せでした。
 
 ところが、顧客から回答があったのは出荷前日でした。既に混載で手配しており、その時点でコンテナを変更することはできず「既に混載で出荷」という回答になった訳です。気を利かせたつもりが、逆に顧客とカスタマーサービスの不信感を煽る結果になってしまったのです。問合せたときに、「本日中に回答をもらえれば、混載でもフルコンでも対応可能です」と期限を連絡するという、あと少しの気配りがあればよかったのです。
 
 この問題の後、物流部門では対応可能な期限をカスタマーサービスに必ず連絡するようにしました。さらに突っ込んで言うと、3つの案件の内、2つは混載可とわざわざ連絡があったのですから、残りの1つの案件は混載不可なのではないかと考えることができるたらさらによい対応になったのではないでしょうか。
 
 
 

2. 中国食品工場・工場監査で組織的偽装を見抜けるか

 中国食品工場で起きた問題は、次の2つです。
 
(1) 期限が過ぎた食材(材料)を恒常的に使用していたこと
(2) 加工中に床などに落ちた食材を元に戻して使用していたこと
 
 事象としてはこの2つですが、一番の問題は、これらを会社ぐるみで行っていたことです。食材の賞味期限の問題では、マックやファミマなど顧客が工場監査に来たときには期限の切れた食材は使わないで隠していたのです。
 
 インタビューされた従業員は「これが顧客にばれたら取引は停止になる」と答えています。従業員もだめだということをわかってやっていたので、顧客が来たときにばれないように偽装をしていた訳です。では、このように従業員も含めて会社ぐるみでやっている組織的な偽装を1日や2日の工場監査で見抜くことは出来るでしょうか。結論から言うと難しいと言えます。
 
 難しい理由として監査する顧客が、食品工場側が会社ぐるみでこうした偽装をやっているとは考えていないからです。賞味期限は守るという前提で、管理はきちんとしているのか、管理に漏れはないかという視点で監査をするので、対象の食材を隠されたら見つけることは困難です。
 
 仮に1...
つ2つ賞味期限切れの食材を偶然発見したとしても、「管理が不十分でした」「廃棄するものを区分していませんでした」などと言い訳をされ、それに対する是正処置を求めて終わりです。監査する側も指摘する項目を見つけたことで、面目を保って社に戻ることになります。では、どうすれば見つけることができるのでしょうか?
 
 先ずは、中国工場ではどんなことも起こり得るという前提で工場監査に臨むことです。1日2日の監査で無理なら、長い期間滞在することです。
 
 例えば、巡回監査員として複数の工場に各1ヶ月程度滞在させるのです。そして1番よいのは、生産委託先工場に自社社員を駐在させることです。食品を扱うなら、しかもメインの取引先なら、真剣に検討すべきではないでしょうか。
 
 監査員が長期滞在すれば、その期間中偽装をずっと隠しておくことは難しく、何らかボロが出て、そこから闇の部分を見つけることが出来るはずです。
 

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