「ファクトリーオートメーション」とは、キーワードからわかりやすく解説

 

1.  「ファクトリーオートメーション」とは

ファクトリーオートメーションの代表的な例は、IIoT(Industrial Internet of Things)で、製造業をはじめとしてさまざまな産業分野におけるIoTの活用を指します。

 

IIOTは、スマートファクトリーとも表現されて、設備機械にセンサーを設置し遠隔で稼働状況を確認するといった活用をしています。一方で、メリットのある利益確保のビジネスプランを描くことが難しい実情もあるようです。確かにIIoTによって今後製造業は変わっていくでしょう。そこでの疑問、不安は、これまで現場を改善してきたリーンやシックスシグマといった手法、そしてそれを担当してきた我々エンジニアは、IIoTに今後いったいどのように対応すべきなのでしょうか。

 

IIoTの次の段階では、IIoT 機器と機械学習を使って機械の故障やプロセスの異常を検出するようになります。しかし機械やプロセスがどのような状態になれば故障や異常と言えるのか、その状態を検出するためにはどのようなデータが必要で、どのように分析をしなければならないのか、といった専門的な知識と経験が必要です。

 

2.  「ファクトリーオートメーション」導入の 4 段階

 「ファクトリーオートメーション」の成功事例を読むとたいていの場合、技術力や資源が豊富にある大企業が IIoT + AI を用いて自動制御を実現した、というようなことが書かれてあります。しかしそれは大企業だからできたのであって、技術力も資源も十分ではない大多数の一般的な企業はいったいどうすればよいのでしょうか。
 
 「ファクトリーオートメーション」は一足飛びに IIoT + AI を最大限利用した自動制御のスマートファクトリになるのではなく、現実的には(特に大企業ではない一般的な企業の場合は) ROI(Return on Investment)を検討し、時間をかけながら、次の 4 段階を経て、順次スマートファクトリを構築していくのではないか、と言われています。
 
第 1 段階:可視(現場を見える化する)
第 2 段階:診断(故障や異常の検出や、センサーの診断などを行う)
第 3 段階:予測(故障や異常を予測する)
第 4 段階:対策(故障や異常を避けるための対策を示唆する)

 

3. 各段階におけるエンジニアの役割と実践的アプローチ

前述した4つの段階を、一般的な企業が着実に歩むためには、単なるシステムの導入ではなく、現場を知り尽くしたエンジニアの「知見」をデジタルへ翻訳する作業が不可欠です。

第1段階「可視化」:データに意味を持たせる

まず「可視化」においては、単にセンサー数値をグラフにするだけでは不十分です。重要なのは、どの箇所のどのデータが生産性や品質に直結しているかを見極める「目利き」です。長年現場を支えてきたエンジニアが、経験則として感じている「機械の唸り」や「微妙な振動」を数値化することから始まります。この段階でのROIは、これまで目に見えなかった「小さな停止(チョコ停)」の要因が特定されることで、即座に稼働率向上として現れます。

 

第2段階「診断」:リーン・シックスシグマのデジタル化

「診断」の段階では、従来の改善手法であるリーンやシックスシグマが真価を発揮します。異常を検出するためには、「正常とは何か」という定義が明確でなければなりません。統計的な管理手法を用いて、ばらつきの許容範囲を設定し、それをデジタル上の閾値へと落とし込みます。ここでは、IIoTはエンジニアを代替するものではなく、エンジニアの「監視」というルーチンワークを肩代わりし、より高度な原因分析に集中させるためのツールとなります。

 

第3・第4段階「予測と対策」:熟練工の判断をモデル化する

「予測」と「対策」は、最もAIの活用が期待される領域ですが、同時に最も現場の経験が求められる領域です。例えば、「この振動が出た3日後にベアリングが焼き付く」といった予兆を捉えるには、過去の故障データとメカニズムの深い理解が欠かせません。AIが示す示唆(サジェスチョン)に対し、それが物理的に妥当であるかを検証し、最終的な対策を決定するのはエンジニアの仕事です。この「人とデジタルの協調」こそが、リソースの限られた企業が取るべき現実的な戦略となります。

 

4. 投資対効果(ROI)を最大化する「スモールスタート」の重要性

大企業のような大規模な投資が難しい場合、重要なのは「工場の全てを一度に自動化しない」という決断です。

  • ボトルネック工程への集中投資:工場全体の中で、最も生産の足かせとなっている工程(ボトルネック)を選定し、そこだけに絞って第1段階から着手します。
  • 汎用デバイスの活用:高価な専用システムをいきなり導入するのではなく、まずは既存の設備に後付け可能な安価なセンサーや、汎用的なタブレット端末を活用することで、初期投資を抑えつつ成功体験を積み上げます。

 

小さな成功(クイックウィン)を積み重ねることで、得られた利益を次のステップの投資に回すというサイクルを回せば、資源が限られていても着実にスマートファクトリー化を進めることが可能です。

 

5. 次世代エンジニアに求められる姿

「ファクトリーオートメーション」の本質は、人を機械で置き換えることではなく、人の能力をテクノロジーで拡張することにあります。IIoTやAIの導入によって、エンジニアの仕事がなくなるわけではありません。むしろ、これまで現場の「勘」や「コツ」としてブラックボックス化されていた技術を言語化・数値化し、より再現性の高いものへと進化させる役割が求められています。

 

これからのエンジニアは、リーンやシックスシグマといった古典的な改善手法を土台にしつつ、デジタルツールを自在に操る「多能工」としての視点を持つべきです。技術の進化を恐れるのではなく、それを「現場をより良くするための新しい道具」として使いこなす姿勢こそが、これからの製造業を生き抜く鍵となるでしょう。

◆関連解説記事『IIoTとは、IoTとの違い』


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