クリーンルームをきちんと清掃しよう

 前回のお金をかけないクリーン化活動をしように続いて今回もクリーン化の解説です。皆さんのところのクリーンルームでは、毎日きちんと清掃していますでしょうか。クリーンルームは、その名前から、“綺麗な部屋だ”との錯覚や先入観はありませんか。そして、清掃はしなくても良いとか、あまりきちんとされていないと言うことになっていないでしょうか。 

 例えば、他社から製造を委託された、あるいは注文が入った製品は、その会社に納入します。その製品がゴミ起因による品質問題、あるいは歩留まりが低下したと言う場合、その取引先から製造現場のクリーンルーム化を要求がされる場合があると思います。クリーンルームにすれば、品質は向上すると言う先入観や神話から、それを鵜呑みにしてしまい、安易にクリーンルーム化してしまうと言うことがしばしば起きます。

 ところが、クリーンルームにしたけれど、歩留まり、品質は必ずしも良くなりません。しかも、クリーンルームにしたことによりコストアップになり、しかしその分製品に転嫁、上乗せすることは出来ません。これでは採算が合わないなどと言うぼやきを時々聞きます。クリーンルーム化を要求した側も、その管理方法の指導はあまりしてくれないのが現状です。

 クリーンルームの管理の仕方によって、品質、歩留まりは大きく変わります。何もしなければ、クリーンルームと言う名のついた、ただの箱です。逆にきちんと管理することで、歩留まりや品質が向上し、赤字が黒字に転換しただけでなく、かなりの利益アップに繋がったところも有ります。 

 取引先がクリーンルーム化を要求しても、クリーン化技術のノウハウを公開・指導したくない理由には、次のようなものがあります。

①受け手側の企業は、他社からも注文を受けているのが普通で、それら他社は何もしないでも納入される製品の歩留まり、品質向上の恩恵を受けること。極端な場合は、折角指導しても取引割合が他社に比べ極端に少ない場合もある。

②クリーンルーム化を要求した会社が、自社のノウハウ流出を避けたいと言う意識。つまり、クリーン化は企業の競争力である。又経営に直結する活動であることを認識している。
 こういう背景からも、クリーン化技術は閉鎖的な技術であり、中々成長しない分野でもあります。

③要求しているのが、その会社でも営業や管理部門などであり、クリーン化のノウハウを指導出来ない。
 そう言う部門こそ、先入観や神話を背景にしての要求かも知れません。

 クリーンルームを綺麗にするのも汚すのも人です。その“人”が如何にクリーンルームを綺麗にするかにより、品質は変わってきます。良く、日本人は品質意識が高いと言われます。クリーンルーム化することで歩留まりや品質が向上する言う神頼みではなく、その“人”を上手く使って、品質を高めたいものです。言われるままにクリーンルーム化してしまっては、品質や歩留まり向上が見込めないだけでなく、クリーンルームの運転費用、防塵衣(クリーンスーツ)の購入、クリーニング費用、管理のための費用(清浄度測定機=パーティクルカウンターの購入など)及びそれらにかかる費用が永遠に付きまといます。

 クリーンルームは、金食い虫とも言われた時期がありました。とりわけクリーンルームの運転には莫大な費用がかかります。一度運転したらお金がかかるからと言っても、止めるわけには行きません。それよりも、クリーンルームでなくても、今まで製品がそこそこ出来ていたところでは、現状で如何に品質を上げられるか、またクリーンルームを保有しているところでは、投資に見合うようクリーンルームを管理して、どうすれば更に良い品質の製品にするかを考えていただきたいものです。そしてお金をかけないで出来るクリーン化に取り組んで欲しいです。その為に出来ることは沢山あると思います。 

 例え歩留まりや品質が向上しても、利益が出ないのではその会社の存続はありません。費用対効果はきちんと把握しておきましょう。 

 話は戻りますが、クリーンルームは綺麗な部屋ではなく、皆で清掃して初めて綺麗な状態が維持管理出来る部屋のこ...

とです。昔から、クリーンルームは、クリーニングルームと言われて来ました。先入観や神話に惑わされず、注文先からクリーンルーム化が要求されても、直ぐにクリーンルーム化せず良く考えましょう。

 昔の話ですが、ある大手の半導体工場では、歩留まりを上げるために色々な事を実行しました。しかし、目標歩留まりには中々届きません。指導者の指示のもとで、目標達成は諦め、皆で清掃したところ、それまで無理だと思った目標を一気に超えたと言う例が有ります。 

 先ず、清掃をきちんとやって、それを継続させましょう。一回くらい、一日くらい手を抜いてもまあ良いかが積み重なると段々やらなくなり、元に戻るのは目に見えています。如何に継続させるかが重要です。どんなに忙しくても手を抜かずやり続けることで、継続は力なりが実感できると思います。

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