お金をかけないクリーン化活動をしよう

 前回は、ゴミを可視化してクリーン化を解説しました。今回は、お金をかけないクリーン化活動をしようです。クリーン化はお金がかかるとか、お金をかけるものだと言う先入観があります。私がクリーン化を指導し始めた頃も、あちこちで良く言われたものです。私が呼ばれて行ったある会社では、「これまでは、もっとお金をかけて綺麗な工場にしなさいとか、新しいものに入れ替えなさいと言う指導を受けて来ました。指導通りにやるとお金がかかる割に成果に結び付かないために挫折していました」と言う話を聞きました。企業の規模によっては経営までも圧迫するので、とても取り組む気にはなれないと言うのです。

 工場で何かお金を使うとすれば、当然費用対効果を見ます。上記のような活動をすれば、行き詰るのは当然のことです。どうもそう言う指導の影響で、いまだに“クリーン化は金がかかる活動”と言う先入観をお持ちの方もいらっしゃるようです。これでは本来の目的とは逆ですね。 

 そんなことから、“私はクリーン化が専門です”と言うと、最初から毛嫌いされる場合もあります。こういうところでは、容易に壁を突破できず、中々入って行くことが出来ません。 

 クリーン化活動の本来の目的は、ものづくり企業の現場でゴミ、異物を如何に減らし、品質や歩留まりを向上させるかと言うことです。企業の利益確保にどう貢献するか、クリーン化はその手段、ツールです。それにもかかわらず湯水のごとくお金を使っていては、到底目的は達成できません。

 私は、出来るだけお金をかけないでクリーン化を進めるような指導をして来ました。どうも、お金をかける指導をした方は、現場の実態に合わせた指導ではなく、理論、理屈の部分が多かったようです。 例えばいきなりゴミの分析、先ずゴミが何であるかを調べることを提案します。そして分析装置を購入した方が良いとか、分析の会社に依頼して把握することが先決と言うことになってしまい、どちらにしても、高額な費用が必要になります。

 ところが、現場に入って良く観察して見ると、分析以前の問題が沢山あります。それに自分たちも気がついていないのです。また気がつくような指導をされていなかったのです。

 本当に分析が必要なケースは、清浄度の要求レベルが桁違いに高いとか、目に見えないようなゴミが品質に影響するような場合です。こういうところは、限られて来ます。高価な分析装置を購入しても、ゴミが多いと分析に時間がかかったり、分析が出来ても、沢山のデータが机上に並べられ、どれがどのように品質に影響しているのか分からないために、手が打てないまま放置されると言う問題が起きてしまいます。こうなると、分析はエンジニアの自己満足で終わってしまいます。

 また、こういう高いレベルを要求されるところでも、目に見える大きなゴミがあったりする場合があります。理論攻めに合うと、頷いてしまうのですが、現場に入って見ると、理論で片づける前に出来ることが沢山あります。

 例えば、室内にパッケージエアコンがあるとすると、気流は横に流れます。その上流に上司の机があると、そこには多くの人と資料が集まるので、そこで発生したゴミ、埃などは製品加工エリアに流れ、品質に影響すると言う具合です。 

 あるいは、作業で行ったり来たりの作業が多いと、ゴミの発生が多くなります。又これにより汚れた製品の洗浄が必要になります、つまり製品の手直し、やり直しが発生し、費用や製品停滞など時間のロスが発生し良いことはありません。こんな風に効率生産、レイアウト、品質、安全、ゴミ、異物の知識など多面的に現場を良く観察すると色々な問題に気付きます。

 人財育成をきちんとし、そう言う観点で日々現場を見る人が増えれば意識も変わり、お金をかけなくてもかなりの成果が得られます。人の意識が変わらなければ、一方でお金をかけても、他方で汚している、ゴミを発生させている場合がありますから、成果が出にくいのです。

 昔から、“クリーンルームでの最大の発生源、汚染...

源は人である”と言われて来ました。自分自身が汚すのですから、そこに着眼したり、意識が変わらなければ、いくら良い資材等に変更しても、効果は期待できないのです。

 社員の知恵と工夫で出来ることが現場には沢山あります。その持っている知恵や工夫を結集させることで、成果が出るゴミ退治が出来、歩留まりや品質向上に貢献できるのです。そしてこれらには、お金が殆どかかりません。これは、日本の得意分野です。

 やれることを全てやって、どうしても分析が必要になったら、それから分析装置の購入とか、外部業者に分析を依頼すれば良いのです。恐らくそこまでやる前に沢山の課題、テーマが出て来て、それらを解決して行く過程で歩留まり、品質は向上し、安定して行くことでしょう。

 知恵と工夫で、お金をかけないクリーン化活動を進めましょう。

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