スマート・リトル・ピープル(SLP:頭の中で小人を動かせ)

1.スマート・リトル・ピープルとは

 先日読書中に、雑誌のコラムで思いがけない名言を発見しました。一橋大名誉教授の伊丹敬之氏が、論理的思考の要諦は「頭の中で小人を動かす」ことだと言っていたことです。つまり、具体的な人を思い浮かべ、その人がどのように行動するかをシミュレーションしてみること。具体的にイメージしていけば、必ず論理的に考えざるを得ないということだそうです。 実は、これが、他の手法にも共通している原理原則の一つだったのです。

 例えば、TRIZの思考ツールの中に、スマート・リトル・ピープル(小さな賢人たちのモデリング)というツールがあります。これは、論理的思考法(ロジカルシンキング)だけではありませんが、ストーリーで考える視点や、行動をシミュレーションする点などが似ていると思います。まず、理想解を考え、小さな賢人たちや魔法の粒子の目線でモノを考えたり、小さな賢人たちや魔法の粒子に託したりして解決策を探ろうという考え方です。小さな賢人たちや魔法の粒子の行動を解釈したり、その行動を実現する小さな賢人たちや魔法の粒子の性質を考えたりする過程で、課題の解決策がスラスラと湧いてくるのです。必要に応じて分子、原子レベルまで小さくしていくという考え方なのです。

 2.スマート・リトル・ピープルの具体例

 例えば、図1のようなスタッドレスタイヤの問題があります。タイヤには、従来スタッドと呼ばれる金属のピンを打ち込んで、路面が凍る時期にタイヤを履き替えていました。この問題に対して理想解を考え、解決策を小さな賢人たちや魔法の粒子に託してみます。つまり、タイヤの中(内部、側壁、上部、下部、その他)に小さな賢人たちがいて、氷や雪に対して、個々の手や足を使ったり、手をつないだりして、すべりを激減させてくれると考えるのです。
 そう考えていくと、例えば、ミクロレベルの摩擦材料を考えればよいことが浮かんだりします。それが転じて、ミクロンレベルの無数のグラスファイバー新素材を開発し、タイヤの中に埋め込めばよいという考えになるわけです。


図1
スマート・リトル・ピープルの適用例(スタッドレスタイヤ)

 3.スマート・リトル・ピープルと思考プロセス

 伊丹敬之氏が言っている「頭の中で小人を動かせ」やTRIZのスマート・リトル・ピープルは、右脳と左脳の両者の刺激によるキャッチボールをしていると言ってもよいのではないかと思います。つまり、図2のような思考の基本プロセスが、課題解決に効果的だということです。論理的思考法(ロジカルシンキング)...

やTRIZをコラボレーションさせると強力なツールに成るだろうと確信したわけです。 

 

図2
思考の基本プロセス

 まず左脳を使って、目的展開、なぜなぜ分析等で課題・問題分析を行う、または、あるべき姿(理想解または仮説)を定義します。次に、右脳を使って、必要に応じて分子・原子レベルまで考え抜き、課題解決策を創出します。最後に、左脳を使って、解決策の行動をシミュレーションしながら検証してみるのです。

 これは、マーケティングにも応用できると思います。みなさんも、試してみてください。

◆関連解説『TRIZとは』

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