
現代の電子機器には、自らが不要な電磁波を放射しない「エミッション特性」と、周囲からの電磁妨害を受けても正常に動作する「イミュニティ特性」の両立(EMC)が求められます。今回は、製品設計において不可欠な主要EMC試験の目的と手法を解説します。放射・伝導エミッション試験から、各種イミュニティ試験、電源高調波試験に至るまで、各項目の物理的な試験配置や規格に基づいた評価手順をまとめました。
1. 放射エミッション試験
自製品(EUT)から外部の空気中に放射される電磁波を計測し、規格限度値を超えていないか評価する試験である。
図1に示すように、高さ0.8mの非導電性テーブル上に自製品を設置する。配置の中心点はターンテーブル中心に合わせ、製品背面はテーブル背面に近づける。
- 自製品が複数のユニットから構成される場合、ユニット間の距離を0.1mとしてユニット間を接続するケーブルはテーブル背後に垂れ下げる。
- 受信アンテナは自製品から規格で定められた距離(10m, 3mなど)に設置する。
- 製品を設置した後、プレスキャン測定を行う。広帯域アンテナおよびスペクトラムアナライザを使用して測定周波数帯域全体を観測する。
- ターンテーブルを0-360度回転、アンテナは高さ1-4mの範囲で移動させて最大値を検出し、エミッションが高い周波数をリストアップする。
- 測定は水平・垂直それぞれの偏波で行い、最大エミッションを生じる状態を決定して電界強度計で測定を行う。

図1 放射エミッション試験構成例
2. 伝導エミッション試験
伝導エミッションの測定では、自製品(EUT)である電子装置から電源線や通信線を介して外部に伝播する、エミッションの電圧を測定する。
- 測定は接地面上に自製品を配置して行う。
- 電源線に重畳されるエミッションを測定する場合は疑似電源回路網(AMN)を、通信線に重畳されるエミッションを測定する場合は非対称疑似回路網(AAN)を使用する。
- 2m×2m以上の大きさの金属面を水平基準接地面とした場合、基準接地面から高さ40cmの非導電性テーブル上に自製品(EUT)を設置する。
- 接地面以外の金属物は自製品(EUT)から80cm以上離す必要がある。
- 疑似電源回路網(AMN)は自製品(EUT)から80cmの距離となるように基準接地面上に設置する。
図2に、電源ライ...

現代の電子機器には、自らが不要な電磁波を放射しない「エミッション特性」と、周囲からの電磁妨害を受けても正常に動作する「イミュニティ特性」の両立(EMC)が求められます。今回は、製品設計において不可欠な主要EMC試験の目的と手法を解説します。放射・伝導エミッション試験から、各種イミュニティ試験、電源高調波試験に至るまで、各項目の物理的な試験配置や規格に基づいた評価手順をまとめました。
1. 放射エミッション試験
自製品(EUT)から外部の空気中に放射される電磁波を計測し、規格限度値を超えていないか評価する試験である。
図1に示すように、高さ0.8mの非導電性テーブル上に自製品を設置する。配置の中心点はターンテーブル中心に合わせ、製品背面はテーブル背面に近づける。
- 自製品が複数のユニットから構成される場合、ユニット間の距離を0.1mとしてユニット間を接続するケーブルはテーブル背後に垂れ下げる。
- 受信アンテナは自製品から規格で定められた距離(10m, 3mなど)に設置する。
- 製品を設置した後、プレスキャン測定を行う。広帯域アンテナおよびスペクトラムアナライザを使用して測定周波数帯域全体を観測する。
- ターンテーブルを0-360度回転、アンテナは高さ1-4mの範囲で移動させて最大値を検出し、エミッションが高い周波数をリストアップする。
- 測定は水平・垂直それぞれの偏波で行い、最大エミッションを生じる状態を決定して電界強度計で測定を行う。

図1 放射エミッション試験構成例
2. 伝導エミッション試験
伝導エミッションの測定では、自製品(EUT)である電子装置から電源線や通信線を介して外部に伝播する、エミッションの電圧を測定する。
- 測定は接地面上に自製品を配置して行う。
- 電源線に重畳されるエミッションを測定する場合は疑似電源回路網(AMN)を、通信線に重畳されるエミッションを測定する場合は非対称疑似回路網(AAN)を使用する。
- 2m×2m以上の大きさの金属面を水平基準接地面とした場合、基準接地面から高さ40cmの非導電性テーブル上に自製品(EUT)を設置する。
- 接地面以外の金属物は自製品(EUT)から80cm以上離す必要がある。
- 疑似電源回路網(AMN)は自製品(EUT)から80cmの距離となるように基準接地面上に設置する。
図2に、電源ラインと通信線を対象とした、伝導エミッション試験構成例を示す。

図2 伝導エミッション試験構成例
3. 電源高調波/フリッカ試験
高調波試験は機器の消費電流波形のひずみ成分を測定し、電源に重畳する高調波電流が限度値を超えないかどうかを評価する試験である。高調波電流は機器の誤動作や故障、電力系統の無効電力を増加させる原因となる。
電圧変動/フリッカ試験は、電源電圧の変動と照明のちらつき(フリッカ)に対する試験である。電気製品の消費電流の変化によって電源電圧が変動すると、照明のちらつきが発生し、フリッカは人に不快感を与えるストレスや頭痛などの健康被害の原因となる。
図3に示すように、電源高調波及びフリッカはIEC 61000-3-2、IEC 61000-3-3で、1相当りの入力電流が16A以下の機器に対して規定されている。

図3 電源高調波及びフリッカの規格評価
4. 放射イミュニティ試験
自製品(EUT)が、ラジオ/TV放送、アマチュア無線、携帯電話/スマートフォンなどの不要輻射に曝された場合の耐性を確認する試験である。
試験信号を高周波アンプにおいて増幅し、アンテナにより放射させることで、自製品(EUT)の誤動作の有無を確認する。また、製品全体に均一な電磁波を照射できるように、事前に検証する。一般的に電界均一面は、高さ0.8mの試験テーブル上方より1.5 m×1.5 mの範囲において検証する。製品や周辺装置は通常の使用を想定するように構成し、照射を行う面と電界均一面が一致するように配置する。
評価では図4に示すように、送信アンテナから製品及び周辺装置までの距離は3 mで、必要に応じて床反射を減らすための電波吸収体を設置する。
この試験では、奥行きに関する電界強度は検証しないので、製品の全ての側面に対して評価を行う。

図4 放射イミュニティ試験構成例
5. 伝導イミュニティ試験
電子機器等に接続された電源線や信号線などについて、放送波や妨害信号などを意図的に電磁界誘導された状態で耐性を確認する試験である。
伝導イミュニティ試験はケーブルに妨害波を印加する。また、補助機器の影響を排除するための結合/減結合回路(CDN:Coupling and Decoupling Network)がたくさん必要になる。
自製品はグランドプレーンから10cmの絶縁物の上に配置し、引き出される全てのケーブルは3cmの高さに配置する。印可する電源ラインの長さ及び信号ラインの印可ポイントは自製品から10~30cmの距離になるように設定する。このとき、試験されない製品や周辺機器の電源ラインも結合/減結合回路(CDN)を取付け、結合/減結合回路(CDN)の同軸ポートを終端する必要がある。
図5に電源入力ライン、相互接続(信号)ケーブル、DC入出力ケーブルに妨害波を印加して行うイミュニティ試験例を示す

図5 伝導イミュニティ試験構成例伝導イミュニティ試験構成例
6. その他のイミュニティ試験
(1)静電気(ESD:Electro Static Discharge)試験
静電気を帯電した人体が電子機器に触れた場合に生じる静電気放電に対する耐性を確認する試験である。
接触放電には自製品(EUT)の金属部分に直接印加する直接放電と周囲の導電体を介して印加する間接放電がある。気中放電は帯電した電極を、自製品(EUT)に接触するまで徐々に近づけて印加する。
(2)ファストトランジェント・バースト試験
電源線や信号線に加わる、繰り返しの早い過渡的妨害を受けた場合の耐性を確認する試験である。
AC及びDCや入出力ポート及び通信ポートに1分以上、5または100kHzの過渡的妨害電圧を繰返し印加する。妨害波の印加にはケーブルに直接注入する試験とクランプを通して注入する方法がある。
(3)雷サージ試験
誘導雷サージ試験は、直撃雷ではなく、誘導雷を模擬したノイズを供試装置の電源線や通信線に印加し、その耐性を評価する試験である。落雷時、雷雲と大地間の電荷の移動で瞬間的に急激な電磁界の変化が発生する。その電磁界が電線や通信線に作用すると、電磁誘導によって大きな電圧・電流が発生し、電子機器へ侵入し、場合によっては機器が故障することがある。対策としては、サージ保護デバイス (SPD: Surge Protection Device) を電源線や通信線へ取り付けるなどの方法がある。
(4)電力周波数磁界試験
電力周波数磁界試験は、動作状態の電気・電子機器の50Hzおよび60Hzの電源周波数の磁界に対する耐性を確認する試験である。誘導コイルにより試験磁界を発生させ、自製品(EUT)に磁界をさらす。試験の周波数は50Hz及び60Hz、誘導コイルの面はX、Y、Zの3方向で評価する。
(5)電圧ディップ・瞬断停電試験
50Hzまたは60Hzの交流回路(商用電源)から電力を供給される電子機器の試験である。系統や設備での短絡などの故障や同じ電力設備に接続された負荷の大きい装置の動作の急変などによって発生する、定格電圧からの突然の電圧低下や短時間の停電を評価する。
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