社会インフラとしてのLED照明、寒冷地・トンネルにおける適用と放射ノイズ問題の考察

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社会インフラとしてのLED照明、寒冷地・トンネルにおける適用と放射ノイズ問題の考察

【目次】

    1. LED照明の特徴

    LED照明は従来の白熱電球に比べて長寿命、低消費電力、応答性が速いなどの利点があるが、図1.1に示すように、LED照明は交流電流を直流に変換し昇圧化するためのコンバータ回路が必要になるので、部品点数がかなり増えている。最近の電灯販売コーナーでは、様々な種類の製品が並べられており、価格帯も数百円から1万円近くする物があるので、使用目的に応じて選択することができる。目標とする信頼性を確保するには、基板や配線を含む全ての部品がLED半導体に匹敵する信頼性の確保が取られていることが必要とされる。

     

    社会インフラとしてのLED照明、寒冷地・トンネルにおける適用と放射ノイズ問題の考察

    図1.1 白熱電球とLED照明器具の構造

     

    2. 寒冷地のLED照明

    従来の蛍光灯は、気温が氷点下になると放電しにくくなる欠点があった。極北の寒冷地では早朝に駅ホームの照明を点けても、深夜に冷やされた蛍光灯では点灯するまでに時間を要していた。駅ホームの照明器具をLED照明に交換したところ、スイッチONですぐに点灯するようになった。しかし、LED照明のLEDチップ接合温度は100℃を超えると急激に劣化するので、通常は55~65℃の範囲で調整されている。氷点下に冷え切ったLED照明器具でもスイッチを入れたらすぐに点灯するので、器具内部の温度は一瞬で高温(55~65℃)に変化することになる。LED半導体に問題はないが、周辺部品もこの温度衝撃に毎日耐えられないと、照明器具の信頼性に影響を与え...

    社会インフラとしてのLED照明、寒冷地・トンネルにおける適用と放射ノイズ問題の考察

    【目次】

      1. LED照明の特徴

      LED照明は従来の白熱電球に比べて長寿命、低消費電力、応答性が速いなどの利点があるが、図1.1に示すように、LED照明は交流電流を直流に変換し昇圧化するためのコンバータ回路が必要になるので、部品点数がかなり増えている。最近の電灯販売コーナーでは、様々な種類の製品が並べられており、価格帯も数百円から1万円近くする物があるので、使用目的に応じて選択することができる。目標とする信頼性を確保するには、基板や配線を含む全ての部品がLED半導体に匹敵する信頼性の確保が取られていることが必要とされる。

       

      社会インフラとしてのLED照明、寒冷地・トンネルにおける適用と放射ノイズ問題の考察

      図1.1 白熱電球とLED照明器具の構造

       

      2. 寒冷地のLED照明

      従来の蛍光灯は、気温が氷点下になると放電しにくくなる欠点があった。極北の寒冷地では早朝に駅ホームの照明を点けても、深夜に冷やされた蛍光灯では点灯するまでに時間を要していた。駅ホームの照明器具をLED照明に交換したところ、スイッチONですぐに点灯するようになった。しかし、LED照明のLEDチップ接合温度は100℃を超えると急激に劣化するので、通常は55~65℃の範囲で調整されている。氷点下に冷え切ったLED照明器具でもスイッチを入れたらすぐに点灯するので、器具内部の温度は一瞬で高温(55~65℃)に変化することになる。LED半導体に問題はないが、周辺部品もこの温度衝撃に毎日耐えられないと、照明器具の信頼性に影響を与えることになる。氷点下の夜が3ヶ月続くとしたら、1回/日の点灯による温度変化が年間で90日、耐用年数が10年とすると、寒冷地向け屋外用照明器具の電子部品は全て約70℃の温度衝撃試験に900回以上耐えられる必要がある。LED素子に温度衝撃試験を実施して、外観検査だけでは発見が困難な、はんだ付けした接合部分にクラックが生じた例を、図2.1に示す。

       

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      図2.1 熱衝撃試験によるLED素子のはんだクラック

       

      3. トンネルの照明器具

      高速道路のトンネル照明は図3.1に示すように、LED化することで、長寿命、低消費電力、高輝度が実現できるため、急速に促進されてきた。長寿命化により、保守点検のサイクルが長くなり、保守時の交通規制も緩和された一方で、高輝度化による発熱対策も重要になっている。

        

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      図3.1 トンネル照明のイメージ

       

      発熱の問題は、照明器具本体をアルミ材で囲って放熱させることで対応できたが、トンネル内に充満する自動車の排気ガス対策が問題となる。図3.2に示すように、LEDパッケージの構造はLEDチップを封止材の中に埋め込んで発光させている。

       

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      図3.2 LEDパッケージ構造

       

      LEDチップは発光時に接合温度が高温になるので、通常は熱に強いシリコン系樹脂を使用する場合が多いが、図3.3に示すように、ガスバリア性が弱く、腐食ガスに暴露されると発光効率が悪くなってしまう。エポキシ系樹脂を使用すればガスバリア対策になるが、今度は高熱に弱くなる欠点がある。従って、照明器具の密閉性から、最適な部品選択と構造設計が求められる。

       

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      図3.3 LEDチップのガス腐食試験

       

      4. LED街路灯の放射ノイズ

      ある地方の自治体で、町内の街路灯の電灯交換を3~5年毎に行っていたが、LEDの照明に変更することで交換期間を10年にして、保守費用の大幅削減することにした。公共入札はできるだけ地元企業が参入しやすいようにするため、厳しい条件は付けずに公募して、無事地元企業が受注した。LED街路灯の設置工事が完了したところ、地域一帯のテレビ受信に不具合が発生した。原因を調査したところ、図4.1に示すように、各家庭の屋根にある地デジのUHFアンテナと街頭の高さが近かったため、街路灯から放射する電源ノイズをまともに受信していたことが判明した。

       

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      図4.1 LED街路灯とテレビアンテナ

       

      一般照明機器は国際規格に従っているが、図4.2に示すように当時はまだUHF帯は規格外になっており、LED照明の限度値は定まっていなかった(30~300Mz)。

      放射ノイズの規格条件にUHF帯(470~710MHz)まで追加することを提案し、街路灯の電源装置の交換で無事解決することができた。

       

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      図4.2 放射エミッション規格

       

      5.まとめ~品質の作り込み~

      商品企画時に機能・性能・価格に見合った「目標品質」を明確化することである。この「目標品質」がしっかり確保されていれば、信頼される商品が顧客へ提供できる。たとえ市場でトラブルが発生しても、1つひとつの要因を辿っていけば必ず「真の原因」を見つけることができる。このサイクルを回して次の開発設計につなげていけば、さらにより良い電子回路の品質作りに進化していくことができる。

       

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      この記事の著者

      芥 正二郎

      民需向け情報通信機器の開発設計業務に約30年従事 その後、電子部品から電子機器のEMC/製品安全試験の評価と対策、信頼性評価/故障解析の業務に約13年従事

      民需向け情報通信機器の開発設計業務に約30年従事 その後、電子部品から電子機器のEMC/製品安全試験の評価と対策、信頼性評価/故障解析の業務に約13年従事


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