省エネルギー活動は農業のように育てる

 省エネルギー活動の中心は「ネタを探せ!」となることが多いようです。経験者は「ネタでしたら」と(ネタということは必ずできるという保証はなくてもいいという言外の意味が含まれます)幾つものアイテムを思いつくのですが、ほとんどの人は次のような行動をとります。

(1)省エネ事例集などの書籍を読んでうちの工場に使える事例はないか、探す。
(2)省エネ事例発表大会に参加してうちの工場に使える事例はないかと、聞く。
(3)展示会を見に行き、うちの工場ではどうでしょうかと問い合わせる。

 その行動自体には問題はないのですが、探す、聞く、問い合わせるという行為は、狩猟民族特有の行動の様な気がします。つまり、省エネは良いネタを探すことがすべてであるとか、ネタは探しに行くものだという考えが暗黙のうちに刷り込まれているように感じるのです。

 これに対して私は、省エネ活動は狩猟や漁労、採集のように探しに行くものではなく、育てるものだという農耕民族の特性を活用することを勧めています。具体的には省エネを担当する方々の問題意識を醸成するプログラムを使います。農耕の対象となるのは畑ですが、これが担当者の意識に相当します。畑は耕さなければ使い物になりません。耕すことに相当するのが問題意識の醸成で、そのためには次の4つが必要です。 

(1)理想状態を具体的に描く。
(2)現状実態を正しく知る。
(3)理想と現状とのギャップを認識する。
(4)そのギャップを埋めたい、できるだけ小さくしたいと強く想う。 

 しかしながら、この4つを行う上で最初からつまづくことが多いものです。理想状態とは何でしょうか。その基点は、物作りのプロセスを対象とする場合は「その工程で何をしたいのか?」という目的機能になります。 

 例えば「水分を取り除く」という目的機能はほとんどの工場で必要になります。その目的機能を果たすためにたくさんのエネルギーを使っているわけです。この場合、水分はどこから入ってくるのか(または入れているのか)その理由や目的あるいは原因を問うところから始まるのです。もし、そもそも水分がなければ取り除く必要もなくなるのですから、究極の省エネのネタになります。

 水分をなくすことが技術的、経済的に手が届かない時には、なぜうちは多くの方式の中で蒸発方式というエネルギーをたくさん使う方式を使っているのか。他の方式、例えば毛布吸収方式、フィルターろ過方式、膜分離方式‥の方がエネルギーが少ないと思われるのになぜ採用されていないのか。それは条件として○○成分の混入を避けた...

いとか様々あると思います。もしそうであれば、この条件をなんとかできないだろうかと考えることになります。

 あるいは既存の設備を流用したというような、技術的というよりは経済的な条件の場合もあるでしょう。それを「本来はどうしたいのか」と考えることが、問題意識を熟成させる一例です。 

 2番目の現状実態を正しく知ることにもポイントがありますが、また稿を改めて説明したいと思います。

 省エネのネタを探すより、問題意識の熟成こそ根源的活動なのです。省エネを推進する立場にある方は、上記4点を盛り込んだプログラムを採用されることを強くお勧めします。

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