3D-CAD導入のヒント

1.3D-CAD導入にあたって

 世の中の開発現場では当たり前のように3D-CADが使われるようになっています。当社では、ローエンドの3D-CADを使い製品や設備設計をお手伝いする機会が多く、筆者自身も自動車部品メーカー勤務時には、ハイエンド3D-CADを利用しておりました。

 今回はそれらの経験を踏まえ、3D-CAD導入のヒントを説明します。

 

2.3D-CAD導入の効果

2.1 設計工数は減らせるか?

 設計工数は減りません。理由は、2D-CADでの作図に対し、次の作業が増えるからです。

(1)部品の三次元形状をモデリングする作業
(2)モデリングした部品データを組立図として組み立てる作業

 特に、3D-CAD内における部品データの組立作業は、構造の複雑さや部品点数に比例して時間を費やす作業になります。

 一方、部品加工の指示は紙図面で行います。I-PADのような携帯端末で3次元データを見て、部品の曲げや溶接加工を行える事業者は、残念ながら存在を聞きません。さらに3D単独図(※1)についても標準化の動きはありますが、ISOやJIS規格化にはまだまだ時間がかかるようです。  

 したがって、3次元データだけで部品製作ができない現状では、3D-CADを導入しても設計工数は減らないのです。 

3D単独図(※1) :三次元形状の投影面に形状寸法や幾何公差などの設計情報を付加し2D-CADで作図する図面情報を集約した三次元データのことを意味します。

 

2.2 製作コストを減らせるか? 

 3D-CADにより製作コストは減らせます。

 一般的に言われているように、3D-CADの場合は部品間の干渉が発見しやすいので、製作時に発生する不具合が少なくなります。また取付け位置の周辺形状をモデル化し部品モデルと組み合せることで、取付け時の干渉も確認できます。さらに、3D-CADで組立作業のシミュレーションを行うと、作業時に干渉する部分を発見でき、製作前に部品形状を改善することができます。

2.3 シミュレーションは有効か?

 3D-CAD導入のメリットにシミュレーションが挙げられます。しかし、時間ばかり取られ業務効率を悪化させる場合が多く見られます。 

 特に単純形状で検討可能な場合、EXCELのようなツールを利用した方が効果も高くなります。また、シミュレーションは難解な専門用語も多く、単純な形状モデルを元に計算結果の精度確認も必要となり、すぐに使いこなせる機能ではありません。 

 導入検討時には、専門家の方にご相談ください。

  

3.3D-CAD導入で設計者に求められる能力とは

 製作工数を削減するポイントは、設計時における組立作業のシミュレーションにあります。3D-CADは三次元形状のモデルを使うため、組立作業時に部品を逃がすために必要な空間の検討が容易になります。

 設計者には、モデリングや作図能力以外に、3D-CADのメリットを活かした組立作業の検討能力が求められます。また、デザイン・レビューを頻繁に行い、製作する担当者の意見を求めることも有効です。

   

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ローエンドの3D-CADについて

 設計内容に応じて、ローエンドの選択も有効な場合があります。  

 ミッドレンジの3D-CADと比較した場合に、曲面の作成機能や作図機能に制限があり苦労することもありますが、設計ツールとしては十分に機能しています。

 悩んだ時は、専門家の意見を聞いてみてください。

  

5.これからの3D-CAD 

 2003年のWindowsXP以降、3D-CADに大きな変化はありません。それゆえ、10年近い開発設計業務からの実績は、これから3D-CAD導入するヒントとして十分に役立つものと思われます。 

 ご意見やご質問をぜひお聞かせください。

 

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