現場に足を運ぶことの大切さ クリーン化について(その116)

 

◆ 現場に足を運ぶことの大切さ

ある企業のクリーン化担当の話です。取引先のお客様数人が工場見学に来ました。この時は、その部門の部長が工場案内を担当しました。クリーンルーム内にクリーンベンチが何台か設置されている場所で「このクリーンベンチの前面に垂らしてあるビニール注1)は丈がまちまちでみっともない。センスがない。恥ずかしいところをお見せした」と言ってしまったのです。これは、部下に指導したつもりだったようです。
注1)ここでは簡単にビニールと表現しましたが、実際には静電気等を考慮した物です。

 

ビニールの丈がまちまちなのは理由があるのです。でもその部長はほとんど現場に入らない人で、その理由を知らなかったのです。

 

その場を取り囲んでいた職場メンバー(含むクリーン化担当)は自分たちがやったので、ビニールの丈がまちまちな理由わかっていましたが、その場で理由を言ってしまうと、大勢の前で部長に恥をかかせることになってしまうと思い、黙っていました。後でお客様に聞いて見ると、お客様もその理由は知っていたと言うのです。つまり、知らないのはその部長だけだったと言うことです。

 

如何に現場に足を運んでいないか、現場を知らないかということがお客様にもわかってしまったという事例です。見かけや思いつきで指導したつもりでも、これでは部下もついてきません。苦労してもそれを評価されないのです。

 

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このシートの長さについて触れておきます。

 

クリーンベンチは3方が透明なプラスチック板で囲まれていて、手前だけ開いています。クリーンベンチ内は、周囲よりも清浄度を上げています。クリーンベンチ内上部から清浄度が高い空気が吹き出されます。前面にビニールがないと、吹き出した風がすぐにクリーンベンチ上部、または背面部の空気取り込み口に引かれてしまいます。

 

本来はこの正常な空気を、クリーンベンチ内の製品扱い部分までに届くようにしたいわけです。それをビニールで前面を覆い、製品に届くようにします。クリーンベンチは、様々な種類があり、年代が違う物もあるので、相応しい気流を作るのには、気流、風速などの条件を考慮し、長さを決めます。性能が個々に違うので、長さもまちまちになるのです。このことを知らないと、みっともないので、外しなさい!と言うことになってしまうかも知れません。

 

現場に足を運び、なぜ?どうして?と聞きながら、現場の人と会話してみることも重要です。何か理由があるのです。するとその人たちがアンテナになってくれるのです。現場の人は沢山情報を持っています。単に見栄えだけで、クリーン化担当はこんなものだと言われてしまうと、その現場はもう伸びないかも知れません。でも、その現場で品質が作り込まれるのです。

 

最近ゴミの問題で品質、歩留まりが低下していると言う情報を受け「クリーン化担当は何をしているのか?」と叱っても、その品質問題とは、案外こんなところに繋がっているかも知れません。士気を高めるのは、管理職の仕事です。

 

次回に続きます。

【参考文献】 
清水英範 著、 「知っておくべきクリーン化の基礎」諷詠社 2023年
    同    電子版 「知っておくべきクリーン化の基礎」、諷詠社 2023年
    同   「日本の製造業、厳しい時代をクリーン化で生き残れ!」諷詠社 2012年

 

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