失敗しない、ロボット導入の第一歩(その7)

 

【ロボット導入の第一歩 連載記事目次】

第7回 締結・組立作業に対応する直交型ロボット

 

1.はじめに

直交型ロボットとは、腕に3つの直進ジョイントを持ち、それらの軸が直角座標系に一致する(直動軸3個)ロボットのことです。直動軸3個は、縦・横・高さという直交する3方向を、スライドして往復動作をします。この直交型ロボットの動作は、皆さんがゲームセンターでよく目にする、クレーンゲームの動きをイメージすると分かりやすいと思います(図1)。

【この連載の前回:第6回 ピッキングロボットへのリンク】 

 

図1 クレーンゲーム(セガUFOキャッチャー)

 

2.設計の自由度が高い直交型ロボット

直交型ロボットは、直交するスライド軸で構成されていて、直線的な動作しかできません。シンプルな構造で動作をイメージしやすいため、設計がしやすいという特徴があります(図2)。直交型ロボットには複雑な制御がないので、誤作動が起こりにくく、そのため人身事故も起こりにくいロボットです。

 

図2 直交型ロボット(蛇の目ミシン工業JC-3)

 

(1)直交型ロボットのメリット

直交型ロボットは、直線にしか動かないため、誤動作が起こりにくく、ブレの少ない動作が可能です。そのため、高精度な作業が必要とされる現場では、多くの直交型ロボットが導入されています。さらに、直交型ロボットは低出力で広範囲の動作ができます。

 

また、構造が非常にシンプルで低価格なため、大がかりなシステムを構築しても、それほど高価格にはなりません。ロボット導入でネックとなる導入費用や管理費用のコストを抑えることができます。また、補助目的でも、本格的なシステムでも、設計次第で多くの役割を担えます。このように、直交型ロボットには多くのメリットがあるため、比較的導入がしやすいといえます。

 

(2)直交型ロボットのデメリット

直交型ロボットのデメリットは、直線的でシンプルな動きにしか対応できないため、複雑な動作ができないことです。しかし、この問題に対しては、多関節ロボットなどと組み合わせることにより、解消することができます。同一ライン上で、複雑な動きは多関節ロボットにまかせ、ブレが少ない高精度な動作は直交型ロボットに行わせることで、ロボットそれぞれの特徴を活かしたラインを構築することができます。

 

3.直交型ロボットの用途

直交型ロボットは、製造業のなかでも、締結・組立作業などの工程に多く使われています。締結・組立作業は、作業者の熟練度によって作業効率や品質にバラつきがあります。また、重い荷物を運ぶ際には、作業者に肉体的な負担がかかります。

 

このような、作業効率や品質のバラつきをなくしたり、作業者の肉体的な負担を軽減したりするために、直交型ロボットが多く使われています。それ以外にも、小さな部品の組立や検査、ピッキング、製品の搬送など、様々な作業をこなします。重量物やサイズの大きい部品の搬送も可能です。

 

4.ダブルアームなどの特殊仕様

同一軸にダブルアームを採用することで、2種類の部品を高効率に交互に組付することも可能です。これにより省スペースとタクトタイムの短縮を図ることができます(図3)。

 

図3 ダブルアーム(ヤマハ発動機 用途例)

 

また、ダブルアームを採用することにより、2部品を同時に搬送することもできます。その場合に、ストロークの異なるダブルアームを採用すれば、サイズの異なる部品を同時に搬送することもできます。それ以外にも、上下にロボットを組み合わせることで上下同時に部品を組み付けることもできます。このように、複数のロボットを同一軸上に組み合わせることで、生産性を大幅に向上させることも可能です。その他にも、リニアガイドやボールねじに無給油シールを採用した、長期メンテナンスフリーの直交型ロボット...

などもあります。

 

5.直交型ロボットのティーチング

ロボットに作業する位置(姿勢)を教えるためには、「教示作業」(ロボットティーチング)をしなければなりません。ロボットをティーチングする際には、座標系を選択して操作します。座標系には、関節座標系・直交座標系・ツール座標系などがあります。多関節ロボットは、主に関節座標系でティーチングをします。関節座標系はロボットの各関節の回転角度を値とする座標系のことで、ロボットの動作に慣れないと+と-でどのように動くかが分かりにくいという難点があります。これに対し、直交座標系は互いに直交している座標軸を指定することによって定まる座標系のことで、+と-でどう動くかが分かりやすく、直交型ロボットはティーチングがやりやすいという利点もあります。

 

次回は、垂直多関節型ロボットについてご説明します。

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