失敗しない、ロボット導入の第一歩(その3)

 

【ロボット導入の第一歩 連載記事目次】

第3回 ロボット導入におけるコスト

 

1.はじめに

ロボット導入にかかる費用は、決して安くはありません。そのため、ロボット導入の際には、費用対効果を十分に検討する必要があります。しかし、ロボットでどの工程を自動化するかにより、そのコストとメリットは大きく変わります。ロボット導入前・後のコストの考え方、減価償却資産と製品サイクル、費用対効果について紹介します。

【この連載の前回:第2回 ロボットシステム構築の大まかな流れへのリンク】 

 

2.ロボット導入コストの考え方

ロボット導入には、ロボット本体だけではなく、関連装置等と一緒にロボットシステムを構築する必要があり、システムになって初めて機能します。そのために、ロボット導入にかかるコストは、

・ロボット本体
・ロボット関連装置(ロボットハンドなど)
・ロボット周辺装置(安全柵など)
・システムインテグレーション(SI)関連費
(システムの設計、製作、設置、調整などの費用、ロボットの動作教示(ティーチング)、安全講習 などの費用)

などが必要で、ロボット以外にも多くの費用がかかります(図1、図2)。

 

図1 費用算出例(1)
出典:経済産業省「ロボット活用の基礎知識」

 

図2 費用算出例(2)
出典:経済産業省「ロボット活用の基礎知識」

 

ロボット導入の各費用は、システムに要求される精度や設備構成の複雑さによって異なります。システムインテグレーション(SI)関連費も、システム規模が大きくなったり、画像処理等高度な技術を使用したりすると、金額が大きくなります。ロボットシステム導入に際しては、3DCADによるシミュレーションソフトを利用するなどして、どこまでの精度や技術が必要とされるかを検討するのも、一つの方法です。

 

3.費用対効果

このように、ロボットシステム一式の費用は決して安くはないものの、費用対効果として、導入コストに対して3~5年で回収できると見込んでいる企業も少なくありません(図3、図4)。

 

図3 回収見込想定例(1)
出典:経済産業省「ロボット活用の基礎知識」

 

図3の例では、労働生産性(人件費)の効果に加え、稼働時間の延長による増産を期待することで、労働生産性の効果と増産による利益増により、3年で回収可能となっています。

 

図4 回収見込想定例(2)
出典:経済産業省「ロボット活用の基礎知識」

 

図4の例では、1日当たり7名分の労働生産性を算出することにより、年間4,000万円にも上る人件費を想定することで、2億円の投資を行っても、5年程度で回収することができます。

 

4.どの工程を自動化するか

どの工程を自動化するかによって、コストとメリットは大きく変わります。「生産ラインの自動化」といっても、人が行っている作業をすべてロボットにする必要はありません。本当に必要な場所に導入することで、生産効率は向上します。そのためには、現状のレベルを知り、一つ上のレベルを目指します。

 

(1)一部を自動化する

作業者がワークをセットして、加工やチェックをロボットが行うなど、工程の一部にロボットを導入します。この段階の自動化は、人的要因による品質のバラツキを減らせる、生産性が向上する、といったことが期待できます。

 

(2)ラインを組んで自動化する

製品を加工したり、組み立てたりするのはすべてロボットが行います。この段階では、作業者は材料の供給や製品の払い出し、機械の修正やロボットの調整のみです。この段階の自動化は、品質の安定、さらなる生産性の向上、人件費の削減、といったメリットが挙げられます。ロボット導入の多くの場合は、通常この状態を目指します。

 

(3)完全自動化する

この段階では、作業者はメンテナンスやトラブル時の対応をするだけです。ここまで自動化ができると、品質・生産性の最大効率化、人的要因の排除、安全性の確保、といったように一切のムダがなくなり、生産効率が大幅に上がります。

 

しかしながら、完全自動化にするには、ロボット関連装置やロボット周辺装置が多岐にわたり、当然ながら費用も大きくかかります。効果の少ない工程や作業を無理に自動化する必要はなく、費用対効果を見ながら、どこまで自動化するかを決めることが重要です。また、完全自動化にするには、供給する材料やできあがった製品の保管場所の確保も必...

要となり、費用対効果以外に工場の利用可能スペースの問題などの検討も必要です。

 

5.減価償却資産と製品サイクル

ロボットに限らず、設備を導入した場合、法定償却期間(耐用年数)が決まっています。しかし、装置の耐用年数とは別に製品サイクルがあり、その製品をどのくらいの期間生産するかによって、耐用年数とは別に、使用期間を検討する必要があります。

 

例えば、製品サイクルが2年の場合には、2年毎に製品のモデルチェンジに合わせて設備の改造費用が必要かもしれません。逆に、製品サイクルが10年以上の場合は、長く設備を使い続けるため、保守点検費用や予備品の費用を製品サイクルに合わせて見込む必要があります。

 

このように、ロボットを導入する場合には、耐用年数以外に製品サイクルに合わせた改造費や保守点検費などを見込んでおく必要があります。

 

次回は、ロボット使用事業者に要求される安全についてご説明します。

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