現場診断・指導について(その3) クリーン化について(その63)

 

前回の現場診断・指導について(その2)に続いて、解説します。これまで、現場の監査や診断について説明してきました。これらの機会は人財育成の場としても活用できます。例えば、監査に行く、あるいは堅苦しい場面でなくても、現場診断・指導の機会があればクリーン化担当や後継者、現場のリーダーなどを連れて行くと良いです。

 

このような立場にある人には、レポートや写真、論文などを見せて学ばせて育成しようとしても、なかなかぴんと来ませんが、その場に立ち会わせることで効果が期待できます。理論よりもその場を直に見せ、現場の不具合を見つけ、内容を説明する。これは生きた教材であり、人財育成の場です。ただし大勢を引き連れてということは避けましょう。

 

このような育て方をしていくと、日常的に現場を良く観察するようになるだけでなく、現場監査の受審前に、対象の現場を“鑑査を意識した目”で見てもらうこともできます。そして改善していく、その積み重ねで当日の指摘事項も減るでしょう。

 

また、不具合や着眼点について説明できるようになり、診断する立場、受審する立場、どちらでも対応ができるようになります。もちろん、幅広い知識や、多面的な見方、考え方が必要になります。それらは自ら学ぶことも必要ですが、様子を見ながらアドバイスをしていけばよいでしょう。

 

説明する立場では、如何に相手に納得してもらうかなど、相手の立場を理解しながら説明することが必要なので、説明の仕方も工夫するようになります。つまり、現場を見る力がつくだけはなく、その個人が育つ機会になります。

 

これはクリーン化以外にも応用、活用できます。ちょっと飛躍するかも知れませんが、バランスよく育つことに繋がると考えています。

 

さて、私が他社診断する場合のイメージを紹介します。

 

会社全体の雰囲気を把握する。

 

初めて訪問する場合は、特に事前準備が必要です。海外であれば国民性、国内であれば県民性やその地方の風土などです。もちろん完璧にはできないですが、それらをもとに、話の切り出しや話題ができます。そこで、事前に把握したことと違う情報が出る場合もあるので、その場で対応方法や話題を選びます。違ったということは、その分情報が増えたと捉え、次回、あるいはその他の場でも活用できます。

 

このような準備をしておかないと、その会社に着いて、「さあ現場見せてください」という始まり方になってしまい、監査、診断の場が味気ないものになってしまいます。

 

監査、診断を価値ある時間にするための準備時間ですね。文化、風土を把握しておくと、言葉選びもスムーズにいきます。国内では、表日本と裏日本の方違いを感じます。私の勝手な思い込みかも知れませんが、日照時間にも関係しているように感じます。従って話のやり取りができているのかの把握も重要です。

 

さて、その会社の受付に到着し、担当者が迎えに来るまでの間に周囲を見たり、廊下を歩きながら清掃具合を観察します。会社の構内が奇麗に見えたり、清掃が行き届いていると感じる時は気持ちが良いものです。またすれ違う社員の挨拶や様子を見て、雰囲気が明るいなどと感じると、会社と社員の関係は良いだろうなと感じます。

 

応接室や会議室に連れて行ってもらう時、一般の事務室の内部が見えることがあります。「事務室も奇麗だ。これは今日の診断も厳しく見よう」ということになります。

 

客先監査で割と多いのは、現場だけをその日に合わせ奇麗にしておくという例です。

 

現場を良く見ている人が見ると、今日のために慌ててやったのか、日常的に管理されているのかはある程度推測できます。一般の事務室などでも奇麗にしてあるのは、会社全体にその文化が定着していると見ても良いと思います。3S、5Sの定着です。

 

こうなると、クリーンルームも日常的に奇麗に管理されているはずです。そこで、緩めの診断をして...

しまうと、そのまま最後まで行ってしまい、指摘事項がなかったということになります。奇麗なところは、漠然と診断してしまうとこのような結果になってしまうことも経験しました。レベルを推測し、その場に合わせた診断に心がけています。

 

奇麗なところは、少し厳しく見て、指摘することも礼儀だと考えています。「いいですね。問題ありません」では、そこで成長が止まってしまうからです。現場に入る前にも前述のような雰囲気を把握し、臨機応変に対応したいです。不具合が見つからない場合は、クリーン化4原則に照らしながら、注意深く観察すると、いろいろ見えてきます。

 

次回に続きます。

 

 

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