残留オーステナイトとは:金属材料基礎講座(その98)

 

◆ 残留オーステナイト

 オーステナイト[1]を急冷するとマルテンサイト組織ができますが、Ms点、Mf点は炭素量によって温度が変化します。そのグラフを図1に示します。

 

 図1. Ms、Mf点と炭素量の関係

 

 炭素量が約0.6~0.7%になるとMf点が室温以下になります。そのため、焼入れしても鉄鋼材料全体がマルテンサイト組織にならずにオーステナイトが一部残ることになります。これを残留オーステナイトと呼びます。 

 Mf点は鋼の炭素量が増加すると低下するため、炭素量の高い鋼ほど残留オーステナイトが見られます。もし、残留オーステナイトもマルテンサイトにするときはサブゼロ処理という室温以下の温度に焼入れることによってマルテンサイト組織にすることができます。

 残留オーステナイトは時間の経過や応力などによってマルテンサイトに変態することがあります。すると寸法変化が起こります。これが残留オーステナイトの欠点です。また残留オーステナイトは強度が低く、組織的にも不安定な組織ですが、靭性もあるため割れなどを防ぐことができます。そのため残留オーステナイトを有効利用することもあります。

 

 次回に続きます。

 【用語解説】 

 [1]オーステナイト(austenite)は、鉄のγ鉄に炭素や合金元素などの他の元素が固溶したもの。イギリスの冶金学者ロバーツ・オーステンによって発見され、オーステナイトという名称は彼の名前に由来する[2]。現在ではあまり使用されないが、組織形状が田んぼ...

に似ていることから、日本の冶金学者本多光太郎による大洲田という漢字の当て字がある。(引用:Wikipediaから、https://ja.wikipedia.org/、最終更新  2021年3月14日 (日)  )。

 

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

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