クリーン化4原則-4 クリーン化について(その29)

 

 連載その16で『クリーン化4原則+監視の重要性』について述べました。ここでは、図1のクリーン化4原則について個別に解説しておりますが今回は、クリーン化4原則-4 「発生させない」についてお話します。

図1. クリーン化4原則 

 

 クリーンルームには“ゴミ・汚れを持ち込まない”ことを説明してきました。対象は、普通紙や私物など目に見えるものは分かりやすいのですが、エアシャワーの浴び方で説明したように、目に見えない付着ゴミもあるので要注意です。それらを持ち込まないルールや仕組み以外に、一人ひとりが付着ゴミに対する自覚を持つことが重要です。「少しぐらいなら」、「私だけならよい」という考え方は排除し、徹底して入り口を抑えましょう。

 今回は、クリーンルームに入ってからの話です。

1. クリーンルームの中では無駄な動作をしない

 クリーンルーム内では、歩く、屈(かが)む、運搬するなど、さまざまな動作や行動があり、それだけでもゴミが発生し飛散、浮遊します。必要最小限の動作、行動でも発生しますが、無駄な動きや走るなど、大きな動作た行動が伴うと、発生量が倍増します。また、細かな動きを頻繁に行うと効率よく、てきぱきと作業していると思いがちですが、これも発生量を増加させる原因です。動作・行動はある程度ゆっくり行いましょう。

 こんな事例があります。

 ある会社の依頼を受け、現場診断に行った時のことです。意見交換などを行ってからクリーンルームに入りました。ちょうど午後3時になった時です。「さあ皆さん体操の時間です」という放送が入り、一斉にラジオ体操が始まりました。「これは大変だ。すぐにやめた方が良いです」と言って理由を説明しました。話だけだと印象は薄いと思い、パーティクル測定をするようアドバイスしました。案の定ものすごい数値が計測されました。自分たちで測定してみたことで、驚きも大きく記憶に残る機会だったと思います。クリーンルームがあり、防塵(ぼうじん)衣という白い服を着ただけで安心してしまう例です。

 防塵衣のすき間から人系のゴミが大量に吹き出すことと、床に堆積(たいせき)しているゴミが巻き上げられるためです。床に堆積しているゴミは、浮遊できない重いものです。これが風などで舞い上がるのですが、その後沈降し、低い位置にある製品や治工具などへ付着することが考えられます。品質低下の原因になるかも知れません。体操だけでなく、クリーンルーム内で走ることも見掛けることがありますが、これも大きな動作です。必要最小限の動作、行動に努めましょう。

 その工場は乱流式のクリーンルームだったので、気流も乱れています。巻き上げられたゴミはどこに飛んでいくのか、どこで沈降するのか分かりません。思いもよらないところで、品質を左右するような問題が起きているかも知れません。そうなると原因究明が難しくなるでしょう。

 

2. 防塵衣の正しい着用

 なぜ防塵衣を着るのかのところで、人は最大のゴミ発生源、汚染源だと説明しました。その人のゴミをクリーンルーム内に巻き散らさないために着用します。そのために発塵、飛散をできるだけ抑えた着用方法にしています。これを遵守しないと、防塵衣の外に吹き出す量が増えるわけです。

 極めて稀(まれ)ですがメンテナンス作業中、汗をかいたり、作業しにくいという理由から、防塵衣の袖(そで)をまくっている姿を見掛けることがあります。しかしそれでは皮膚(ひふ)や体毛など、さまざまな人系のゴミが発生し、飛散させてしま...

います。これはもちろん気を付けるべきことですが、周囲の人も見慣れた風景だと見逃さないことが重要です。

 クリーン化に完璧な対策はありません。人の意識と行動を変え、少しでも良くしようという考え方です。また、“疑わしきは排除”という考え方もしていただきたいのです。クリーンルーム内にはゴミや汚れ、設備からの発塵粉などさまざまなものが存在します。

 乱流式クリーンルームで半導体製造をしている企業の分析担当者から聞いた話では、ゴミの種類は120種以上あるそうです。きちんと管理されているところでは、もっと少ないと思いますが、油断しないことです。みんなで良い環境を作り上げましょう。

 

 次回に続きます。

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