クリーン化を成功させる条件とは クリーン化について(その22)

 

 

4. クリーン化のなぜを考える

◆ 継続のための仕掛け

図. 継続のための仕掛けがあること

 

 今回は、上図のような「継続のための仕掛け」について解説します。

 クリーン化活動が定着しても毎日同じことの繰り返しになると、手抜きや意識の低下などが起きてきます。この状態を放っておくと徐々に環境が悪くなり、品質・歩留まりが低下してきます。これは緩やかに変化していくので、気が付いた時には深刻な状態になっていたという場合があります。

 徐々に環境が悪くなると、何がいつから変化してきたのか、その原因がつかめません。そこで闇雲にあちこち突いてみても真因の究明には届かず、適切な対応ができないのです。

 

 このような事態となる前に管理、監督者は日々よく現場を見て、活動に弱さを感じたら、そのタイミングを測り、イベントなどを開くのも一つの手です。ゆるんだ部分を元に戻そうというものです。これによってまた活動に目を向け、その大切さに気付いて継続してもらうことが狙いです。

 さらに、クリーン化の継続のためのDNA継承という意味もあります。先輩が後輩に伝えるのには限度、限界があります。イベントなどに参加しながら理論や理屈だけではなく、体験と経験から身に着け継承していくことも大切です。

 様々な会社から現場診断・指導・アドバイスを依頼され、訪問すると、そういうところほど活動に対し様々な工夫やアイデアがみられます。人の知恵は無限だと考えさせられます。それでもさらに新たな考え方を求め、ものづくり基盤を高めていこうという気概を感じます。では、その一部を紹介しましょう。

 

 ①白黒トーナメント(コロコロトーナメント)

 これは、ある会社で実施いたことです。工場がいくつかあり、まったく同じやり方ではないのですが、考え方は一緒です。メンバーに掃除道具の真っ白な布(ワイパーなど)、あるいは掃除道具のコロコロを持たせ、トーナメント方式で一番汚してきた人を表彰しようというものです。そして1番、2番になった人を朝会で表彰します。その時「どうしてこんなに汚すことができたのか」について発表してもらうというイベントです。

 「私は、あの柱の〇〇側に気流が渦巻いていて、ゴミが溜まるのを知っていました」とか「黒い発塵粉が発生しやすいことを知っていた」などの発言があるわけです。つまり、日頃から観察する習慣があったことが分かります。その場に集まった人たちの着眼点の共有化が図れます。黒い発塵粉は、何かが劣化しているのかと職制側も、現場の管理に活用できるわけです。

 中には、床を拭くだけではなく、時間をかけしっかり擦(こす)ることで白い生地が真っ黒になった。今までの清掃は表面だけであって、本当の清掃ではなかったという感想も出て来たそうです。

 

 ②ハイハイパトロール(死角を見る)

 これは普段見ている範囲を外し、死角を観察するというものです。

 設備は正面から見て良し悪しを判断することが多いようです。ところがその視角の範囲から外れたところ(死角)に不具合があるかも知れないということです。「今日のパトロールは死角を見る」という感じに、その都度着眼点を決めて実施するわけです。ハイハイパトロールの最初のハイは高いところ、次のハイは這(は)ってみるということです。実際に這ってしまうと防塵...

衣が汚れるので、そのくらいの気持ちで低いところも、よく観察しようという取り組みです。

 これを思いついたきっかけは、ヨーロッパの客先が監査で来社した時「設備の上に忘れ物なのか、点検表が乗っている」、「修理部品なのかネジや座金がある」、「埃(ほこり)がたくさんある」などの指摘を受けたそうです。その高さは、背の高い海外の監査員にはよく見えるが、自分達には見えない高さだった。そこを死角と考え、このようなパトロールを考え付いたそうです。日常的にも意識することは大切ですが、特に部外者は着眼点が違うので、客先監査前には、このように様々な見方で多面的に見ることが重要です。

 

 次回に続きます。

 

◆関連解説『環境マネジメント』

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