応力-ひずみ線図 金属材料基礎講座(その34)

 

 金属材料の対局にあるプラスチックの性質の中でも応力とひずみの関係は、最も基本的かつ重要な性質の一つです。材料力学は基本的に材料が弾性変形することを前提にしていますが、弾性変形以外の部分も含めて、材料の性質を分かりやすく示すために用いられるのが応力-ひずみ曲線です。英語で応力はStress、ひずみはStrainなので、頭文字を取ってS-S曲線とも呼ばれます。 

 材料の変形のしにくさを示す物性値がヤング率です。材料が弾性変形をする場合、応力とひずみは比例関係となり、ヤング率はその直線の傾きを表します(フックの法則) 

 

◆ 応力-ひずみ線図

 引張試験は金属材料の機械的特性を調査する方法で基礎的な試験です。金属材料ではない脆性(ぜいせい)材料では、殆ど伸びずに破断に至ります。これは字の通り「脆い(もろい)」材料のことであり、ガラスやコンクリートがこれに該当します。 金属でも鋳鉄が脆性材料にあたります。

 引張試験で得られる応力-歪み線図から降伏応力、引張強度、伸びなどの値を得ることが出来ます。炭素鋼の引張試験における応力-歪み線図を下図に示します。応力をかけると、はじめは歪みが直線的に増加します。この時材料はフックの法則に従い応力と歪みが(1)式のような直線関係になります。

図. 炭素鋼の応力―歪み線図

  σ=εE・・・(1)

 フックの法則に従う時は弾性変形領域のため応力を除荷すると元の形状に戻ります。そしてこの直線の傾きEをヤング率といいます。

 応力を増加するとある値で比例関係が崩れ、応力を除荷しても歪みが残り元の形状に戻らなくなります。この応力を材料力学では、それぞれ比例限度、弾性限度と呼びます。

 さらに応力を増加するとある応力値でピークとなり、応力が下がる現象が起きます。このピーク上降伏点(降伏点)の応力を上降伏応力、下がった時の応力を下降伏応力と呼びます。単に降伏応力と呼ぶときは上降伏応力を指します。そして降伏応力は応力を除荷しても永久歪みが残る応力、塑性変形が始まる応力として扱われます。

◆ 塑性変形

 降伏応力の後しばらくはほぼ一定の応力で歪みが増加します。そして再び応力とともに歪みが増加します。

 しかしこの時は塑性変形を起こしているため直線関係ではなくなります。この間、試験部分は一様に伸びていき最大応力値に達します。この最大応力値を引張応力と呼びます。

 引張応力を過ぎると材料の...

一部がくびれてくる意味は、試験断面積が減少し、結果として応力も下がるからです。そして最終的に材料が破断します。この時の応力を破断応力と呼びます。

 引張試験全体を通して伸びた量を伸び、また伸びた量を元の試験片の評点間距離で割った歪みとして計算、評価します。応力-歪み線図上では、破断応力からヤング率の傾きと同じ平行線を下ろし、歪みの軸と交わった値が歪みとなります。

 

 次回に続きます。

 

◆【関連解説:金属・無機材料技術】

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