サプライチェーンマネジメントと情報共有

 
  
 

1. サプライチェーンマネジメント

  サプライチェーンというキーワードが出回り始めたのは1990年代中頃からだったと思います。ものづくりにおけるモノの提供、調達、製造の活動はそれ以前からも行われていましたが、それぞれの工程での部分最適(効率化)に止まっていました。その後、原材料の提供者から製造、物流からエンドユーザにいたる一連の流れをひとつのビジネスプロセスとしてとらえこの全体最適を考えようというものに変わってきました。
 
 今日ではこのサプライチェーン(SCM)はソフトウェア・サプライチェーンなどのようにさまざまな事業領域で、広義に解釈され使用されています。ところで日本では、このSCMはキーワードや概念が先走りしてきたように感じます。 SCMが唱えられ10年以上経過した2000年代後半になってようやくサプライチェーンシステムが各企業で導入・構築がなされましたという話題が語られるようになってきました。
 
 日本では従来からの商習慣、物流事業体の力が強く(特に日用品、家電製品など)伝統的な「系列」の縛りもあって、海外のようにはなかなかゆかないという事情もありました。SCMは結局のところ、「強者の理論」のようにも見えなくもありません。商流において、どこが力を持つのかは業種・業態でも様々であり、インターネットの時代の今日ではアマゾンのような新たな配送業者も出現し、時代とともに支配構造も変化しつづけているところでもあります。
 
 21世紀の現在、グローバルサプライチェーンの構築が急がれると言われていますが、コトバの壁、商習慣の違い、グローバル管理の体制とそれを支えるITインフラの整備状況、人事システムなど、世界規模でのビジネス経験があまり多くない日本企業では、いまだに課題は多いものと思われます。
 

2. 不確実性に対処するドイツ自動車業界

  1970年代にガルブレイス教授が「不確実性の時代」という著作が出されました。当時国内はまだバブル崩壊前の時点でしたが、すでにモノ余り状態で、誰がどうみても供給過剰状態にありました。1990年頃のバブル崩壊後に製造業が大凋落したのも当然といえば当然だったと思います。またディジタル技術は新規参入障壁を下げる効果が大きく、長年蓄積してきたノウハウも徹底したディジタル化により見る間に競争力を失って行きました。半導体はその最たるものです。
 
 さて現在はというと、以前にもまして多品種少量で消費動向も大きく変わってきています。若い世代はクルマは買わない、ZARAやH&M等のファストファッションが流行るなど一人当たりの単価は下がり、何を作ったら売れるのかはさらに見通しにくくなっています。生き残るためには次の”何か”を見つけて作らないといけませんがメーカが持つ力だけでは難しく、自社のまだ強みが残っているうち...
にうまい組み手を作るなどでエコシステムを形成しようという動きがあります。
 
 ドイツの自動車産業はこの手を使っているようです。自動車製造メーカが部品メーカなどを巻き込んで情報を共有し合いながら、将来の姿を描きそこにサプライチェーン全体の関係者を巻き込んで自分たちのビジョンが実現するように市場や規制当局に働きかけを行っているのです。 自分たちにとって都合の良い明日を引き寄せるために、サプライチェーン全体が連携しているというわけです。
 
 日本の業界ではなかなかここまでできるところはなさそうですが、不確実な将来を生き残るためには有利な状況を作り出す知恵が必要になってきているのではないでしょうか。
 

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