クレームは大切な宝の山  クレーム対応とは(その36)

 
  
 

4. クレームを宝物に変えてしまう「奥の手」

 前回のその35に続いて、解説します。
 

【クレーム対応心得】

 
 クレームは、企業に「格別の宝物」をプレゼントしてくれます。そこまでは、しっかり理解していただけたと思います。
 
 では、その宝物をどのように「所有」すれば、最も価値ある宝物として光り輝かせることができるのでしょうか。企業の中には、宝物の価値を台なしにするような、まことにもったいない使い方をしているところが少なくないのです。
 
 ある企業のA支店にかなり深刻なクレームが持ち込まれたとしましょう。クレーム内容は支店レベルで解決できる問題ではなかったので、支店スタッフはすぐに本社のお客さま相談室へ連絡しました。ここまでのフローは理想的です。支店レベルで無理な解決を図るより、社内組織を最大限に活用して、効果的な問題解決を実践することは、非常に重要なポイントです。
 
 本社の相談室と連絡を密にしながら、顧客のクレームを解決していったA支店は、本社からのフィードバックを受けて、なんとかクレームを解決することができました。
 
 やれやれ、一件落着と考えましたが、問題はここから始まったのです。
 
 この決着の仕方は相談室の対応として、とても合格点は与えられません。クレームの解決に安堵する前に、もう一つ実践しておかなければならなかった重大なアクションがあるからです。
 
 この企業は同じ県内に、A支店をはじめとする7つの支店網を構築していました。ところがA支店で発生し、解決したクレーム情報は、本社とA支店が知るだけで、ほかの六カ所の支店には、まったく伝えられていなかったのです。
 
 このように情報の水平展開ができていないと、同様のクレームが他支店で発生したとき、非常に効率の悪い対応を余儀なくされます。支店レベルで対応できないクレームを抱えたB支店は、A支店と同じように本社の相談室にSOSを発信するに違いありません。
 
 クレーム解決は、再びやり直しです。
 
 だが、A支店のケーススタディが全支店に水平展開されていたとしたら、どうでしょう...
か。きっと、B支店は起こった問題に速やかに対応するスキルを準備できるでしょう。少なくとも、本社の相談室とやり取りを繰り返す時間のロスは発生しないはずです。クレーム対応の成果を水平展開させる重要性がそこにあります。誠実ですばやい問題解決は、顧客の満足度を大きく向上させます。
 
 次回は、5.クレームが、企業を「顧客満足体質」に変える。から解説を続けます。
 
 【出典】武田哲男 著 クレーム対応、ここがポイント  ダイヤモンド社発行
            筆者のご承諾により、抜粋を連載
 

↓ 続きを読むには・・・

新規会員登録


この記事の著者