原子配列が乱れた材料・非晶質材料の構造解析

～二体分布関数解析及び中性子・放射光散乱の基礎知識と解析の進め方～

★これまで解明されなかった原子配列が乱れた材料や非晶質材料の構造が、量子ビームによる実験・解析技術の著しい発展により明らかに！

★基礎的な原理や実験手法・データ解析方法の他、電池材料として注目される固体電解質の構造解析結果を実例として紹介します。

講師

京都大学 原子炉実験所　助教 博士（工学） 小野寺 陽平 先生

受講料

1名41,040円(税込（消費税8％）、資料付)
＊1社2名以上同時申込の場合 、1名につき30,240円
＊学校法人割引 ；学生、教員のご参加は受講料50％割引。

セミナーポイント

　リチムイオン二次電池用の固体電解質をはじめとする様々な材料において、原子配列が乱れた結晶や非晶質材料が新たに開発され注目を浴びている。一方で、新しい材料をより効率的に開発するための構造学的な指針の構築が求められているが、原子配列が乱れた材料では一般的な結晶が持つ周期性が失われていることから構造解析には困難が伴い、材料特性の発現に資する構造の解明はこれまでに実現されてこなかった。
　しかし近年、J-PARCやSpring-8のような大型量子ビーム施設の建設が行われ、それらの施設で利用できるパルス中性子、放射光X線を用いた実験・解析技術の著しい発展により、原子配列が乱れた材料の構造解析を行う基盤が整ってきている。
　本講演では、量子ビームを利用した原子配列が乱れた材料の構造解析について、基礎的な原理と実験手法、データの解析方法を概説するとともに、新しい二次電池材料として注目されている硫化物系固体電解質の構造解析結果を実例として紹介する。

○受講対象：
 ・非晶質材料（ガラス・アモルファス）の構造解析に興味がある方
 ・原子配列が乱れた結晶材料の構造解析に興味がある方
 ・中性子・放射光を利用した構造解析をこれから始めようとしている方

○受講後、習得できること：
 ・中性子散乱の基礎知識
 ・二体分布関数解析の基礎知識
 ・中性子・放射光を利用した「原子配列が乱れた材料」の構造解析のすすめ方

セミナー内容

1. 二体分布関数解析の基礎
　1) 結晶と非晶質
　2) 二体分布関数と散乱ベクトル
　　a) 二体分布関数の概念
　　b) 結晶・非晶質・液体・気体の二体分布関数
　　c) 中性子・X線散乱強度と二体分布関数
　　d) 散乱ベクトルQの定義
　3) 1種類の原子のみから構成される材料における二体分布関数
　　a) １種類の原子のみから構成される材料における散乱の理論
　　b) １種類の原子のみから構成される材料からの散乱強度と二体分布関数
　　c) 二体分布関数から得られる構造情報
　4) 2種類以上の原子から構成される材料における二体分布関数
　　a) 2種類以上の原子から構成される材料からの散乱
　　b) Faber-Zimanの定義による構造因子と重み因子
　　c) 石英（SiO2）ガラスの二体分布関数

2. 中性子・放射光を相補利用した二体分布関数解析
　1) 原子による中性子およびX線の散乱
　　a) 中性子と放射光X線
　　b）原子による中性子とX線の散乱能
　　c) 中性子・放射光X線によって得られた二体分布関数の比較
　2) 大型量子ビーム施設を利用した実験
　　a) パルス中性子と放射光
　　b) 高強度・高エネルギーの中性子・X線を利用するメリット
　3) パルス中性子を利用した非晶質材料の全散乱実験
　　a) パルス中性子全散乱実験とは
　　b) パルス中性子飛行時間法の原理
　　c) 実験データの解析と二体分布関数の導出
　4) 二体分布関数を利用した非晶質材料の短距離構造の解析
　　a) 中性子・放射光の相補利用による原子相関の同定・分離法
　　b) 配位数の解析
　　c) 同位体置換中性子回折による特定原子周囲の構造解析
　5) 逆モンテカルロ法による非晶質材料の中距離構造の解析
　　a) 逆モンテカルロ法とは
　　b) 逆モンテカルロ法による構造解析で分かること
　　c) 逆モンテカルロ法によるSiO2ガラスの構造解析

3.固体電解質材料の構造解析
　1) 硫化物系固体電解質材料
　2) 中性子・放射光を利用した硫化物系固体電解質材料の二体分布関数解析
　3) 逆モンテカルロ法による硫化物系固体電解質材料の3次元構造解析

4.ディスカッション

 ＜質疑応答＞