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欧米体系の上に大和人のおもてなしの心を(2013/01/23配信)

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  ものづくり革新便り    2013年1月23日号
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かつてノースウェスタンMBAに入学した吉田忠裕(現YKK会長)が
マーケティングの大家Pコトラー教授から最初にかけられた言葉は
「顧客満足という言葉は日本から学んだ。なぜ米国でマーケティングを
学ぶのか?」だったそうです。
米国人は体系化が得意ですから、それをありがたく利用するのは良いと
して、気持ちまですっかりドライな欧米に倣っては本末転倒というべき
でしょう。
欧米体系の上に大和人のおもてなしの心を掛け合わせる和魂洋才を宗と
すれば、価格競争に陥ることなく世界に通用する事業が展開できるように
思います。




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今号の内容
 1.新商品開発力と経営成果との関連性分析
 2.専門家ピックアップ
 3.技術者教育に関するセミナーのお知らせ
 4.企業交流会@富士ゼロックスのお知らせ
 5.日本型MOT研究会のお知らせ
 6.技法解説#45:特性要因図
 7.書籍紹介:「QC七つ道具」細谷克也著
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 1.新商品開発力と経営成果との関連性分析
品質学会誌2009年第3号掲載の「製品の複雑性と市場の不確実性をモデレー
タとする新商品開発力と経営成果との関連性分析」,鈴木定省et.alという
文献を読んでみました。
要約すると、日本規格協会と共同して採集した企業アンケートと、回答企
業の財務データの関連性を統計的に分析したところ、①開発戦略・組織力、
②ツール・IT活用力、③開発技術力のいずれも営業利益、売上高と強い正
の相関がありましたが、これは規模の効果が影響した可能性があり、ROAや
ROIに対しては①のみが有意な相関を示しました。
さらに製品の複雑性との関連をみると、複雑な製品を扱っている企業で特
に①の効果が大きく現れています。
中程度複雑な製品では、何と②が有意な負の相関を示しましたが、
①×②や②×③は正の相関となっており、戦略や技術のない組織がツールや
ITを使っても逆効果で、前提条件となる基本的な力があってこそ活きて
くるという、非常に納得できる結論になっています。
有意な相関とはいえ、相関係数は0.2~0.4と決して高くなく、営業力や生産
現場の力といった要因も大きく影響しているだろうと考察しています。
開発による財務への影響力が平均して3割ほどというのは、
なかなか興味深い報告です。




 2.専門家ピックアップ
新たに仲間になった村田一郎氏は安全工学の専門家で、最近注目を集める
設備や作業の安全性について講演、執筆活動を中心に企業を支援しています。
特にR-mapを使ったリスク評価がお得意で、多くの企業に招かれて指導され
ています。
 http://www.monodukuri.com/specialists/profile/37




 3.技術者教育に関するセミナーのお知らせ
技術者が課題を解決するに当たっては、現象を観察することから始めます。
新入社員はここでつまづいてしまうため、良い成果を生み出せないのです。
このセミナーでは「物語図化法」という手段を使用し、若手技術者が
自分で問題を見つけ解決できるようになるための技術者教育について、
演習を交えて解説します。
 http://www.monodukuri.com/seminars/detail/18




 4.企業交流会@富士ゼロックスのお知らせ
品質工学会では、定期的に品質工学の活用、実績のある企業・団体を訪問し、
施設の見学とそこでの品質工学の推進事例及び開発・研究事例発表を実施
しています。
今年は2月22日(金)11:00~17:30に富士ゼロックス株式会社R&D
スクウェア(神奈川県横浜市みなとみらい)を見学します。
「日本の産業界の閉塞感を打破する-イノベーションのための技術戦略-」
と題し、富士ゼロックスはもちろん、経産省、日産、アルプス電気、芝浦
工大などの講師が事例、報告を発表し、講師全員によるパネルディスカッ
ションもあります。
 http://www.qes.gr.jp/workshop/24th_workshop_info.html




 5.日本型MOT研究会のお知らせ
隔月新宿西口工学院大学で開催されるこの研究会ですが、2月2日(土)
13時半は、「グローバル競争に打ち勝つためのモジュラー&プラット
フォーム化とPLM」というテーマで、アプライド・ブリッジ代表の野尻寛
氏がPLM(製品ライフサイクル管理)側面からビジネス戦略論を展開し、
参加者全員で議論します。
「技術で勝って事業でも勝つ」ための重要な処方箋が提言されます。
 http://www.geocities.jp/motbukai/




 6.技法解説#45:Q7その1特性要因図
特性(結果)に対して、どのような要因が関係、影響しているかを
ツリー状に表わした図で、広い視野で要因を拾い上げるのに有効です。
その形状から「魚の骨」とも呼ばれます。
課題解決にあたっては、ついつい少数の目についた要因で実験、対策を
進めがちですが、思わぬところに重要な要因が隠れていることが往々に
してあります。
対策に入ってしまうと多大な時間、費用が発生しますので、
はやる気持ちを抑えて関係者の知見を特性要因図に整理し、優先順位を
付けたうえで実験に入るのが結局は早道になります。
また、旧来のように紙に手書きというのも効果的ですが、一部が密集して
くると新たな要因を追加するスペースがなくなったります。
エクセルやパワーポイントも使い勝手が良くありません。
思考整理ツールであるマインドマップ支援用のフリーソフト「FreeMind」
の使用を強くお勧めしています。
 http://freemind.asia/




 7.書籍紹介:「QC七つ道具」細谷克也著
30年前の出版で、改めてQ7そしてQCサークル活動の歴史を意識せざるを
得ません。決して有効性が薄れたわけではなく、むしろ自然に使いこなして
いるために、ことさら道具として意識する事もなくなっているようです。
本書では日科技連のセミナーに準拠し、7つの道具それぞれに対して(1)
解説、(2)作り方、(3)見方、使い方の3点を丁寧に記述しているため、
これ一冊を読めば、今よりももっと効果的な使い方が学習できます。
 http://www.juse-p.co.jp/cgi-bin/html.pl5?i=ISBN4-8171-0418-X




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昨日数年ぶりに仙台の母校を訪問し、学生時代に使った実験用具がまだ
使われているのを見て懐かしく思い出しました。
あの頃、ものづくり革新ナビで紹介しているような手法やプロセスを
教えてもらっていれば、技術者人生ももっと早く効率的にスタートできて
いたはずです。応用物理学科同窓会の副会長になりそうなので、先生方に
そういった提案もしていきたいと思います。