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クオリティパブの報告(2011/05/18配信)

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  ものづくり工学通信    2011年5月18日号
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ものづくりに日夜奮闘されている皆様、

震災の影響は続いており、特にものづくり業界においては東北の工場被害
からサプライチェーンが寸断され、いまだに手に入らない必要部材があり
ます。代替部品を決定するには、同等の特性はもちろん長期信頼性の確認
が重要ですが、ここに時間と労力がかかってしまいます。
基本機能のロバスト性でシステムの信頼度を評価する機能性評価手法は、
従来評価方法データとの連続性が課題でした。この非常時は、新しい評価
方法に切り替える好機かもしれません。

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今号の内容
 1.クオリティパブの報告
 2.TRIZ関連新ソフトウェアの紹介
 3.ものづくり寄席次回の案内
 4.経営工学会発表大会の案内
 5.技法解説:#4 MTシステム
 6.書籍紹介「入門MTシステム」
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 1.クオリティパブの報告
5月12日は(株)デンソー生産推進センターの吉野睦室長による「設計最適
化技術の最新動向~応答曲面法を中心として~」でした。最適化技術の
概論から次第にマニアックな行列計算の数理に入り込み、正直理解を超える
部分もありました。しかし設計の高度化と要求される業務スピードから、
昔ながらの悠長なプロセスでは到底対応できず、極限までCAEで追い込
む必要性と、その要求に応えるソフトウェア進歩に対する認識は確実に得
る事ができました。
近年の技術者は品質工学だけでなく、これら多様な手法を駆使する事で
ロバストな技術、製品を提供する事が可能になっています。
 http://www.jsqc.org/q/news/events/index.html#110512

 2.TRIZ関連新ソフトウェアの紹介
ベルギーCREAX社がこれまでのTRIZ支援ソフトInnovation Suiteに加え、
R&D支援ソフトCreation SuiteとTRIZ発明原理支援ソフトMatrix+を発売
したと聞き、日本代理店で主にTRIZによる発想を支援する創造開発
イニシアチブ社でデモを見せていただきました。
Creation Suiteは、CREAX社がデータベースに保存している英文特許を30
の分析手法でフィルタリングし、レポートを作成するものです。特許分析
は私の専門外のため他ソフトとの比較は難しいのですが、多彩な様式が用
意され、あったら便利と思われる機能を網羅しているように見えました。
Matrix+はInnovationSuiteの発明原理部分を独立させたイメージで、
Creax社というかDarrelMannが作成したMatrix2010を使用している点に特
長があります。ビジネス、ITマトリクスを含んで6万円という価格は嬉し
いものの、ビジネス、IT部分は日本語化されていないのが残念です。
 http://www.triz-jp.com

 3.ものづくり寄席の案内
先週からはじまっているものづくり寄席の明日19日は、ものづくり経営研
究センター特任助教の李澤建先生による『自動車のローコスト化と電動化
は破壊的イノベーションなのか?』。もはや無視できなくなりつつある中
国・インドの自動車産業の実態を聞きます。
来週26日は同じく佐藤秀典先生の『販売現場リーダーの葛藤とその克服に
向けた取り組み』で、ものづくりの販売最前線における取組の現状が聞け
ます。
いずれも19時東京駅前三菱ビルのエムプラス1階が会場、入場料1000円。
 http://merc.e.u-tokyo.ac.jp/mmrc/topics/yoseenmoku.html

 4.経営工学会発表大会の案内
5月28日(土)、29日(日)に埼玉県日本大学で予定されていた発表大会
は、震災のために会場を愛知学院大に変更して開催されます。
初日13時から元三菱総研常務井下雄右氏による講演「経営~これまでとこ
れから~」に続き、8会場に分かれ115の発表が予定されます。
熊坂も28日14:30からD会場にて「ものづくり効率化技法の活用と有効性
調査報告」として、大学院で実施したアンケート結果分析を発表します。
クロス分析により興味深い傾向が判明しましたので御期待下さい。
http://www.jimanet.jp/activity/event/spring2011.html

 5.技法解説:#4MTシステム
50年に渡る品質工学の歴史の中で、MTシステムは最も新しい評価技術に
分類され、オンライン/オフラインとも一線を画す手法のため、まだ十分
に普及したとは言い難い状態です。
さらにその中身が、マハラノビスの距離を使って標準グループとの遊離度
を1変数に集約して判定するMT法、その多重共線問題を解決するために編み
出されたMTA/MTS法、多変量のSN比と感度を使って目的特性を予測するT法
と矢継ぎ早に提案されたため、分かりにくい点がありました。
近年企業の活用事例が増えてきた事で、効果と手順が整理されつつありま
す。画像処理等膨大なデータの判定にも有効ですが、私的にまずは既存デ
ータをこれらの手法で分析して、パラメータ設計の実験前に有効な因子に
「あたり」をつける時に最近多用しています。
ともかく、多くのデータがあり解析に困っている時は、活用を検討してみ
て下さい。

 6.書籍紹介「入門MTシステム」手島昌一ほか著
前述のようにMTシステムはDr.タグチが次々と改変していたため、な
かなかまとまった解説書を出しにくい状況が続いていましたが、'08年末に
発行された本書は各手法の特徴、原理、適用手順、事例がバランスよく盛
り込まれ、現時点で学習するならベストの書籍です。
ただしまともに取り組むと、行列式の計算に圧倒されて挫折する危険性も
高く、自ら計算式を組まずに市販されている支援ソフトで実データを解析
しながら使用手順を身につけるのが習得の近道と思われます。
http://www.juse-p.co.jp/cgi-bin/html.pl5?i=ISBN978-4-8171-9284-4

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大学院の新学期から土曜の空き時間を利用して、学生だけの自主研究会を
始めました。私が山梨学院大学の講義用に準備した資料を、複数の社会人
学生から評価してもらうのですが、当然というか企業により認識や手順が
異なる事が多く、大いに参考になっています。

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