『坂の上の雲』に学ぶ先人の知恵(その25)

 『坂の上の雲』は司馬遼太郎が残した多くの作品の中で、最もビジネス関係者が愛読しているものの一つでしょう。これには企業がビジネスと言う戦場で勝利をおさめる為のヒントが豊富に隠されています。『坂の上の雲』に学ぶマネジメント、『学習する組織をめざせ』の章です。活動するたびにいつも組織と構成員の成長があること、そのしくみが「学習する組織」です。それをめざすにはどうするのか、この章で解説します。
 

13. スーパーマンを生み出す組織

 
 スーパーマンというのはすごい人という意味で使われます。組織を動かすような人でしょう。秋山真之とか好古はそれに当てはまる人だと思います。筆者は多くの経営者の方々と会話する機会がありますが、みなさん、スーパーマンのようなビジネスマンが欲しいと言われます。
 
 お手本は日露戦争における海軍の秋山真之や『三国志』の諸葛孔明でしょう。ただ、このようなスーパーマンや偉人が組織に加わると、組織内で共存できないことが多いのです。真之にしても孔明にしても、周囲の応援やバックアップがあったからこそ存分に力を奮えたのです。
 

(1) スーパーマンを助ける組織

 
 スーパーマンが欲しいと経営者は簡単に言いますが、なかなか無理でしょう。もし、いたとしても、みんなが足を引っぱるから共存できません。共存できるような組織にするには、まず強い組織作りをしてその中からスーパーマンを生み出すことです。それをみんなが応援したり、助ける。組織の成熟度が高い中でスーパーマンが出れば、それをさらに助けようとするでしょう。このような盛り立てる雰囲気がない限りスーパーマンは組織の中では共存できないのです。
 
 誰か非常に優秀な人をポーンと入れても、最初はみな「なんだ、あんなヤツが来て」と思っているわけで、その組織になじもうとする本人の努力もありますが、「あいつは特別だ、おまえたちとはちょっと役割が違うんだからそのつもりでつき合ってやってくれ」とトップがきちんと言う必要があるのです。このような雰囲気を作るというのが非常に難しいのです。
 
 繰り返しますが、スーパーマンが最初に存在するのではなく、強い組織ができるとそこからスーパーマンが生まれるというのが順序です。真之の場合は、組織が強くなるのと真之がスーパーマンになるのがほぼ一致していました。だから足を引っ張る人はいなくて、かわりに助ける人がいろいろ出てくるのです。
 
 
 

(2) 組織の成熟度

 
 司馬遼太郎は、あとがきで秋山兄弟の2人がいなくとも、代わりの誰かが同じような仕事をしたはずだと書いています。好古がいなければ別の人が騎兵をドイツ式でなくてフランス式を導入したろうし、真之がいなければまた別の人が参謀として日本海海戦を構想しただろうと。この指摘の意味するところは、当時の陸海軍は最強の組織ができていたということです。
 
 スーパーマンは普通の人材集団から生まれ、育てて盛り立てる土壌がそのスーパーマンの生死を決めます。普通の人材集団が強い集団になって、つまり組織的に成熟度が徐々に上がり、最高のレベルに達したときにスーパーマンがポコッと生まれるのです。そこには盛り立てる土壌があるからスーパーマンも存分に力を発揮するのです。
 
 これまで、仕事を通じて成長する、人が成長するしくみをつくる、人を育成する、などについて述べてきました。これらが相俟って、それぞれの立場において、どんどん代わりの人が出てくるのが最強...
の組織であり、学習する組織の究極の姿です。
 
 日本のような資源のない国は、人を育てて人材を活かすことでしか生きる道はありません。明治も平成の今も、その自然環境は同じで変わるはずはなく、今までの経済的な繁栄がその認識を忘れさせてしまったように思えます。人材育成は日本の最大の課題であり、明治も今も変わっていないのです。
 
 今回で、『学習する組織をめざせ』の章を終わります。
 
【出典】
 津曲公二 著「坂の上の雲」に学ぶ、勝てるマネジメント 総合法令出版株式会社発行
 筆者のご承諾により、抜粋を連載。
  
◆関連解説『人的資源マネジメントとは』

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