クリーンルーム清掃手順の事例 その1

 今回は清掃手順について、事例を含めてお話します。

 まず清掃の手順は、上から下へ、奥から手前が基本になります。これはクリーンルームやものづくり現場、一般の家庭などどこでも共通です。

 昔のお姑さんは、嫁さんに、“掃除をする時は、寝床(寝室)から始めなさい”と言ったという話を聞いたことがあります。嫁いで来たばかりで、姑も怖いので、最初はなぜそうしなければいけないのか分からなくても、言われるままにやっていたようです。

 なぜ寝室からなのでしょうか?掃除の基本は、“上から下(上流から下流)、奥から手前へ”です。  他から掃除を始め、最後に寝室の掃除をすると、綿のゴミが沢山出てしまい、それが他へも影響するので、二度手間になるからです。寝室から始める理由は、発生源から押さえなさいと言うことですね。年寄りの教えは、経験に基づいたものが多いですが、とかく、このなぜを省略してしまうことが多く、結論だけの話になってしまいがちです。そのなぜ?を考えることは、クリーン化でも非常に大切なことです。

 古くから日本の布団は、綿が使われているのが一般的です。綿は短繊維(繊維の長さが短い)ですので、繊維同士の絡まりが少なく、抜け落ちてそれがゴミになります。それが、寝室では寝ながら毎日ゴミを出していますし、敷く、畳むなどでも多くのゴミが出るわけです。短繊維と長繊維については、また別途お話ししましょう。

 

 ある会社に呼ばれた時のことです。昼過ぎの時間を指定され、約束通りに到着したのですが、応接室での話が延々と続き、なかなか現場に入れてもらえませんでした。午後3時少し前にやっと工場に入ることになりました。防塵衣に着替え現場に入ったところ、音楽が流れ、一斉に清掃が始まりました。この時、清掃風景を見せたい、そして誉めてもらいために時間を稼いでいたのだと気づきました。

 清掃状況を観察すると、雑巾で床を拭き、そして作業台、作業台上の治具、クリーンベンチと言う順にクリーニングしているメンバーが多く目につきました。つまり、下から上に向かっての清掃です。  おまけに、ちょうど入荷して来た部品や原材料を、一旦床に置き、ロッカーの扉を開いてから持ち上げて収納していました。

 これは大変です。ちょうど清掃が終了した時に、管理職の方が全員を集め、私が話をする機会を作ってくれました。誉めてもらいたいと言う意図を感じたので、清掃するということについて先ず誉め、それから次のように話をしました。 清掃の基本(手順)は、上から下、奥から手前と言うこと、治具等製品に直接接触するもの、製品品質に影響がありそうな部分の清掃用具と床等汚れた部分の清掃用具は区分けすること。また床付近は非常に汚れているので、入荷した製品、部品等は仮置きであっても開封した状態で床には置かないこと。参考に、床から天井まで30㎝間隔程度でパーティクルを測って見て下さい、と言って帰って来たことがありました。床付近も天井付近も相当汚れていることを知って欲しかったからです。

 すると翌朝その会社から測定結果の報告がありました。“大変なことになっていました。通常の高さ(製品加工高さ)は規格内でしたが、...

天井付近、床付近は、工場停止範囲のレベルでした”と。従って、床を拭いた雑巾で、作業台や製品と接触する治具等を拭くことは、床で汚した雑巾で、製品品質を落としている、汚している行為だと良くわかったので、至急清掃の手順、清掃用具の使い分け、製品や部品等の床置きを見直した、と言う連絡でした。

 多くは、話だけで終わりがちですが、直ぐに反応して、実際にやって見ることで、その悪さ加減が良く分かったと思います。多分、寒気がするほどの結果に驚いたのでしょう。直ぐに反応してくれた事には、私も感動しました。こういう一つ一つの成功体験を大切にしたいものです。

 天井付近にゴミが多い理由については、また別の機会にお話しましょう。次回は、その2:中国工場の女性管理職の事例などを解説します。

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