稲作に見るクリーン化との共通点

 

1. 稲作の苦労

 定年退職後は、あまり運動もせず、出歩くことも少なくなりました。その成果?でしょうか、体力が落ちているのを実感しています。これでは良くないと、まずウォーキングから始めようと思いました。ところが、日課にするつもりが、毎日心に言い訳をする自分になってしまいました。今日は暑いから、今日は雨が降りそうだから、今日は風が強いから、今日は寒いから、今日は風邪気味だから、お医者さんが無理をしないように言ってたな、と次ぎから次と言い訳が出て来ます。三日坊主にもなれない、その結果がこの体力、体形に現れてきているのです。これは、クリーン化でも同じです。手抜きをし始めるとどんどん現場が汚れ、以前の状態が維持できないのです。どちらも、気付いた時にはもう遅いということです。さて、そのウォーキングをしていて感じたことを紹介します。
 
 自宅近くの田園地帯の散歩道に沿って小川が流れています。その水は所々で田んぼに供給されています。その田んぼを見ながら、観光バスのガイドさんの話を思い出しました。田植え後は、田舎をバスが走る時、あまり話題がないので、「田んぼに大きな鳥がいますね」などと言うと、お客さんが一斉に外を見るのだそうです。「どこですか?」と。そのバスガイドさん曰く、「田の草鳥(取り)という鳥です」などと不足がちな話題を補うのだそうです。ところが、このジョークが全く通じない時があるのだそうです。つまり、お米というのは、おいしい銘柄や産地などは一般的に話題になりますが、稲作農家の水面下の苦労は、日頃目につかないので多くの方が知らないのです。
 

2. 稲作に見る監視とその継続

 この“田の草取り”は、散歩中あちこちで見かけます。毎日歩くと毎日見かけます。つまり、手抜きをしないのです。私のように、今日はまあいいかの繰り返しをしていると、手抜きが常習化してしまいます。すると田んぼでは稲の高さよりも大きな雑草で覆われてしまいます。また、雑草の混じった稲を刈る時も苦労をします。ですからある頻度で根気よく草取りをするのだそうです。その時、草取りだけでなく、稲の育ち具合や病気がないかとか、水の状況なども確認しているのです。
 

(1) 継続的な監視

 これは、クリーン化でも同じです。毎日現場を見る。つまり監視です。そして色々なものを見る時は、クリーン化4原則で絞り込んで見るということです。毎日見ても変化が無いような気がして一回くらいは、一日くらいはと手抜きをすると、徐々に現場を見なくなります。そしてしばらく見ないうちに現場の環境レベルが落ちたと気づくのです。継続的な監視が大切なのです。
 

(2) 稲作に見る作り込み品質

 農家では、自分で種を蒔き、このように手間暇かけて農作物を育て、そして収穫するのです。これは、天災等を除けば、ほとんど自己責任であり、また自分の成果です。如何に手をかけたか、それが収穫に現れるのです。製造業で言う“投入から完成まで”を自分でやる、本当のものづくりだと感じます。そして自分の努力の成果や出来栄えを自分ではかる。評価するということです。製造業で言う“製造品質”とか“作り込み品質”ですが、製造業のように分担しないので、その成果には達成感や感激が伴う訳です。
 
 田の草取りは一例ですが、これらの努力は人に見せるのではなく、自分が作るものにどれだけ思いを込めることができるかです。この田んぼの水見、巡回、田の草取りなどは、水面下の努力です。私たちはその恩恵を受けているのですが、普段あまり意識しません。クリーン化も、良い製品を作るための水面下の努力の部分が多いのですが、地味に地道にコツコツと継続することで、成果に繋がります。しかしその部分の評価はあまりされません。でも、両者とも“人に見せるためにやるのではなく、本当の作り込み品質を高めることが目的”です。ここにクリーン化と稲作の共通点を感じます。
 

3. 稲作・クリーン化との共通点

 “昨日良かったから、今日も良いという保証はない”ということ。つまり監視(巡回)の大切さです。もう一つ...
、同じことですが、“目に見えないことでも継続をすること”。これはやがて大きな力になります。これらからものづくり基盤の強化に繋がります。“ローマは一日にしてならず”でも、長い間苦労して構築して来たものも、手を抜けばあっという間に崩れます。
 

4. 参考:クリーン化4原則とは

 クリーン化、或いはクリーンルームの4原則と言われます。クリーンルームに限らず、ものづくりの現場には、ゴミや汚染源になるものを、(1)持ち込まない。(2)発生させない。(3)堆積させない。(4)排除する。ということです。これは従来から言われてきましたが、現在は 現場はクリーン化4原則視点で良く観察するだけでなく、きちんと監視するということも言われるようになってきています。つまり現場を継続的に良く見るということです。
 
【 関連する筆者の技法解説記事 】
  ◆ クリーン化活動を通じた人財育成(その1)
  ◆ クリーン化活動を通じた人財育成(その2)
  
  

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