プレス加工の条件を最適化し大幅なコストダウンを達成した事例

 2000年の品質工学会研究発表大会で株式会社三琇ファインツールの白塚山覚さんが発表した「プレス深絞りの最適化」の概要を紹介します。 従業員100名に満たない愛知県の中小企業が、品質工学でしっかり成果を上げている点が注目されます。

◆関連解説『品質工学(タグチメソッド)とは』

 

1.はじめに

 微小な金属製品の加工に有効な手段としてプレス加工があり、高い生産性と安定した品質が得られるため、量産分野を中心に幅広く活用されます。特に絞り加工は、その加工の難しさから、早急な技術開発が望まれていますが、当社では微少形状の深絞り加工の開発に苦労していました。

 

2.実験方法

 プレス絞りの基本機能を、絞り回数に対する肉厚の変化量と考え、初期のブランク板厚と変形後の製品底部の肉厚の比を対数変換した値を出力yとして比例性を持たせました。

 製品底部の肉厚の測定箇所の違いを誤差因子に考え、動特性のSN比ηと感度Sを求めました。

 制御因子は、パンチ種類、ダイス種類、クリアランス、しわ押さえ力、潤滑油種類、ノックアウト圧力、ブランク種類の7因子を直交表L18に割り付け、合計18回の実験を行いました。

 

3.実験結果

 本実験で、SN比はプレス加工がばらつかず均一に加工される安定性を表し、感度は底部の肉厚の変化量を表します。

 実験の結果、SN比にはダイスとクリアランス、感度にはブランク種類の影響が大きいことが分かりました。

 最適条件と最悪条件の組み合わせで再現実験を行ったところ、SN比で15.23dbの利得が得られたため、これをもとに現在の絞り工程に適用したところ、7工程を4工程に削減しても破断しにくい製品を加工できるようになりました。

 

4.経済的効果、まとめ

 上記の工程変更により、損失関数から計算した品質コストに生産コスト...

を加えた一個当たり総コストは8.502円から4.01円に引き下げられ、年間720万個の生産で3300万円の改善が見込まれます。

 1因子実験で9か月間あまり進展しなかつた開発を、約半年で終了することができ、しかも単純形状のテストピースを用いることで技術に汎用性を持たせ、単なる製品開発ではなく、真の技術開発とすることができて非常に大きな成果となりました。

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