‐異業種交流による開発の事例‐ 製品・技術開発力強化策の事例(その21)

 前回の事例その20に続いて解説します。製品・技術開発力強化策、第21回は、異業種交流による開発の事例について、次の3項を解説します。
 
       1.遊び心がアイデアを生む事の本質
       2.現場を見て学び合う関係をつくる
       3.意見を発表する体験
 

1.遊び心がアイデアを生む事の本質

 遊び心はアイデアを生み出すので、気楽な雰囲気の中で、自由奔放に意見交換する事が異業種交流では必要です。しかし、すばらしいアイデアが出てきて製品開発に結びついているグル-プと、まとまりのない意見交換に終わっているグル-プが歴然と存在しています。
 
 アイデアが製品化、事業化されていくグル-プには目的意識が明確な事、つまり、経営方針がはっきりしていて自社の技術的な特徴の活用、方針に沿った開発テ-マの探索、それらを意識した上で議論しています。ところが、アイデアはいろいろと出てくるが、そのアイデアを練り上げて開発に結びつける企業が現れず討論倒れになっているグル-プでは、目的意識が曖昧です。つまり、経営方針が明確になっていない参加者が多いのです。このような参加者が多いグル-プでは、製品開発のアイデアの源泉になる顧客からの情報収集の方法など、根本的な問題の扱い方について研究討論する方が遥かに有用です。
 
 業種、業態に応じた情報収集のあり方とその分析の仕方を研究して、その中から自企業の特徴を応用できる可能性を浮かび上がらせて行くように手順を踏む方が参加者には有用です。目的意識が明確でない参加者が多数を占めるグル-プに、目的意識が明確な参加者が存在している場合、かなり早い機会に脱退して別のグル-プを求めて活動している現実があることを知る必要があります。
 

2.現場を見て学び合う関係をつくる

 自由に意見交換することは、楽しいものです。まして異業種の仲間になると気楽にものが言え、頭の体操になり、心の洗濯になるとの感想を漏らす参加者もあります。それなりに参加した効用はあるものと思いますが、交流のための交流ではなく、自企業に有用な何かを得ること、そして、交流の中から相互に利用し合う関係を作り上げるには、会員企業を相互訪問し、現場を見た上で率直な意見交換を行う必要があります。
 
 どのような企業でも何らかの特徴がありますが、それに気付いていない経営者が余りにも多く、そこで、参加者は「必ず一つは良い点を見つけて褒める事、その上で遠慮のない問題指摘と改善に関する提案を行う事。参加者全員が発言する事」このようなル-ルを決めて訪問交流を行うと、自企業の再確認になり、当然と思って過ごしていた事の中に大きな問題点が潜んでいて、改善の機会を捉えることが出来ます。その中から相互支援の関係や開発テ-マが見つけ出される事もあります。何よりも大切な事は、現場を見て意見交換する場を持つ事です。ただし、率直な意見交換が出来なければ訪問の意義がありません。会員だけではそれが出来がたいと想定される場合には、しかるべき助言者を依頼する事が良いでしょう。
 
 訪問を受ける企業では、幹部社員を同席させ討論に参加させると一層効果が上がり、他社の経営者の率直な指摘は大きな刺激になります。実際に訪問すると何も見るところがないと謙遜していた企業で意見が続出した例を多く経験しています。
 

3.意見を発表する体験

 製品(技術)開発が巧みな企業の経営者は、考え方をまとめるのが上手でした。 話の筋が通っていて判り易く、行動に筋が通っている経営者が多く、これらの考え方が経営方針に凝縮して示されています。
 
 逆に、 考え方を判り易くまとめる事が苦手の人は、 製品(技術)開発...
のテ-マも捕らえにくいので、製品開発の作業では多数の情報を組み合わせて体系化する作業が必要です。そこで、異業種交流の例会では、 過去を振り返って失敗を乗り越えて困難を克服した経験談を発表する事、 自企業の特徴を訴えてグル-プの反応を確かめる事などの自己の体験を分析しまとめ上げる経験を積むことから開始して、考え方をまとめる練習と他人の前で意見を述べる経験を積むような場として、 異業種交流を利用することも有益です。 自企業の従業員に対して説得力のある話し方を身につけるためにも、これらの事は大変重要な事です。 経営者が何を言っているのか判らない。 そのような従業員に対する話し方では、 日常業務に比べて変化の激しい新製品の開発では必要以上に問題が発生する事になります。 このような意味から、 異業種交流では体験発表と発表者の説明に鋭い質問を投げかけ、 自己啓発の場として活用します。
 

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