エネルギー損失の全体像を知り重点を決める手順

 熱処理炉を取り上げて省エネの検討をする時に「熱勘定」を行うことは当たり前のように感じるかもしれませんが、実際にはとても効率が悪いと思います。論文を書く時には必要かもしれませんが、「ある手法に則って分析をして、その結果を考察する」という誤った方法論に従うとほとんど何も得られません。
 
 実践では分析の目的をまず決めて、目的に適したやり方をすべきです。具体的には、次のように進めることを推奨しています。この事例の目的は「エネルギー損失の全体像を知ること」になります。
 
1.年間の合計燃料使用量、動力使用量、その他の用役使用量を原価計算資料から導きます。
 
・燃料使用量、冷却水などの重要な数値は自動計測を検討してください。
・動力でも主要箇所は電力モニターの設置を検討してください。
・日々のデータ入手方法などその他の問題も明らかにして対策してください。
 
2.炉の目的と働きを明らかにして燃料の理論最少必要量を計算をします。
 
・理論最少必要量の値は投入エネルギー量の何%に当たるか計算します。
・もしその値が大きければ(例えば60%以上)、エネルギー損失の少ない
 他の方式の探索に重点を置く方が良いかもしれません。このエネルギーを
 十分有効利用できるなら(例えば熱を回収できる)そこが重点になります。
・結果により重点の置き方を考えてください。
 
3.捨てているエネルギー(排熱、排水、排蒸気など)量を調べます。
 
・可能な限り実測してください。
・この量が多い場合、捨てているエネルギーの質を考慮して回収利用を
 検討してください。
・現状で回収されていない場合、質に問題がありますので(汚い、酸露点が
 高い、変動が大きい、温度レベルが低いなど)その対策情報を集める
 必要があります。 
 
4.設備由来のエネルギー損失を計算する。
 
・炉体からの放熱損失がその代表例です。大型の炉では数%しかありませんが、
  小型になるほどその割合は多く、30%も占めることがあります。
  比表面積が大きくなるからではないかと思います。(象は比表面積が小さい
  ので体温の喪失は少ないがネズミはあっという間に熱を奪われる)
  その場合は炉体の断熱が重点になります。
・熱エネルギーの性質上、炉の上部が高温になりますので、炉の上面の断熱
 構造の変更や内張りなどの手法を調査します。
・炉の内部に余裕のない時は、鉄皮の上に塗装する手段を調べることが
 重要になります。
 
5.設備の使い方のエネルギ...
ー損失を調べる。
 
・使い方の悪さは単純に経年劣化が疑われます。昔の検収資料、試験成績書の
 データと現状との乖離を明らかにします。
・それがなければ(往々にして紛失されています)、同様の実験を行い
 評価する必要が生じます。
・なぜ当時よりエネルギー原単位が悪化しているのかを考察します。
 
 まだ幾つかの手順や細かい補足がありますが省略します。要は数人のグループで、このようにエネルギー損失の全体像を共有化していけば、改善の重点が明らかになることです。結果としては熱勘定と似ていますが、その過程は似て非なるものがあります。
 

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